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センセイとホワイトボード

塾講師だったころの思い出を細々とつづっています。

私の務めていた塾は黒板ではなくホワイトボードを使って授業を行っていた。使うペンの色は黒・赤・青の三色。黒板と違って天井の明かりを反射して見えにくくなるため、赤は線を引く位にしか使わず、メインは黒、重要事項は青で書く決まりだった。

初めての模擬授業。ホワイトボードの前に立って文字を書こうと手を伸ばしたとき、一番上まで手が届かないことに気がついた。
「届くのか?」
と教育担当の課長から心配される始末だった。

国語の授業は板書ももちろん縦書きである。ホワイトボードの上のほうに横にまっすぐ線を引き、その上にテキストのページ番号や解説を書く問題番号を書くのが通例だったのだが、私が引く横棒と、他の先生たちが引く横棒の高さが明らかに違う。最初は踏み台を用意してみたり、線を引かずに板書をしてみたりしたのだが、真っ白な板に真っ直ぐな黒い線があるのとないのとではなんとなくかっこよさが違う気がした。

一人で授業の練習をするとき、こっそりと線だけ引いて過ごしたことがある。精一杯背伸びをして、右手を挙げてひと思いにペンを走らせる。最初はふにゃふにゃだった。実際に生徒の前で授業をするときも、途中までまっすぐだったのに途中で右肩下がりになり、最後にはへにゃへにゃに折れ曲がって生徒にゲラゲラ笑われることもあった。
それでも私はまっすぐを目指して背伸びし続けたのだった。


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