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森田富士夫『「送料有料」です!ー人口減少社会でも持続可能な物流サービスのあり方ー』白桃書房

ネット通販などで「送料無料」と表示されることが普通になっているが、送料にコストがかからないことはなく、欺瞞だという。ネット通販会社が送料を負担している。

しかし、実際にはネット通販会社が送料を負担しているのではなく、商品の販売価格に含まれているというの正しい表現となる。「送料無料」のアンチテーゼとして、最も簡潔なワード「送料有料」としたようである。

人口減少に加えて高齢化で、消費財の需要は減少しており、国内貨物輸送量が減少し、物流コストは上昇している。国内貨物量は減少しても、営業用トラックの輸送量が増加している。

営業用トラックと自家用トラックがあるが、自家用トラックから営業用トラックへの荷物シフトが進み、営業用トラックの輸送量が増加している。自社の荷物を自社の自家用トラックで輸送することより、営業用トラックへ委託した方が効率的なことがある。

それでも消費関連貨物の国内輸送量は日本の人口減少とともに減るだろうと推測され、このままの物流の仕組みを続ければ、負担するコストが増え、走れば走るほど赤字にが増えることが、物流危機の本質であるという。

ネット通販による川下物流で宅配が増えている。最近、貨物軽自動車をよく見かける。ラストマイルの配送業務を自営業の貨物軽自動車運送業者に委託している。

再配達率を下げる取り組みが活発化し、自宅以外で受け取りや、宅配BOX、「置き配」の普及に加え、コロナ禍による在宅勤務の増加もこれに寄与した。しかし、再配達率が下がることにより、運送単価の引き下げ、定額制運賃への条件変更により、実質的な単価切り下げが行われた。

下請業者は個建で運賃を得ているが、自営業者は「1日1万3千円という契約です。」ので、配達する荷物を増やすほど下請業者が得をすることになる。

フードデリバリーも増えている。原動機付自転車や自動二輪車もあるが、ほとんどは自転車で宅配している。この自転車は、交通ルールを無視し、予測できないような危険な走行をする人がいる。

引っ越しサービスは、家財をたくさん持っている人が良いお客さんでしたが、これからは運ぶものをできるだけ減らすかが、売上金額をできるだけ多くするという発想が必要である。「断捨離」などのアドバイスができる営業担当者を育成することも必要となり、運ばない家具はリサイクルショップで販売する。

ドライバー不足は、長時間労働と低賃金が原因であり、大きな課題である。「2024年問題」は、働く方改革関連法で2024年4月からは、トラックドライバーの時間外労働時間の上限が罰則付きで年960時間にするというものである。労働条件改善の原資を確保できない多くのトラック業者は死活問題である。

最近の食料品や日用品の値上げ理由を「原材料や物流コストの上昇」と説明しているが、営業用トラックの運賃はほとんど上がっていない。

冷凍冷蔵倉庫や物流センターの電気料金の高騰により、夜間料金を利用するとしても、コスト削減は限界にきている。また、高速道路の「深夜割引」が、インター入口での待機要因となっており、ドライバーの労働時間短縮や労働条件改善を阻害している。

本書では悪しき商慣習など、物流の問題点を説明するとともに、自動運転やロボットなど、新しい動きについても記載している。

日本の生産性が低いのは、バブル崩壊後の経済構造の再構築の過程で、非正規雇用労働者が増加したことが要因と著者は推測している。派遣法の改正や、運送業における経済性を無視した参入規制緩和が、それを助長したと思われる。

その過ちを繰り返さないよう、DXへの取り組みなど、生産性の向上に真剣に取り組むことが必要と思われた。



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