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木村三郎、植月惠一郎編著、須藤温子監修『ハートの図像学 共鳴する美術、音楽、文学』小鳥遊書房

ヨーロッパでは、ハートほど使われるものはなく、特に赤いハートほど、芸術、建築、グラフィック、広告、装飾に用いるものはないらしい。

日本語と違い、ヨーロッパ言語では、心臓と心の両方ともハートという言葉を用いる。愛、心、魂など様々な概念を含む。飛躍するを意味するサンスクリット語の“hrid”、“krid”に由来すると言う。

バレンタイン・ハートとも呼ばれる「I ♥ NY」は、1977年、ニューヨーク州がミルトン・グレイザーのデザインによるキャンペーンによるものであるが、それ以来、♥をラブと読み、愛するという意味の表意文字として、世界に広まったものだそうである。

中世において、騎士が戦地に赴いて戦死した場合、内蔵はその地で埋葬されるが、心臓だけは持ち帰り、遺骸は防腐措置を施され運ばれていた。三つに分けられて葬られ、心臓を感情の中枢とする概念があったからだと言う。

本書は、ハートの表現としての形の意味するところを考察したものであり、心、心臓をハートの形で表わすことの意味をヨーロッパの芸術などで考察する。本書に書かれていることは、初めて知ることが多い。

また、本書は、日大芸術学部で行われたシンポジウムをもとに編集されたものであるようだ。さらに、若くした亡くなった須藤日大芸術学部教授へのオマージュでもあると、しるされている。

図像学という学問を知るこができる貴重な一冊であり、ハートについて少しでも興味のある方は、読むべきであると思う。



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