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三島由紀夫の予言と現代日本

 三島由紀夫「果たし得てゐない約束――私の中の二十五年」

二十五年間に希望を一つ一つ失つて、もはや行き着く先が見えてしまつたやうな今日では、
その幾多の希望がいかに空疎で、いかに俗悪で、しかも希望に要したエネルギーがいかに
厖大であつたかに唖然とする。これだけのエネルギーを絶望に使つてゐたら、もう少し
どうにかなつてゐたのではないか。

私はこれからの日本に大して希望をつなぐことができない。
このまま行つたら「日本」はなくなつてしまうのではないかといふ感を日ましに深くする。

日本はなくなつて、その代はりに、無機的な、からつぽな、ニュートラルな、中間色の、
富裕な、抜目がない、或る経済的大国が極東の一角に残るのであらう。それでもいいと
思つてゐる人たちと、私は口をきく気にもなれなくなつてゐるのである。

彼が想定していたのは今から30年前の話。

現代はそれを越えて、「無機的な、からつぽな、ニュートラルな、中間色の、貧弱な、間抜けの、或る弱小国が極東の一角に残らないかもしれない」という局面。

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