博士課程を1年終えてみて

「博士課程を半年終えてみて」という下書きの記事が眠っていたので,そのときとの差分を込みで,1年終えた感想を述べていこうと思う.某国際会議の投稿がひと段落したので.

出来事

・修行僧生活
講義がない.ただただ目の前の研究をやるのみ.ひたすら一人で山を登るような生活.-> これは変わらん.ずっと自分で作っているデータセットのCOSIAN(https://github.com/yamathcy/cosian)のアノテーションをやっていた.

・共同研究 ×2
国内と国外,2つの機関と同時に共同研究が進行.ひとつは去年の体調不良の時に止まっていたものが再開した形.本当に周りに恵まれていると思うが,私が無能ムーブかましてばかりいて宝の持ち腐れ感. 

-> 相変わらず無能ムーブをかましている.正直キャパオーバーしかけている.

・アウトプットが多くなった
論文も書くし申請書も書く.とにかく書くことが多かった.
自分がいかに構成立った文章を書くのを苦手か思い知った.

-> 書き方をわりかし覚えてきたと思う.あれからさらに論文を2本,申請書を1本書いて,5月にも投稿予定がある.

・コミュニティの輪が広がる
自分の研究分野のコミュニティとしてslackも開設したし,アウトリーチ的な外部発表もした.その結果Twitterで研究界隈の知り合いも増えた.オタクがオタク仲間を増やすってこういうことか,とぼんやり思った.

-> これはさらに広がった.Muana(https://muana.connpass.com/event/234179/participation/#participants)やSIGMUS等.12月に日本と台湾のワークショップに参加し,国外のつながりもできた.ナイスな歌声合成サーベイ論文(https://arxiv.org/abs/2110.02511)の著者ともつながることができてhappy.

・バイトで伝説のポケモン扱い
忙しいのでバイトになかなか出られなかった.もう長く勤めていると私を知っている人もいなくなるので,「お前誰? 」「新人?」みたいなコミュニケーションも生じたことがあった.

・バイトを辞めた
仕事自体は楽しんでやっていたものの,自身の意向と会社のスタンスの噛み合わなさを感じ始めた.研究も忙しくなり,このまま残ることがお互いのためにならないと感じ,退社することを決意.

-> バイトを辞めて研究に専念する生活を過ごす.幸にも10月からJST次世代の給料が入ってきたのでお金には困らないどころかむしろ社会人新卒くらいはもらえているので助かった.ありがとうJST.


所感
・意外とつらくない
やれ博士課程はつらいだの人生の墓場だの言われているが,金がないこと以外はそんなに辛い生活ではなく,むしろ修士のときより伸び伸びと過ごせていて天国.これは周りのおかげもあると思う.つくづく思う,環境は大事.

-> 1月~2月あたりにアノテーションが無に帰するかもしれない重大な問題が発覚し,辛いシーズンに入った.けど,去年ほどの絶望感はなく,すぐに全てを投げ出して休息をとることによってなんとかなった.頭が正常な状態で冷静に寝かした問題に向き合うことでなんとか対処している.

・孤独
仲良くしていた同期はほぼいなくなり,孤独.Twitterがなかったら耐えられなかったかもしれない.

-> 相変わらず孤独なのは変わらないが,感染拡大が収まった時期に友人と会えたりしたので,そういう僅かな機会は大切にしていきたいと思う.それに,元々人間が孤独であることに盲目になっていた状態が解けただけかもしれない.

・専門家として扱われることの光栄さと責任の重さ
外部に顔を出していると,学生ではなく,一人の専門家としてみなされたと感じることが増えた.学生気分ではいられない.知識や見解は正しく伝えないといけないし,伝え方も工夫すべきと思うことが増えた.

-> これは学会でポスター発表をしたとき,明らかに前回発表したときよりも質問が鋭くなっていたので,身に染みて実感している.

・メンタルは強くなった
防御力というよりは特防が上がった感覚.自分への期待値がいい意味で下がり,何かうまくいかないことがあっても「もともと自分はこんなんだし,何を落ち込むことがある?」と思うことが増えた.ただ同時に,無理なことでも自分の限界値を超えてやる,ということをしなくなったのでハングリーさは減ったかもしれない.

-> 特防に加え,D1後半では回復するということも意識した.辛くなったら別のことをする,どこか遠くの宿に駆け出す(12月に八ヶ岳,1月に沖縄,3月に湯河原.それぞれ3~5泊程度のショートステイ.),うまく行かない研究は一旦寝かす等.

・査読あり採択&受賞をするも,自分の力じゃない感覚
業績を積んでいく感覚とはこのことか〜となった(小並感)が,まだ周りの人におんぶだっこされてる感は拭えない.

-> これは思う.いざ自分だけの力で同じことをしようと思ったとき,出来上がったもののしょぼさを見て,まだまだだなと思った.


これから
・国際会議&ジャーナル書きまくる
実は成果が渋滞している.それを消化していくシーズンにする.今までよりさらに忙しくなる.嬉しいことだが.

-> 今春は国際会議2~3本になる見通し.また,夏秋には国外の共同研究者がいるところへ中期滞在する.その成果を秋にもう一本国際会議として出す予定.

・「〇〇といえば」な存在になる
この周りの技術基盤を固めるシーズンにして,インパクトがある成果を出すとともに,自分の研究分野での存在感を深めるべくアウトリーチや対外発表を存分に行なっていく.

-> 割と色々情報だけはかき集めて公開してたので少しはMIRのyamathcy的な存在には近づけたか?知らんけど.こういう情報公開はこれからも引き続き積極的にしていきたい.情報公開をしないまま,若い人たちに「〇〇も知らんのか」と上から目線になる嫌な人にだけは死んでもなりたくない.やり方を知らないが故に参入できず人が増えない事態を防ぐためにも,そういった情報公開は積極的にしていきたい.

・英語でコミュニケーションできる人物に
正直英語は嫌いかつ苦手なのだが,この道に進んでしまった以上はそうも言っていられない.最低限会話で困らんくらいには勉強する.

-> 共同研究者と拙い英語ながらもコミュニケーションは途切れずできてきたようには思うが,それは先方の優しさで成立しているので,もっと流暢に喋れるようになれた方がいいかもしれない.

・シングルスレッドの鬼になる
マルチスレッド的にやろうとして失敗した.シングルスレッドを意識したタスク消化を心がける.

-> 1タスク(国際会議1本分くらいの)1ヶ月スパンで頭を切り替えるのが自分にとってちょうどいいということがわかった.

その他
・後輩の面倒
大変だけどなんやかんや自分は誰かをサポートすることが好きなんだと思う.次の年度から深層学習系の学生が一気に増えるので,勉強会も開いた.
ただ,卒研生からM1に上がる後輩は非常に優秀なので,彼らが活躍してくれることだろう.(人任せ)
・海外修行
軽いノリで今共同研究をしている人のラボへ滞在する予定が決まった.投稿した国際会議がacceptされれば,同じ国の中で滞在中に発表できるのでちょうどいいっぽい.資金は用意できるらしいが補助はあるに越したことはないので,学振はDC2ではなく海外若手挑戦者の申請書を書いている.(出さないの怒られそう)