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談志師匠(2024.08.13)

今日もお盆休みの平常営業。妻の実家に入り浸っていた。

それはそれで楽しい事もあった。子供たちとスイッチをしたり、海水浴をしたりした。子供たちにとっては良い思い出になったと思う。

しかし私にとって、それら全部が酒の肴であって、帰りの道中で眠ってしまった子供たちを布団に寝かせ、妻が風呂に入ってから始める晩酌が至福の時間なのだ。

家に帰ったら11時過ぎ。テレビを点けたらEテレで故・立川談志師匠が「居残り佐平次」というネタをやっていた。

私は談志師匠が大変好きで、一時期はよくモノマネもしていた。最近は披露する機会が減ってしまったので残念だ。

「居残り佐平次」というネタも内容はよく覚えていた。だから子供たちが寝てしまって、テレビの音量を上げる事ができなくてもだいたい大丈夫だった。

やがて「居残り佐平次」は終わってしまったので、YouTubeで談志師匠の落語の別のネタを見ることにした。ちなみにお酒は帰る途中で買った「水曜日の猫」というビールで、肴は昨日に引き続いて冷奴にミョウガを散らしたものと、今朝仕込んだ味玉だ。

わざとらしい配置

味玉は茹で時間が足りなかったのか、お湯が少なかったのか、黄身のが固まりきれていなかったが、それはそれでよく味が染み込んで美味しかった。マックスバリューで買った豆腐とミョウガも昨日と同様に、お値段以上に美味しかった。加えて「水曜日のネコ」というこのちょっと贅沢なビールが、絶妙なバランスで苦みと甘味が均衡を保っており、加えて爽快さすら兼ね備えていて、最高に美味かった。

私は談志師匠の別のネタで何を見ようかと迷ったが、結局あまり音を大きくして見ることができないから、「死神」という、色んな落語家さんがやってるのを見て完全に内容を記憶しているネタを見ることにした。

講演は平成17年のもので、談志師匠の晩年のものだ。だから滑舌があまり良いとは言えないので、けっして聞き取りやすいものではない。音量もあまり上げられないので、音声はほとんど聞き取れない。

でもそうして聞いていると、談志師匠の所作や噺のリズムにいつもより余計に注意を傾ける事が出来た。指先の細かい動きまで丁寧にコントロールされている事が分かるし、首の動きとか、眉の傾け方とか、肩をすくめる動作まで、全部が意識的に動作している事が分かる。

途中、妻が風呂から上がってきたものの、特に文句も言わず、私を放っておいてくれた。

そして「ああ、落語というのは芸術だったんだ」と思った。笑いとか伝統芸能の文脈で語られがちだが、これは芸術なんだと。

私は幸か不幸か噺の内容が全然分からない状態で落語を見ていたおかげで、そのリズムとか所作や表情、舞台の道具の配置とか鳴らしのタイミングなど全てが細かに気を配られているのが分かって、これは総合芸術なんだなと思う事が出来たのだ。

そうやって見ると今まで何度も見聞きしていた「死神」という落語が今まで以上にずっと面白いものに思えた。もちろん、ビールや肴が美味かったし、子供たちがスヤスヤ眠っていた事も大きかったと思う。

あらためて、晩酌というのは素晴らしい体験だし、落語もやはり面白いものだなぁと思った。

もうずいぶん落語を生で見ていないけど、いつか東京で寄席を見に行きたいと思う。死神が私の下に来るまでには。

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