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中川瑛『孤独になることば、人と生きることば』扶桑社

パートナー、職場、友人関係において、「孤独」への恐れで、悩み、苦しむ人がたくさんいるそうです。どんなに能力が高くても、どんなに社会的に成功していても、「人と生きる言語化」を知らない人は孤独になってしまうと著者は言います。(言語化=ことばで表現する能力)

        人と生きる言語化   孤独になる言語化
わたしの言葉   現実の言語化     妄想の言語化
あなたの言葉   尊重の言語化     軽蔑の言語化
私たちの言葉   共生の言語化     支配の言語化

著者は、上の図のように、「人と生きる言語化」を整理しています。

事実をニュートラルに見ることなく、妄想を膨らませ、自分は攻撃され、軽んじられていると感じることによって怒りが湧き、「反撃」をしているうちに、孤独になっていくと言います。

自分だけが正しいという信念で、相手は自分と違う人間で感じ考えることが異なり、大切にすることも違い、言動することも違うということがわからないと、軽蔑の言語化で相手の選択肢を軽んじることになると言います。

「非常識」「普通」という言語化を通じて、相手の感じ方や考えはおかしいと評価し、それを変えようと支配しようとすることは、典型的な孤独になる言語化だといいます。

人と生きる言語化とは、二人が生きやすい場所を一緒に作っていくことだと言います。また、「私とあなたは別の人であり、同じように感じ考えることなく、究極的にわかり合えないことを前提として、わかり合おうとすること」だという基礎の上に、ようやく建物(生きやすい場所)を作ることができると言います。

人と生きる言語化は、できる範囲でしかできないという限界があると言います。また、どんなに頑張っても究極的にはわかり合えないうえ、行動が伴わないと意味がないこともあると言います。

最初に行うべきは「現実の言語化」で、これまでの自分はどんな場面で何をしてきたのか、その結果がどういうものだったのかを振り返り分析する必要があると言います。そのとき、仲間と共に、人と生きることを学ぶことで、何とかなるそうです。

具体的な学びのステップは、次のとおりだそうです。
①関係の危機
 人と生きる言語化の失敗
②問題の自覚
 なぜ問題が生じているかを知る
③知識の獲得
 問題解決のための集合知や、自分と似た人の変容過程を参考にする
④実践と修正
 背中を押してくれるコミュニティ、間違いを認め合う場所
⑤信頼の蓄積
 ゼロから信頼を培っていく
⑥脱皮の痛み
 自分自身と向き合い、人と生きる言語化に取り組む
⑦自分を慈しむ
 自分を慈しむために身体感覚を大事にする
⑧信念の変容
 助けられるばかりでなく、自分からも寄り添うようになる
⑨信頼の拡張
 世界の捉え方が変わり、終わらせたほうがよい関係にも気づくようになる
⑩安心な関係
 よい部分で繋がれるようになり、ライフステージに合わせて「家」づくりのやり方を変えるようになる

著者は、モラハラ、DVの悪意なき加害者に対し、幸せに生きるための言語体系を身につけさせる活動を行っています。本書の内容から、身に覚えのあるところがある人、孤独に苦しんでいる人は、自分のものの言い方について自省する必要があるかと思います。


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