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工藤啓「金持ちより人持ち」

今回は2012年9月30日に開催された第4回コモンズ社会起業家フォーラムの文字起こしです。

認定NPO法人育て上げネットの工藤啓さん(理事長)のスピーチが素敵だったので、ご紹介させていただきます。

「座右の銘は"金持ちより人持ち"です。
金持ちは美味しい物を食べられるけど、人持ちは絶対に飢え死にしない。
飢え死にしないことを確定させてからお金を追いかけようかなといつも思っています。

私は若者の自立支援をやってるんですけど、日本において若者という言葉は色々と使われていて万葉集にも"最近の若者は…"と書いてあるそうです。
若者の定義というものがありまして、それをご存知なく使われている方が非常に多い。
2010年3月31日までは15歳から34歳までが若者でした。
しかし4月1日から新しく法律ができまして、15歳から39歳が若者になりました。
復帰された方、おめでとうございます!笑

若者は結構、広いんです。

さて、この中に幼少期に明らかな虐待を受けた方がおられるかもしれません。
あるいは、1年間に30日以上、長期欠席をする不登校の方もいらっしゃったかもしれません。
また半年以上、家族以外と誰とも喋らず家にずっと居た「引きこもり」の方もおられるかもしれません。
少年鑑別所から出てきた方もおられるかもしれない。
今、申し上げたのは私が自立支援の対象として支援している方々です。

私の父の家業はたまたま若者の自立支援をしていました。
社会に地域に居場所のない方が全国から集まってきて家庭に招き入れ、一緒に暮らしながら支援する。そんな家庭でした。
なので子どもの僕にとってはイマイチ分からない。

小学校3年生の時「私の父の仕事」という作文が全く書けず辛かった。
車を売ってますとか教師をしてますとかそういった実態がなかった。
よく分からない人がいっぱい来ていて一緒に暮らしてます、と言ったら「それは仕事なのか」と言われた。

僕の家庭は貧困ではなかったが、貧乏だった。
けど辛くなかった。
自立をすると卒業するので常に入れ替わりのある30人ぐらいの家族と毎日、朝ご飯を食べて夜ご飯を食べて一緒にゲームをしてスポーツをしながら過ごしていた。
障がい者も含めて全ての人が小学生の僕にとっては足も早いしゲームをやれば上手いし漢字は僕より多く知っている。
素晴らしいお兄さんお姉さんでした。

若者支援というのはマニアックなんですけど、30歳定年というのがありまして、子どもや若い人に人生を賭けて関わりたいと言って父親の元で働く方々が、30歳になると結婚をするか出産をするというので生活費が厳しくなってこの仕事では食べていけないので泣く泣く違う業界に転職していく、というような事例をたくさん見てきました。そういう経緯があって今も印象に残っています。

大学生の時にイギリスに遊びに行った時に「これから日本では若者支援がとっても大事になる。先進国のトレンドを色んな数値で見ると必ず来るから今のうちにマーケットができる前に日本で起業して金持ちになれ」と友達から言われました。
当時、イギリスは先進国で若者支援が盛んだったんですけどソーシャルインベストメントという言葉を教えてくれました。

若者の支援は社会的な投資であり、経費では絶対にない。

あなたはお金持ちにはなれないけど、必ず社会にはリターンがあるから非常に尊い働き方なんだよ、と言われそんな人生の使い方があるんだなと思った。

もう一つは、最も苦しい層、移民の人たちや両親から虐待を受けている人の支援をしている現場を見せてあげると言われて見たところ衝撃を受けた。ガッカリした。

「俺の家じゃないか」と。

一緒に住みながら生活も共にしながら支援していた。

自分1人が100人の若者を支援するより生活がちゃんとできる形で若者に情熱を持って接したい人100人を雇用することができたら労働市場を作ることができたら1人で100人を支援するよりもっと大きな数の若者を救えると思った。

支援者という立場も好きなんですけど、どちらかというと情熱を持った人間が仕事をしながら家庭を持ち育休なんかも取りながら一生、続けられる組織を作っていきたいと考えています。

1番嬉しいのは今年も忘年会がありましたが、自立支援から卒業した働いている方々に送っている招待状が欠席で返ってくる。
その数が年々、増えていくんです。
理由の所には「大変、申し訳ありませんが仕事が忙しくて来れません。来年は何とか行きたいと思います。」と書いてある。
この欠席の数こそ彼らに少しだけ関わらせてもらって後押しをして幸せな人生を送ってもらっている結果だと考えています。」


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