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ゲームとしての推理小説略史

ミステリー=推理小説は特異な小説である。なぜかというと、作者と読者の知恵比べであるからだ。基本的に、小説にゲーム要素を包括するのは推理小説だけで、それ以外のジャンルの小説には見られない。そうしたゲーム的要素は、不完全ながらもエドガー・アラン・ポーが推理小説を考案した時点で含まれており、その後、推理小説の主流が短編から長編に変わっていく中で次第に醸成されてきた。画期となった作品はというと、どれとも決めがたいのだが、1920年に執筆されたアガサ・クリスティーの『スタイルズ荘の怪事件』とF・W・クロフツの『樽』はそうしたゲーム的要素を備えている。この頃にはすでに、推理小説=パズルゲームという認識があったことになる。

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