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筧裕介『認知症世界の歩き方』ライツ社

65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症だと言われているように、身近に認知症の人がいる人は多い。認知症は多くの人にとって、大きな社会課題となっている。

身近な人が認知症になってしまった場合、どのようにして、それを受け入れるのか。そもそも認知症の人をどのように理解するのか、よくわかないことが多すぎる。

本書は、そんな認知症の人がどのように思い、感じているのかを理解するためにとても役立つ書籍である。また、本人の視点で書かれているので、自分が認知症になったのではと思ったときにもとても参考となる。だから、よく売れている。

認知症の人のトラブルを旅する旅人にたとえて説明するとともに、たくさんイラストにより、楽しんで読むことができる。

降りるバス停はわかっているのだけど、会社に向かっていること自体を忘れてしまう。バスを降り損なわないように、1つひとつバス停を確認していたけれど、次が降りるバス停なのに、なぜか自分の手が目の前に見えているボタンに向かって伸びていかない。記憶のプロセスに問題が起きている。

お風呂に入ると、お湯がどうもヌルヌルしている。仕方がなく早めにお風呂から出て、シャワーで身体を流すことにした。またある日は、熱すぎたり、逆に冷たいと感じることもあって、「なんだか変だなあ」と思ってしまう。
心身機能の障害が、お風呂に入ることを嫌がる理由となる。

認知症当事者の視点で正しく理解することが大切であるとわかる。また、認知症の症状は、1人ひとり違う。「認知症」かもと思ったら、専門家に相談する。かかりつけ医でもいいし、役所の窓口や、地域包括支援センターがある。

自分が「認知症」かもと思ったら、話してみたいと思う人に伝えてみる。家族、友人や同僚、「認知症の人と家族の会」では電話相談をしているらしい。同じ認知症の人とつながるのもよい。認知症カフェ、ピアサポートなどがある。

著者が2018年に「認知症未来共創ハブ」に参加し、「認知症の課題解決は、デザイナーの仕事だ。」と確信したことから、本書籍が制作された。認知症で本当に困っているのは、本人そのものである。認知症にかかわり合う人に、本書籍を手もとに置いておくことをおすすめしたい。





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