自分なりの枕草子(虚無感)(2024.07.25)
敬愛してやまない三毛田さんが何気なく始められて、今やnote界隈で名だたる方々がこのテーマで記事を書いておられる「自分なりの枕草子」。
私も便乗させて頂きます。よろしくお願いします。
自分なりの枕草子(虚無感)
春、桜がはらはらと散って、風に舞う。
やがて道路の端に積もって、茶色く汚れて溜まる。
新社会人が心躍らせて社会に出てみたものの、現実の壁に阻まれて挫折し、心を病んで引きこもってしまうよう。
夏、灼熱のアスファルト。陽炎が立ち昇る。
ゾンビのように涼を求めてさまよう人々。
夏にまつわる全てのキラキラしたものが、他人事のように映る。
砂浜や海の家、水着、かき氷、花火、風鈴、浴衣・・。黴臭いクーラーが吐き出す冷風にやられて、暗い部屋でネット上に罵詈雑言をまき散らす。
秋、季節の変わり目。風の匂いが変わる瞬間に蘇る遠い記憶。
色あせた夏の残滓。枯葉が排水溝にたまっていて、そこに無数の吸い殻が混じっている。
冷たくなった風が心の中までも吹き抜けていく。あらゆるものから熱が引いて、無表情。灰色の空の下、自分の足音が聞こえない。
冬、凍り付く冬。外界のすべてのものが接触を拒む。凍てついた風、黒く厚い外套にくるまった毛玉みたいな人々が町に蠢く。
終わりの季節。春がやってくる事はない。冬眠した獣がそのまま地中で静かに息絶えてしまうように、自分が誰に知られる事もなくひっそりと消えていなくなってしまうという妄念に支配される。一歩も外へ出る事が叶わない。いっそ大吹雪が自分を含む全てのものを遮断してしまえば良いのにと思う。
いとをかし
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