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瞑想 アサ活のススメ

アサの学名はカンナビス(Cannabis)といい、カンナビノイドと呼ばれる化学成分を100種類以上含有しています。
カンナビノイドの一つであるCBD(カンナビジオール)は、抗菌作用や鎮静作用を持ち、炎症、痙攣、神経症、統合失調症、骨の成長促進、癌細胞の成長抑制などに薬効が示されます。
またTHC(テトラヒドロカンナビノール)は、高揚感や感覚を鋭敏にする作用を持ち、精神的疾患をはじめ食欲増進や疼痛緩和に効果があるとされています。
ヒトに陶酔感や、いわゆる麻薬効果をもたらすのは、このTHCの作用によるものです。
縄文時代から日本の風土に定着してきたアサの特徴としては、THCはほとんど含まず(0.08~1.68%)THC作用を抑えるCBDの濃度が高いということがあり、麻薬効果を有するものではありませんでした。
 
THC作用の高いドラッグとしての大麻は、終戦後在日米軍の兵士たちによって持ち込まれたものであり、それを規制する「大麻取締法」もGHQの命令によって作られた法律です。
「その栽培の目的如何にかかわらず、また麻薬含有の多少を問はず、その栽培を禁止し、種子を含めて本植物を絶滅せよ。」
このあまりにも理不尽なGHQの要求に対して、占領下の日本政府は、当時あった数万軒のアサ農家と、庶民に根付いたアサ産業を守ろうと、再三に渉る折衝を試みた末、アサ栽培を免許制とすることで落とし所を得ました。
ところがどうしたことか成立した「大麻取締法」には、「農家保護」という本来の日本政府の意図が立法の目的として記されておらず、いつしか「違法薬物取り締まり」という機能面ばかりが表立つようになっていきます。
その結果として1954年に3万7000軒あったアサ農家は、2019年にはわずか35軒にまで激減してしまいました。
縄文から続く日本文化の長い歴史の中で、神聖で重要な位置を占める作物だったアサは、こうして「ダメ、ゼッタイ!」な存在へと変わったのです。
 
アメリカでは21世紀の今では、ほとんどの州で医療大麻が認められ、慢性疼痛症や癌治療の副作用緩和など、200種類以上の症状に対して適用されています。
世界的にも医療大麻は次々と合法化されつつあり、2005年カナダで大麻由来の医薬品が承認されたのを皮切りに、現在では30か国以上で使用されています。
WHOは2020年、科学研究を推進し医療利用への道を開くため、大麻の危険性の格付けを一段階引き下げました。
カナダでは新型コロナウイルスCOVID-19の感染予防に、大麻の成分が効き目を持つという研究結果も発表されています。
 
THC濃度が一定基準以下のアサ品種は「産業用大麻=ヘンプ」と定義されており、アメリカでは2018年の改正農業法によって、麻薬取締局(DEA)から農務省(USDA)へその管轄が移管され、その違法性が解除されました。
アサも小麦やトウモロコシと同じ「農産物」として扱われるようになったということです。
今ではヘンプシードは、必須脂肪酸であるオメガ3とオメガ6の理想的なバランスを持ち、アレルギー性が低く無加熱で摂取できる良質のたんぱく質(必須アミノ酸全9種類を含有)や、鉄、銅、亜鉛、マグネシウムなどの必須ミネラル、不溶性食物繊維などを豊富に含んでいる「スーパーフード」として、健康業界や食品業界で注目を集めています。
 
ヘンプは農薬不要で成長が早く、狭い土地でも少ない水で大量に収穫できる上、土壌の改善にも役立ってくれる、農家にとって理想的な農作物です。
化学工業製品として石油から製造されている製品は、ほぼ全てヘンプからでも作ることができ、根・葉・茎・実など、「ヘンプには不要な部分はない」と言われる万能素材なのです。
ヘンプ繊維は衣料用のオーガニック素材として、パタゴニアやリーバイスなどのアパレル企業が次々と商品化しています。
またヘンプの茎と種子から抽出されるCBDは、ここ数年で美容健康用の製品の開発が急速に進み、その市場は爆発的に拡大しています。
米国の調査会社ジェネシス・マーケット・インサイツによると、ヘンプの市場規模は2023年には約6兆6000億円に達するだろうと予想され、19世紀カリフォルニアのゴールドラッシュに擬えて「グリーンラッシュ」と呼んでいます。
 
前縄文人が世界に先駆けて栽培を始め、常に日本人のこころや暮らしと共にあったアサは、21世紀の今日、世界的に新しいサスティナブルな世の中を象徴する存在になろうとしています。
占領軍の意向でここ数十年間お蔵入りさせていましたが、この代々伝えられてきた貴重な日本文化の共有財産を再び活用しない手はありません。
世界中の畑ですくすく育くんでいるアサの光の中、日本の世もせめて「麻中之蓬 まちゅうのよもぎ」のように、ねじ曲がらずに真っ直ぐ正しく成長していって欲しいと願います。

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