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「今起きていること」を研究する難しさ

『太平記』という軍記物語がある。後醍醐天皇の即位から室町幕府三代将軍足利義満のもとで細川頼之が管領になるまでの約50年間を描く。作者は不明だが、僧恵鎮、足利直義、僧玄恵が成立に関わったと取れる記録がある(『難太平記』)。
『太平記』の内容はおおよそ三部に分けられ、第一部は後醍醐天皇による鎌倉幕府打倒、第二部は建武の中興の失敗から後醍醐天皇の崩御まで、第三部は観応の擾乱から二代将軍足利義詮の死、義満の将軍就任と細川頼之の管領就任までである。同じ軍記物語としてよく『平家物語』と比較されるが、『平家物語』がすでに完結した歴史的事件を描いているのに対し、『太平記』は途中(特に第三部)から同時代の出来事を並行して描写する形になり、その混乱が作中に現れてしまっている。

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