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企画はセンスではない。|「さぐってつくる企画論」

 企画やデザインにおいて、多くの人が勘違いしてそうな事は、これらが感性や直観だけで「出来上がる」ものだという認識ではなかろうか。

今回は僕が学んだ論理的に企画を仕上げる方法についてまとめてみたので、ぜひこれを機に「プランはまじバイブス~」とか言ってるやつは悔い改めて歴史とか言葉の成り立ちを学ぼう(笑)

もちろん、発想を行いそれをアイデアにするのは重要である。そのためにブレインストーミング法・マインドマップ・ワールドカフェ・三分法 ⇒ KJ法など、様々な発想法や整理法が存在している。

しかし、企画は最終的に多様な人に理解・納得してもらわないといけない

絡み合った要素を解きほぐし、共通言語に変換する。筋道だった推論をもとに確実性の高い成功へと導く指針たる必要がある。

そのためには、定量的・多変量解析的手法を導入し、科学的分析を行う必要性がでてくる。

分析

ということで、最適な企画を仕上げるための前準備として、対象の「構造をさぐる」手法、そしてある目的に対してこれを説明したり、解決を見出す「モデルをつくる」手法についていくつか概要を紹介したい。(伝統的な手法)

忘れてはいけないことは、分析結果から感性・アイデアの論理を確認することと、そこから新たな着想を得て、企画を進化させることである。


1-1. 対象の構造をさぐる手法

 まずはさぐる手法の紹介。これらの手法で対象となる各業種、製品のデザインプロセスを調査・分析することができる。対象の内的な構造を明らかにできる手法である。

1-2. 数量化理論3類(パターン分類法)

目的:対象となる製品などの個体サンプルとカテゴリのデータを複数分析し、ポジショニングマップ(プロダクトマップ)を生成、軸を解釈して特徴を掴む

カテゴリとは、例えば製品の接続方法が「有線」か「Bluetooth」かなど、対象個体がどこに属するかを決めることができる属性値である。

数量化理論3類は、これらのサンプルデータ・カテゴリデータを同じほど集め、両者を同時に分類する方法で、質的データによる主成分分析のような解析法である。

分析によって明らかになったカテゴリスコアのポジショニングマップ(散布図的)をもとに、【高級仕様 ⇔ 大衆仕様】など、軸の特徴を解釈することができる。

iOS の画像 (1)

そして、解釈した軸をもとに、サンプルスコアのプロダクトマップを生成し、それを見ると、それぞれのサンプル(個体)が相対的にどのような性質を持っているのかが理解できる。

これによって、企画したい製品の既存構造を理解することができ、企画を説明するための道具にもすることができる。

さらに後述するクラスター分析法と組み合わせるとさらに相性よくモノを分析できる。


1-3. クラスター分析法(数値分類法)

目的:分析対象の持つ属性データや類似度から"距離"を算出することで、いくつかのクラスター(群)に系統分類する。

ここでは、よく使われるとされる「階層型クラスター分析法」、1-2で紹介した「数量化理論3類」との組み合わせについて紹介する。(なお、書くと膨大になる(そろそろ眠たくなってきた)のでクラスター分析の計算方法は省略する。)

「数量化理論3類」によって算出された対象サンプル個体のサンプルスコアをもとに、"距離"を計算してクラスターの分類・併合を繰り返すことによって分析すると、クラスター間の距離をもとにデンドログラム(樹形図)を作成できる。

そのデンドログラムをもとに視覚的にクラスターを分けることができるのである。

iOS の画像 (2)

そして各クラスターの意味を考察、解釈する。

なお、1-2に記述した「数量化理論3類」で作成したサンプルスコアのプロダクトマップにこのクラスターを書き込むと、より個体の性質・分類構造を理解しやすくなる。

iOS の画像 (4)

これで、より企画したい製品の既存構造を理解することができ、企画を説明するための強力な道具にもすることができる。

1-2, 1-3で紹介した手法は主に「距離による構造化」と言える。


1-4. ISM法

目的:生成される構造グラフより、分析対象の要素における問題や考えうる解決手段から、どのようなパスを経て目標や結果が生じるのか、因果関係を整理し、明確化する。

もともとは複雑な社会システム問題を分析する手法として開発された。

対象システムの目標・問題点・改善手段を列挙し、「iが改善されるとjが改善されるか否か」で定義し、直接関係行列を作成することで、そのデータをもとに分析を実行することができる。

生成した構造グラフでは上に行くほど「他のサブシステム影響をより強く与える要素」、下に行くほど「他のサブシステムから影響をより強く受ける要素」、そして右に行くほど「他のサブシステムとの結びつきがより強いもの」となる。


1-5. AHP法(階層分析法)

目標:対象システムへの解決策などの優先順位をつける

対象のシステムへの解決策やアイデアなどの列挙されたすべての項目間で一対比較し、優劣を数値で定義した正方行列を分析、固有ベクトルを求めることで、その固有ベクトルの大きさ順に優先度を決定することができる。

この際、分析結果の整合度(C.I.)が0.1~0.15以下になるように気をつけなければならない。(ならなければ、元の正方行列データを調整する必要がある。)

数々の案に対し、科学的な理論に基づいて優先度を決定できるので、企画を決定する、または説明する際に非常に利用できると考えられる。

1-4, 1-5で紹介した手法は主に「階層による構造化」と言える。

1-6. 補足

他にも「因子分析」や、データマイニング・データ解析でおなじみの「主成分分析」なども「構造をさぐる」分析手法としてあげられる。


2-1. モデルを作る手法

これは、推定論的モデル化の代表例である「重回帰分析」を紹介しておく。

2-2. 重回帰分析

目的:複数の説明変数から1つの目的変数を予測する。

データ解析・データマイニングなどでおなじみである。

複数の説明変数と、それによる目的変数の組み合わせを分析し、モデル式を作成することによって、とある説明変数の場合の未知なる目的変数予測する手法である。

モデル式を生成することで、データの予測を可能とし、企画の際の主張の根拠として利用することができる。


3. まとめ

 今回は計算方法や実装方法を割愛し、企画の際に使える分析手法たちの概要についての記事を作ってみた。分析用ツールやPythonなどで実装する方法は調べるとたくさん出てくるので実際に活用してみると面白いと思う。

なので、分析の際に最も注意すべきなのは分析するデータの作成部分だと思う。有意で思惑のあるデータを作成しておかないと、分析結果を有益に企画へつなげることができないだろう。

この記事によって、実際の企画の際などに用いられる手法、企画するための論理への興味につながっていただけると幸いである。

師曰く、「トレンディドラマのように主人公の思いつきで大成功するアイデアが生まれたり、採択されたりはせず、地道な分析と前準備のうえ、発想とアイデアが成り立ち、採用される」そうである。

各業種や製品に対する地道なデザインプロセスの調査・分析、それによる構造・論理の理解とアイデアの反復が、良い企画につながるのだろうと考えられる。

僕も学びたての知識をまとめたにすぎないので、誤りなどがあればご指摘願いたい。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました!


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