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からっぽになった家にぽつんとたたずむ「空の巣症候群」にならないために、なったときのために。

旅立ちの春

卒業、入学、就職、結婚、引っ越し、転職…。
移り変わりゆく季節「旅立ちの春」ですね。

「子どもが大学生になり下宿する」「子どもの就職が決まり引っ越しする」など、生まれてから片時も離れずいっしょに暮らしてきたお子さんと離れて暮らすことになる方もおおいのではないでしょうか?

空の巣症候群

大学生ぐらいのお子さんがいる母親はちょうど更年期に差しかかり、心身の変化をむかえる時期でもあります。夫の仕事もまだまだ忙しく単身赴任をしているご家庭もあるかもしれません。家のなかにひとり取り残された母親が、胸にぽっかり穴が空いたような気持ちになり、空虚感や不安を感じ、抑うつ状態になり、体調不良を起こしてしまうことを「空の巣症候群(エンプティ・ネスト・シンドローム empty nest syndrome)」といいます。

ちょうど、鳥の巣からひなが巣立ちからっぽになった巣に親鳥がぽつんと取り残されているのと似ているからこの名前がつけられたのでしょう。

空の巣症候群になってはいけないのでしょうか?

これは「かぜをひいてはいけないのでしょうか?」「うつになってはいけないのでしょうか?「不登校になってはいけないのでしょうか?」「離婚してはいけないのでしょうか?」と似ていて、わたしは、空の巣症候群になっていけないことはないと思っています。なってしまっている自分を自覚し、自分を労わり、内なるちからを信じて、そっと時が解決するのを待つのも一つの方法です。

ただ、なってしまうことにより、涙が止まらなくなってしまったり、家事ができなくなったり、仕事中にぼーっとしてしまったりして、日常生活がおぼつかなくなるような場合は、ケアが必要です。できれば、ケアをせずとも日常生活がおくれたほうが、ほかにやりたいことに目がむき、時間をつかえるので、良いに越したことはありません。

抑うつ状態や体調不良を感じている場合は

空虚感や不安を感じているだけではなく、すでに、抑うつ状態や体調不良を感じているようであれば、早めに医療機関へご相談してください。心療内科を訪れることには抵抗がある人もいるかと思いますが、いつも通っている内科でも「眠れない」「食べれない」「落ち込みがはげしい」「心臓がドキドキする」など、身体の不調をつたえると、お薬を処方してくれる場合や、心療内科を紹介してくれる場合があるので内科の先生に話してみてください。

空の巣症候群にならないための予防として

空の巣症候群にならないための予防として、厚生労働省の労働者の心の健康の保持増進のための指針で挙げられている、うつ病予防のための4つのケアの考えかたを参考に、どのような対策ができるか考えていきたいと思います。

ーうつ病予防のための4つのケアー
1、「セルフケア」

私たちが自分自身で行うことのできるケア。働く人が自らのストレスに気付き、予防対処し、また事業者はそれを支援すること。
2、「ラインによるケア」
管理監督者が行うケア。日頃の職場環境の把握と改善、部下の相談対応を行うことなど。
3、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」
企業の産業医、保健師や人事労務管理スタッフが行うケア。労働者や管理監督者等の支援や、具体的なメンタルヘルス対策の企画立案を行うことなど。
4、「事業場外資源によるケア」
会社以外の専門的な機関や専門家を活用し、 その支援を受けること。

厚生労働省「こころの耳」より

この4つのケアは、働く職場がある労働者のためのケアなので、言葉を読み替えていきたいと思います。

まず、1、「セルフケア」については、自分自身でおこなう自分自身に対するケアなので、ストレスに気づき、予測できる限りの予防をすることは重要です。特に進路や就職などでお子さんが巣立つ場合は、時期的な予測も可能なので、その時期に自分や他の家族の大きな決断をともなう変化はできるだけさけ、時期をずらすなどの対処をすることをおすすめします。

2、「ラインによるケア」については、管理監督者がおこなうケアとありますが、ご家庭では身近にいる夫やパートナーが良き相談相手になってくれる関係性があるといいですね。でも、相談するとかえってストレスが増えてしまうような関係であれば、夫に相談するのはやめておきましょう。

3、「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」については、夫以外のご家族、きょうだいや両親、または、友人や知人などが、あなたに「最近どう?」「お子さんと離れてさみしくない?」など気軽に声をかけてくれるような関係性がつくれているといいですね。休日にランチに出かけたり、日常の他愛のない話をさらっとできる関係性を複数つくっておくことは大切です。ときにはグチをこぼしてもいいんです

4、「事業場外資源によるケア」については、お近くの専門家を頼りましょう。この場合の専門家とは、女性の相談にのってくれる行政などの相談窓口や、地域の保健センター、医療機関の内科医やカウンセラー、個人のキャリアコンサルタントなどです。

かりそめの穴埋めではうまらない

胸にぽっかり空いてしまった穴をうめるように、さみしさをうめるように、仕事や習い事や予定をたくさんいれるのもありですが。その穴の深さや状態をしっかりと見つめないと、かりそめの穴埋めになってしまい、いつまでもいつまでもその穴はうまりません

まずは、いまの「ぽっかりあいてしまった自分」をみつめ、ぽっかりあいてしまっていることを自覚し、そのぽっかりを逡巡してみてもいいと思うんです。ぽっかりは永遠につづくわけではありません。巣立った子どもたちが、ぽっくり帰ってくることもありますし、趣味や仕事で夢中になれるものを見つけるかもしれません。その時がきたときに、そのように行動できればいいのです。

ただ、そのためには、これまでのつながりや関係性をコツコツと育てていくことは大切です。関係性は一朝一夕にはつくれません。親子、夫婦、友人関係など、ここぞというときに発揮できるよう、毎日のコツコツとした耕しをわすれずに

ライター|山咲サクラ
女性のための相談員|産業カウンセラー|国家資格キャリアコンサルタント
子どもの成長とともに住む場所と働きかたを変えてきました。会社員を寿退社後、出産を経て女性センターが主催した女性リーダー育成セミナーを受講し男女共同参画について学ぶ。受講仲間と読み聞かせサークルを立ち上げ、受講後同女性センターにてパートで働きはじめる。子どもが小学生に上がるタイミングで引っ越し、パート、派遣社員を経て、市民一人ひとりからの寄付をNPOへ助成金として助成しNPOの伴走支援をする公益法人にてフルタイムで働く。やりがいはあるが残業に追われた毎日を一新し、テレワークにて、国、県、市の受託事業として女性起業家の伴走支援プログラムを運営する事務局へ転職。受託事業終了後、子どもの巣立ちを機に女性のための総合相談の相談員として新たなスタートをきる。
[Twitter] @ymsksakura


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