足先

起きるとき、私は靴下を履く。寒いから、足先に冷気が触れないようにしたいから。

冷たい。触るとひんやりしている。頑張って温めようとするけど、どうしても冷たいまま。

理由は単純、冷え症だから。いつまにか夏が終わり、小さな秋が冬を連れてやってきた。冷え性は年がら年中苦しめられるものだけど、この季節は特に辛い。冷たい指先はスリッパや靴下でどうにかなる問題じゃなくて、ジンジン痛くなる感覚がする。

じゃあ治せばいい、そう思うかもしれない。わかる、だから今までも白湯を飲んだり極力身体を冷やさないようにしてきた。けど、こいつはなかなか頑固なやつらしい。私の努力を無駄にしてくる。

椅子に座るとき、私はあぐらをかく。寒いから、足先の冷えをごまかしたいから。

冷たい空気は下に落ちているらしい。なるべく下に足をつけないように私は警戒する。なのに、こんなに気を遣ってやってるのに、足先は好んで冷たくなろうとする。なんだお前、そんなにクールなやつだったのか。

布団に潜るとき、私は足を無駄にこする。寒いから、足先の冷えを無くしたいから。

指先はもう諦めた、こいつはしょうがない、許してやる。ただ足先、お前はだめだ。足先が寒いと体の内から冷気が上ってくる気がする。コップに水がたまるように冷えが私の中で蓄積される。

フカフカの布団は私を包み込んでくれるけど、足先はその範囲外みたいだ。

足先のことを考える。こいつはクールだ。いや、クールぶろうとするやつだ。たまーに優しくなる。けど油断したらすぐ冷たくなる。だから、こいつにはこっちから優しく接してあげないと、そっぽを向いてしまう。

はあ、面倒なやつだな。そう思いながら今日も足先を触った。


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