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【書評】「アイデアのつくり方」を読んで

この本を読むことにした背景

転職に際して新しい業界の会社に入社した。業界知識が増えていく中で、新規事業を構想する必要が出てきた。日々のインプットを元にアイデアという形でアウトプットしたかった。しかしアイデアを作る上で必要な手順を体形立てて理解していない。よってアイデアのつくり方という抽象度の高いテーマを取り扱った本を元に体形的に理解し、インプット→アイデアのアウトプットの仕組みを身につけたいと考えた。


この本の構成

この本は大きく6つの構成に分かれており、それ自体がアイデアの作り方である。また、手軽に読むことができ、解説や翻訳者の感想を除けば1時間以内で読むことができる。

  1. アイデアの正体

  2. とにかく調べて資料を揃える

  3. 資料に手を加え並べる・整理する

  4. 常に考え、意識外での組み合わせを促す

  5. アイデアが誕生する

  6. 現実の有用性に合致させる

アイデアの正体

アイデアを扱う人間にはパレートの法則が適用される。パレートの法則は物事の成果や実態のうち8割は2割の人間が作り上げているとする定説である。組織の売上の8割は2割の人間が生み出している話は有名である。アイデアも同様の法則が当てはまり、2割が考え8割がその生み出されたアイデアを使う側に当たる。本書ではこれを「8割がカモにされる」と強めの言葉で表現することで対比的に描いている。
次に、アイデアが生まれる源泉には原理があり、作り出される方法がある。この2点を理解し心を訓練することが重要であると本書は述べている。私の理解では闇雲にアイデアを生む方法に腐心するのではなく、逆らうことのできない原理が存在する以上はそれに従い、扱う方法を踏まえることでアイデアを生むことができると述べていると考える。実際これを行うことができる人間が2割に値するのであろう。
最後に、アイデアの正体が端的に述べられている。それは「既存のアイデアの組み合わせ」であるということだ。これが原理であり、後ほど解説する5つのステップが方法である。

とにかく調べて資料を揃える

まずは自分がアイデアを生み出したい対象を定めて調べることだ。本書の表現を受け取るに、ただ表面的に調べるのではなく深く広く調べることが求められている。特に深さに関してはタクシードライバーを例に、乗り込んだタクシーのドライバーが他のドライバーとどのように違うかを徹底的に理解できるような会話を行うことが勧められるほど重要視されている。
調べた資料はスクラップブックのようにまとめたり付箋を活用したりしても良い。俯瞰して互いの関係を組み合わせることができるようなやり方が有効だと述べられている。

常に考え、意識外での組み合わせを促す

矛盾する表現だが、自分なりの理解を含めて記載した。
本の中では調べることで集まった情報を咀嚼し消化しつつも、消化液を出すことに集中すべきと表現されている。
つまり常に情報を噛み砕きこれまで考えなかった解釈と理解を進めながら、そのエネルギーや視点は考え続けることで湧いてこないので一度忘れるぐらい別のことに夢中になる時間を意識的に作るべしということだろう。
運動や遊びなど指定はなく、自身に刺激を与えるような体験が進められている。また、アイデアそのものを最初から捉えることはなく、天使の翼を目の端に捉えるような形で存在を把握すると表現されている。

資料に手を加え並べる・整理する

上述したようなプロセスにより得たヒントを元に再度咀嚼した情報を加工することが勧められている。「常に考え、意識外での組み合わせを促す」ことと、「資料に手を加え並べる・整理する」は一つのサイクルのように回すことが推奨されていると理解する。ここでもスクラプブックや付箋が推奨されており、一つの地図を広げて自分が行き来した情報間の関係や視点をまとめ上げるような活動が理想とされているようである。

アイデアが誕生する

ここでアイデアが誕生する。しかしアイデアは突如浮かび上がってくる存在であることも同時に述べられている。寝起きや散歩、シャワーの途中で突然アイデアが降ってくることは多くの起業家が事業アイデアを思いついた時の体験として述べられている。つまり直接アイデアを生み出そうとするのではなく、「常に考え、意識外での組み合わせを促す」ことと、「資料に手を加え並べる・整理する」を継続することが重要であると私は考える。

現実の有用性に合致させる

生まれたアイデアは可愛い。しかしそのままの存在では生きていけない。産まれたばかりの人間の赤子がそうであるように。しかしアイデアは自身で育つ。また20年かけて成人するようなスピードではなく、もっと早い。成長を促すには他者にぶつけることである。そうすることでこれまでにない視点、有用性との合致、理想と現実のすり合わせが行われると述べられている。
アイデアは生み出すことと、それらしい価値があることが重要であるのではなく、叩きぶつけることで形がよりはっきりすると理解した。

まとめ

本書を読むことで私の中で曖昧だったアイデアの作り方に道筋ができたと考える。特に多くの人が、私も含めて省略しがちなステップとして「とにかく調べて資料を揃える」ことが上げられるのではないか?また、「常に考え、意識外での組み合わせを促す」ことと、「資料に手を加え並べる・整理する」ことは継続が前提になっているので中断してしまうこともあるだろう。
それらの懸念を考慮していたかのように、まずは原理に従い、述べられた方法によってアイデアを生むように「アイデアの正体」で述べられているのは、著者がこれまで辿ったアイデアを生む苦しみが想像できるようだ。

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