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祭りを通り抜ける(2023.08.04)

今日、大分市内は祭りだった。七夕祭りという一番大きな祭り。

仕事が終わった帰り道、私は今まさに祭りが始まらんとする街中を車で通り抜けようとしたのだが、そこは破裂寸前の風船みたいにぱんぱんに膨れ上がった期待感と緊張感で満ちていた。

街のあちこちには浴衣に身を包んだ男女がいて、大きな交差点に設置されたステージの上では地元タレントと思しき人たちがリハーサルを行っていた。黒くて大きな機材が、まだ日常の雰囲気を引きずる交差点に重い音を響かせている。

「ああ、いいなぁ。祭りだなぁ。ここに足を止めて、祭りを見ていたいなぁ」と私は思いながらも車のスピードを緩めることなく、むしろいっそう速めて交差点を通りすぎようとしたが、おあいにくさま。私は信号につかまってしまった。

ふとルームミラーで後続の車を見ると、アイロンヘッドのボケの方にそっくりな男が祭りの準備に湧く交差点をしかめっ面で眺めていた。西日に照らされて眉間の皺がとても深い。いつものネタみたいに「ジャングルジャングルジャングル~高収入」っつって大音量で歌って、この盛り上がりをぶち壊してくれれば良いのにと思った。


結局アイロンヘッドの彼は別府までの道のりずっと私のあとを付いてきたが、私は業務スーパーに寄りたかったので彼にはそこで別れを告げた。私は業務スーパーで1キロ320円のキムチとかその他諸々買った。

そして帰宅するとお揃いのポケモンTシャツを着てギャーギャー暴れ回っている子供たち。忘れていた。祭りはいつもここにあったのだった。

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