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【倒産後記⑥ 倒産したら取引先はどうなるの?】

さて、会社が倒産した時、社長の頭をよぎる不安は、
① 従業員はどうなるのか?
② 取引先はどうなるのか?
③ 地域はどんな反応をするのか?

と書いたが、今回は②取引先に関する話を。

長年お世話になった取引先に、こちらの都合で迷惑を掛けることは、本当に申し訳ない気持ちでいっぱいである。反対の立場ならなおさらで、これは一生背負うことになる。

銀行の支援(リスケ)により3年ぶりに黒字転換した弊社。
年末年始の売り上げ増で、来期に弾みをつけようと思っていた矢先に、信用不安からメインの取引先が納品停止に及び、その日をもって105年の歴史に幕💧


全ては社長の責任であることを否定はしないが、
2〜3社の思惑で強制閉店に至った悔しさは消えることはない。

✔︎支払いが不安なウチを潰して負債を無くし

✔︎ドル箱の店舗だけを県内の優良ライバル店に引き継がせ

✔︎そこのメイン納入先になる密約

いくら黒字になったとはいえ、キャッシュが乏しい弊社の台所は「日繰り資金繰り表」の提出を命じていたメイン問屋はお見通しである。
金がなければ他から仕入れることはできない。
他社からの保証金の追加も急増した。

⭐️納品停止の日は、既払い保証金を上回る納品額になるXデーだった。

12月初の倒産ゆえ、問屋への支払いは一ヶ月分が未払いとなる。
倒産当日、納品停止を聞いた長年の取引先5社が一緒に私の元へ駆けつけ
「小林さん、もう十分頑張ったから終わりにしよう。これからは地方の個人スーパーが生き残れる時代じゃ無い。今なら自分たちも連鎖倒産しなくて済むから!」との説得で倒産を決めた私。

社歴の長い弊社の取引先は、その大手問屋が半分、残りが地元の中小問屋だった。

この経緯を知っている「戦友」とも呼べる彼らは皆、私と同じ気持ちであり悔しさを隠しきれない。
債権者集会でもその大手問屋の密使を睨みつけていたが、全ては後の祭り…


倒産翌日には、誰もが想像するであろう悲惨な光景を覚悟していたが、次々とニュースを聞いた長年の取引先が私の元を訪れ、私や会社に残っている従業員に対して労いの言葉をを掛けてくれる。

鳴りっぱなしの電話も、ほとんどがお客さんからのお礼と労いの電話だった。

私は逃げる場所もないので、それ以降も毎日会社に出勤していたが、それは年内一杯続く光景となる。災害時にパーキングエリアでパンを配るあのパン屋は「今まで大変お世話になりました。こんな時ですけど皆さんで食べてください!」とランチパックを山ほど差し入れてくれた。
世の中は鬼ばかりではない…。ありがたかった🙏🏻

債権者である地元の取引先は、裁判所に次々と「債権放棄」を申し出た。
「自分達も長年儲けさせてもらった」と。
そして多数の従業員を雇用してくれた。
『困った時はお互い様』身に染みる言葉💧

それを聞きつけ、納品を停止してトリガーを引いた大手問屋まで億にも上る債権放棄を申し出てきた。それがどんな意味かは分からない…。

最終的に金融機関を除く8割の債権者が債権放棄を申し出てくれた。
そして一社も連鎖倒産は発生しなかった
そのおかげで私はこうして思い出を書き綴ることができている。

納品停止を命令した、親会社の商社から出向していた副社長殿は、
翌春めでたく社長に昇格したそうだ。
『今年の汚れ、今年の内に!』と部下に指示していたらしい…。

その顛末は、後日業界誌に「スーパーやまと事件」として特集された。

◉ これはあくまでも最悪の中でも幸運だった私の経験であり、他の事例に当てはまるものではない。あらゆる手を打って、こんなハードランディングを避けるのが社長の勤めである。
どうか皆さんにとって必要の無い知識でありますように🙏🏻


※最後までお読み頂きありがとうございます!

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