見出し画像

仕事の要求度-資源モデルとワーク・エンゲージメント(令和元年版「労働経済の分析」より)

仕事の要求度-資源モデルとワーク・エンゲージメントについて紹介します。

以下、特記するものを除き、令和元年版労働経済の分析からの引用またはキャプチャーです。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
●人手不足下では、従業員が高い仕事の要求度に直面する可能性が高くなると考えられ、その中で「働きがい」を向上させていくためには、仕事の資源を活用できる環境を整備していくことが、重要な「鍵」となる
本節では、ワーク・エンゲイジメント・スコアと様々なアウトカムとの関係性を分析し、「働きがい」を向上させることで得られる可能性のある様々な利点を明らかにしていく。また、次節では、仕事を通じた成長実感等といった働く方の主な仕事に対する認識や、企業の雇用管理・人材育成の取組内容といった観点から、ワーク・エンゲイジメント・スコアを向上させる要因について考察していく。そこで、ここでは、その前提となる包括的な考え方として、仕事の要求度 ‐ 資源モデル(Job Demands-Resources model、JD-Rモデル)について、説明しておきたい。
JD-Rモデルは、Demerouti, Bakker, Nachreiner, & Schaufeli (2001)によって初めて提唱されたものである(注)。
(注) 図表は、Demerouti, Bakker, Nachreiner, & Schaufeli(2001)によって初めて提唱され、その後、部分的に修正されたモデルに基づき作成している。

スクリーンショット 2021-03-23 14.12.15

まず、「仕事の要求度」とは、従業員の適応能力を超えた場合、ストレス等
を引き起こす可能性のある仕事の特性を指す。例えば、仕事のプレッシャー、対人業務における情緒的負担、精神的負担、肉体的負担、役割の過重などがある。ただし、仕事の要求度は、必ずしもネガティブなものだけではなく、挑戦的なストレッサーと妨害的なストレッサーといった観点から、区別することも重要である。例えば、仕事の難易度が上昇したものの、やりがい
のある仕事として捉えられた場合、その挑戦的なストレッサーは、個人の成長を促進するものとなり得る。

さらに、「仕事の資源」とは、就業条件(キャリア開発の機会、雇用の安定性など)、対人関係や社会関係(上司によるコーチング、社会的な支援など)、組織での仕事の進め方(意思決定への参加、コントロールなど)、課題(仕事のパフォーマンスに対するフィードバック、正当な評価など)を指している。
一般的には、仕事の要求度とコントロールのバランスがとれていない場合、従業員は仕事にストレスを感じるとともに、様々な仕事の資源も活用できなくなり、ワーク・エンゲイジメントを低下させることが指摘されている。しかしながら、Bakker, Hakanen, Demerouti, & Xanthopoulou(2007)では、仕事の資源が豊富にあると、仕事の要求度の高さにかかわらず、ワーク・エンゲイジメントが高まることが指摘されている。つまり、人手不足下では、従業員が高い仕事の要求度に直面する可能性が高くなると考えられるが、その中で「働きがい」を向上させていくためには、仕事の資源を活用できる環境を整備していくことが、重要な「鍵」となる。

また、「個人の資源(心理的資本)」とは、個人の成長におけるポジティブな心理状態であり、自己効力感、楽観性(現在・未来の成功について、ポジティブに考えること)、レジリエンス(問題や逆境に悩まされた時も、成功するために屈せず、立ち直り、乗り越えること)、希望(目標に向かって、粘り強く取り組み、必要があれば、目標達成までの道のりを軌道修正すること)によって特徴づけられる。個人の資源(心理的資本)は、ワーク・エンゲイジメントに対する重要な予測因子であり、その育成は、ワーク・エンゲイジメントの向上につながることが指摘されている。

さらに、Xanthopoulou Bakker, Demerouti, & Schaufeli(2009)では、ワーク・エンゲイジメントに対する予測因子である「仕事の資源」と「個人の資源(心理的資本)」との関係性を考察しており、2年間の追跡期間を伴う2時点間比較を行い、各資源とワーク・エンゲイジメントとの間だけでなく、「仕事の資源」と「個人の資源(心理的資本)」が、相互に関連していることを指摘している。つまり、「仕事の資源」と「個人の資源(心理的資本)」は、ワーク・エンゲイジメントにポジティブな影響を与えながら、双方の資源を強化すると考えられている(注)。
(注)例えば、自己啓発等の学習経験を通じて、個人の資源である自己効力感が高まり、能力開発の重要性を認識した従業員が、その機会に富んだ職場環境の整備を企業に提案し、その後、整備された機会を活用することで、従業員が更なる自己効力感を高める等が考えられる。

次に、ワーク・エンゲイジメントの高い従業員は、仕事に誇りとやりがいを感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得て、いきいきとしている状態にあることから、様々なポジティブな効果が期待され、組織コミットメント、仕事のパフォーマンス、自発性、離職率・定着率、健康などのアウトカムを予測することが、多くの先行研究において支持されてきた。本節では、(独)労働政策研究・研修機構が2019年に調査を実施した「人手不足等をめぐる現状と働き方等に関する調査」を活用し、ワーク・エンゲイジメント・スコアと様々なアウトカムとの関係性を分析していくが、その結果は、両者の因果関係まで言及できるものではなく、あくまでも両者の相関関係を示すものであるため、その解釈には留意が必要であるが、我が国においても、多くの先行研究に類似する傾向が確認できるのかは、今後、「働きがい」の向上に着目した取組を労使で話し合っていくに当たって、有用な検討材料になることを期待したい。
最後に、資源とワーク・エンゲイジメントとの間には、「獲得のスパイラル」があると指摘されている。Hakanen, Schaufeli, & Ahola(2008)では、3年経過した変化を捉えるパネル研究において、仕事の資源がワーク・エンゲイジメントを向上させ、ワーク・エンゲイジメントが個人の自発性を促し、その自発性が職場組織の革新性にポジティブな影響を与え続けていることを指摘している。中長期的な観点でみれば、このような好循環を実現していくことが重要になると考えられるだろう。
以上のように、本稿では、仕事の要求度 ‐ 資源モデル(Job Demands-Resources model)の考え方を参考としながら、引き続き考察を進めていきたい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

学問的な用語がたくさん出てきて、ちょっと難しいですね。
仕事の要求度と仕事の資源、個人の資源のバランスが取れていないと、ストレスが強くなり、ワーク・エンゲージメントに悪影響を及ぼすことは確かに想像しやすいです。
そして、その結果が心身の健康や、離職率、定着率の変化につながる。

人間の心の中をコントロールすることはできませんが、エンゲージメントの変化をつかみ、改善の努力を続けるしかありませんね。

★エンターテイニングスパイラル図

また、資源とワーク・エンゲージメントの間に「スパイラル」の関係がある、というのも興味深いです。伍魚福でもエンターテイニングスパイラルが正しい方向に回るのを目指していますが、各メンバーの仕事においても、良いスパイラルが回ることを目指したいです。


最後までお読みいただきありがとうございました! 伍魚福の商品を見つけたら、是非手にとってみて下さい。社長のいうとおりになってないやないかーとか、使いづらいわー、とか率直なコメントをいただけるとうれしいです。 https://twitter.com/yamanaka_kan