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ど根性コキア(2024.06.21)

仕事で駐車場をいくつか管理していて(なんの仕事だよ)たまに見回りに行くのだけど、駐車場を貸している70歳くらいのおっちゃんと最近よく話す。

そのおっちゃんは駐車場の隣に自宅を所有していて、ベテランの職人さんだ。水道関係の工事などをしていて、長年勤めていた会社は退職したものの、今は個人でマイペースに仕事を請け負っている。

手先が器用なのか、趣味で色んなものを製作している。鳥の巣箱とか、ベンチとか、すごく可愛いものを作る。鳥の巣箱を家の軒先に並べてたら「是非買いたい」という方がいらして、いくつか売れていったくらいだ。

そのおっちゃんはお孫さんがたくさんいて、駐車場が自宅のものだけでは足りなくなったので、今うちの会社で駐車場1区画を貸している。自宅の砂利敷きの駐車場には昨年からコキアがわんさか繁茂している。

コキアはマリモみたいにファサファサしていて、モリモリしている。生命力強めで、たいして世話しなくてもグングン成長する。

しかし昨年私はこのコキアをおすそ分けして頂いたにも関わらず、上手く成長させる事が出来なかった。どんだけ下手くそなんだよと思う。

おっちゃんの駐車場ではコキアが今青々と茂っているのだが、不思議な事に、ちゃんと鉢に植えたり、土に植えたものよりも、駐車場の砂利の上に種が飛んで行って勝手に芽が出たもののほうが成長が速く、勢いがある。率直な言い方をすると強そうだ。

コキアも人間も、ちょっとくらい厳しい環境で育った方が強くたくましく育つのだなぁと私は思った。「昭和ひとけた生まれみたいですね」と私は言い、おっちゃんは笑っていた。戦争を経験した世代の生命力が桁外れにすごいのは今までさんざん目にしてきた。実際に命が危険にさらされた経験を持つ人間の、なんとたくましい事か。生物としての強靭さが全然違うのだ。

国道沿いの駐車場でたくましく青々と育つコキアを見て、私はそんな事を思った。じめじめした空気の中、照り付ける太陽が肌を刺すみたいに熱かった。私はおっちゃんからカルピスソーダのちっちゃい缶を頂いて、一緒に飲んだ。「夏の味がするな」と思った。

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