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『六人の嘘つきな大学生』が最高に面白かった!

先日、ミステリー小説『六人の嘘つきな大学生』を読んだんですけど…
いや〜、めちゃくちゃ面白かった!!!

私はあまりミステリー小説を読まないんですけど、Amazonですごい高評価がついているので気になって読んでみたのですが、わたし史上最高におもしろいミステリーでした。

というわけで、まだ読んでない人向けの本紹介と、すでに読み終えた人向けのネタバレありの考察を書いていきますので、よかったらお付き合いください!


まだ読んでいない人への作品紹介

このミステリー小説の中心となるテーマは「就活」です。

派手な殺人事件は起きませんが、採用面接のグループディスカッションで巻き起こったグロテスクな事件を中心に、6人の就活生を描いた群像劇となっています。

作者は浅倉秋成さん。私は今まで知りませんでした。1989年生まれということで私より若いです! 伏線の巧妙さに定評のある作家さんです。

いや、ほんとに、伏線の張り方が尋常じゃないくらいに巧みでした!

ストーリー構成も絶妙で、どこを読んでも緊張感があって面白かったです。

途中で「あの人が怪しいな」と思って読んでいくのですが、そんな自分の予想を1枚も2枚も上を行く展開でとても痛快でした。

しかも、ミステリー的な技巧だけではなく、就活生の心の葛藤や企業側の心理を描くなど、文学的・社会的な読み物としてもとても味わい深い内容なので、読み終わったあとの余韻が強烈に残りました。

多くの人に自信をもってオススメできる小説なので、まだ読んでない方はぜひ読んでみてください!


ネタバレありの感想・考察

この作品の醍醐味は、なんといっても絶妙な伏線の張り方にあると思います。

この作品は、「物語の中に拳銃が出てきたら、それは発射されなくてはならない」(「チェーホフの銃」)というミステリーのセオリーが、かなりしっかりと守られている印象をもちました。

皆さんは、どれだけ伏線に気づきましたか?

私は自慢じゃありませんが、伏線に気づく能力は、偏差値80くらいあると自負しています(傲慢)

まずは、序盤の文章

僕は歩くペースを嶌さんに合わせ、他の学生にも少しゆっくり歩きましょうと告げる。嶌さんは申しわけなさそうに礼を言うと、鞄から小さなペットボトルに入ったジャスミンティーをとり出した。

浅倉秋成著『六人の嘘つきな大学生』

非常にさりげない文章で、見逃してしまった方も多いかもしれませんが、この文章で「あ、嶌さんは脚が悪いのかな」という仮説がたちます。

この「嶌さんが脚が悪い」という仮説を頭に入れることができれば、下記の何気ない会話も伏線であると気づきます。

それが数カ月前に薬物使用で逮捕されたばかりの相楽ハルキという歌手の曲だったので、笑い上戸の僕は反射的に笑い転げてしまう。 「よりにもよってそんな歌やめろ、やめてくれ」と森久保くんが笑いながらも釘を刺すのは当然の話で、相楽ハルキは今や嫌われ者の代名詞であった。何年か前に運転中の不注意で交通事故を起こした──という話がニュースになったときから怪しげな雰囲気が漂っていた

浅倉秋成著『六人の嘘つきな大学生』 太字はやまつるが修飾。

小説内で架空の人物のフルネームが書かれるということは、それが重要人物であることを示唆していることが多く、しかも相楽ハルキは交通事故を起こしているという記述が、相楽ハルキと脚の悪い嶌さん(事故で脚を悪くした?)に、何らかの関係性があることを想起させます。

このあたり、気づきましたか?
私は気付くことができたので、1人で興奮してました。
そして、あ、これは嶌さんが犯人だなって思ったのですが…

また、面接前の飲み会で、嶌さんがお酒を飲めないにも関わらず、デキャンタ(ワイン等のお酒を入れて食卓に供するガラス製の容器のこと)の中の飲み物を飲む干すというシーンがありました。

お酒を飲めない人がデキャンタのワインを飲み干したら、下手したら救急車で運ばれてもおかしくないくらいなのに、どうして嶌さんは大丈夫なんだろう?って違和感を抱きながら読んでいました。

でも、よくよく考えると、「デキャンタ」っていうあまり馴染みの薄い言葉を使うことが不自然だったのですが、これは嶌さんが飲んでいた飲み物がお酒ではなかったことを隠すためのレトリックだったんですね。


そして、犯人が嶌さんでなかったのは意外でした。もしかしたら相模ハルキが嶌さんのために仕込んだ事件だったのでは!とも予想したのですが、それも違いました笑

波多野くんの残したフォルダのパスワードが、「ジャスミンティー」じゃなくて「フェア」だった展開は最高に痺れましたね。あのシーンが私にとって1番のカタルシスでした。


いやー、ほんとに素晴らしい作品でした!
浅倉秋成さんの作品は、これからも要チェックしていきたいと思います!

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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