見出し画像

小早川優子『なぜ自信がない人ほど、いいリーダーになれるのか』日経BP

この本は、明らかに働く女性に向けて書かれているが、どこにも女性のためという文言が表題にないことが不思議なところであり、著者の意図が理解できない。

本書にきっかけとして、各種の勉強会等で、非常に優秀なのにかかわらず、「自信がない」と口にする女性が大変多いという実態があることから、その原因を分析したところ、優秀であるがゆえに、先々を心配しすぎていて、それが自信のなさとなり、必要以上に失敗を恐れてしまっているからだとする。

子どもを持つ女性が、「仕事でキャリアアップしたい」と望んでも、職場のほうも育児中の女性をどう支えていいにか手探り状態のところが多く、社会構造にも問題があるという。

また、これは著者自身の経験でもあり、自信がないことで貴重な成長のチャンスを逃してしまったことから、自分一人の問題ではないと理解したそうである。

働く女性の46.3%は、周囲から高く評価されても自己を過小評価してしまう「インポスター症候群」だと回答しているという。でも、自信のなさは、「内省でき、周囲に心配りできるという」面で大きなプラスに働く。

女性のキャリアは、「ガラスの天井」ではなく、キャリアにおける「学習機会」、「経験機会」、「挑戦機会」、「成長機会」が少なく、「壊れたはしご」であるともいう。

女性の管理職は、仕事ができるだけでは十分評価されず、「理解がある」「話を聞いてくれる」といった寛容さなども求められる。女性のステレオタイプ「優しくて、協調性がある」と、男性のステレオタイプ「強く、仕事ができる」という両方のステレオタイプによるダブルバインドの犠牲者になりやすい。

会社は、デキる女性管理職の下に、今後リーダーになってほしい女性部下を配置する確率が高いが、かえって部下は劣等感を持ち、キャリア構築の熱意を失いかけるという現実もあることが、調査で見えてきたともいう。

いいリーダーは、全員の力を足し合わせるだけでなく、全員の力を掛け合わせて相乗効果を発揮しながら、成果を出す人であり、自信がない人だからこそ、素晴らしいリーダーになれるという。しかし、適切なリーダーシップは、時代や環境、リーダーやメンバーのスキル、性質によって変化するものであり、自分らしいリーダースタイルを見つけることが必要とされる。

さらに、①常に「いいリーダーとは?」と自分自身に問い続け、変化を模索する。②リーダーシップの縦の「仕組みをつくる構造軸」と、横の「人間関係の配慮軸」とを意識する。③常に問いかけ、学習、改善することが重要ともいう。

キャリアの早い段階から、大きな試練に遭遇し、リーダーの役割を果たそうとして努力し、リスクを背負い、成功と失敗から学習の機会を得ることで、いいリーダーになることができる。

さらにリーダーの仕事を正しく理解して会社に貢献することや、人生を変える交渉術を紹介し、自信がない人が強くなる武器を身に付けるよう促している。

本書は、自信のなさが原因で、リーダーになるのに二の足を踏んでいる女性や、自分らしいリーダー像を見つけられずに自信を失いかけている女性リーダーのために書かれている。しかし、男性管理職が読んでも参考となるところが多いように思うとともに、男性にも手に取ってもらいために、書名にあえて女性向けであることを明示しなかったかもしれないとも思った。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?