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ワーク・エンゲージメントとストレス・疲労(令和元年版「労働経済の分析」より)

ワーク・エンゲージメントとストレス・疲労との関係について紹介します。

以下、特記するものを除き、令和元年版労働経済の分析からの引用またはキャプチャーです。

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●計量分析からは、ワーク・エンゲイジメント・スコアと仕事中の過度なストレスや疲労に、統計的有意な負の相関が確認され、逆方向の因果関係がある可能性にも留意が必要であるが、ワーク・エンゲイジメント・スコアの向上は、仕事中の過度なストレスや疲労を感じる度合いを低下させる可能性がある

前述したように、我が国においても、先行研究と同様に、ワーク・エンゲイジメント・スコアと仕事中の過度なストレスや疲労に統計的有意な負の相関が確認されるかどうかは、重要なポイントであると考えられるため、仕事中の過度なストレスや疲労に影響を与える可能性のあるいくつかの要因をコントロール変数として考慮しながら、両者の関係性を推定する計量分析を行う。加えて、ここでは、ワーク・エンゲイジメント・スコアやワーカホリック・スコアと労働時間(所定外労働時間を含む。)との関係性を推定する計量分析も行う。後者の計量分析の結果については、仕事中に過度なストレスや疲労を感じる度合いに対して、ワーカホリック・スコアは負の相関が確認される一方で、ワーク・エンゲイジメント・スコアは強い正の相関が確認されるのか、その要因を理解する一助になるものと考えられる。また、ワーク・エンゲイジメントは、「活力」「熱意」「没頭」の3つが揃った状態として定義されるが、ワーカホリズムと同様に、「働きすぎ」につながらないのか懸念されている方もいるかもしれない。この点については、後者の計量分析の結果が、重要なポイントとなるだろう。
まず、第2-(3)-16図では、「仕事の中で、過度なストレスや疲労を感じる」といった質問項目への回答について、「いつも感じる(=5点)」「よく感じる(=4点)」「時々感じる(=3点)」「めったに感じない(=2点)」「全く感じない(=1点)」と順序付けした変数を被説明変
数とする順序ロジット分析(注)を行う。
(注)順序ロジットモデル(ordered logit model)は、被説明変数のとりうる値が連続変数ではなく、数通りの限られた値しかとらない離散変数であり、選択肢が3つ以上、かつ、それらに何らかの順序がある場合に適用するモデルである(山本勲(2015)「実証分析のための計量経済学:正しい手法と結果の読み方」(中央経済社))。

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コントロール変数としては、年齢、職種、性別、役職に加えて、仕事中の過度なストレスや疲労に影響を与える可能性がある要因として、「出勤日数(月平均)」「有給休暇の取得率」「労働時間(月平均)」「通勤時間(月平均)」を考慮した、いくつかの推計式によって検討を進めていきたい。多くの方が予想されるように、「出勤日数(月平均)」が多く、「労働時間(月平均)」「通勤時間(月平均)」が長い労働者は、仕事中に過度なストレスや疲労を感じる度合いが高いことが予想される一方で、「有給休暇の取得率」が高い労働者は、仕事中に過度なストレスや疲労を感じる度合いが低いことが予想され、これらの状況の差異をコントロールすることは有用だと考えられる。 
こうした分析の結果を整理した同図をみると、年齢、職種、性別、役職に加えて、「出勤日数(月平均)」「有給休暇の取得率」「労働時間(月平均)」「通勤時間(月平均)」を考慮したいずれの推計式においても、ワーク・エンゲイジメント・スコアと仕事中に過度なストレスや疲労を感じる度合いには、統計的有意に負の相関があることが確認された。
なお、「出勤日数(月平均)」「有給休暇の取得率」「労働時間(月平均)」「通勤時間(月平均)」については、いずれも予想される符号で統計的有意になっており、「出勤日数(月平均)」「労働時間(月平均)」「通勤時間(月平均)」は、仕事中に過度なストレスや疲労を感じる度合いと統計的有意に正の相関があることが確認された一方で、「有給休暇の取得率」は、同度合いと統計的有意に負の相関があることが確認された。
以上のように、計量分析からは、ワーク・エンゲイジメント・スコアと仕事中の過度なストレスや疲労に、統計的有意な負の相関が確認され、逆方向の因果関係(注)がある可能性にも留意が必要であるが、ワーク・エンゲイジメント・スコアの向上は、仕事中の過度なストレスや疲労を感じる度合いを低下させる可能性があることが示唆される。
(注)仕事中の過度なストレスや疲労の度合いが高い労働者が、ワーカホリック・スコアが高い可能性も考えられる。

次に、第2-(3)-17図では、労働時間(所定外労働時間を含む。)を被説明変数とする重回帰分析(OLS(Ordinary Least Squares))によって、労働時間に影響を与える可能性のあるいくつかの要因をコントロール変数として考慮しながら、ワーク・エンゲイジメント・スコアやワーカホリック・スコアと労働時間との関係性を推定する計量分析を行う。

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その分析結果を整理した同図をみると、年齢、職種、性別、役職、年収、企業規模、学歴をコントロール変数として考慮した上で、ワーカホリック・スコアと労働時間には、統計的有意な正の相関があることが確認された一方で、ワーク・エンゲイジメント・スコアと労働時間には、統計的有意な相関が確認されず、推計したパラメータの値も低い水準であったことが分かる。
すなわち、逆方向の因果関係(注)がある可能性にも留意が必要であるが、ワーカホリックの度合いの高まりは、労働時間を統計的有意に増加させる可能性があり、こうした労働時間の増加が一因となり、仕事中の過度なストレスや疲労を増大させている可能性があるものと考えられる。
(注)労働時間が長い労働者が、ワーカホリック・スコアが高い可能性も考えられる。

他方、ワーク・エンゲイジメント・スコアの向上は、労働時間を統計的有意に増加させることなく、一定の労働時間の中で、「活力」「熱意」「没頭」の3つが揃い、仕事に誇りとやりがいを感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得て、いきいきとしている状態にあり、働く方にとって「労働時間の質の向上」が促されることによって、仕事中の過度なストレスや疲労を減少させている可能性があるものと考えられる。
以上のように、計量分析を行った結果、ワーカホリック・スコアとワーク・エンゲイジメント・スコアでは、労働時間との関係性に大きな差異があり、ワーク・エンゲイジメント・スコアの向上は、労働時間を統計的有意に増加させることなく、一定の労働時間の中で、「活力」「熱意」「没頭」の3つが揃い、仕事に誇りとやりがいを感じ、熱心に取り組み、仕事から活力を得て、いきいきとしている状態にあり、働く方にとって「労働時間の質の向上」が促されている可能性が示唆される。
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ワーク・エンゲージメントが高いと、ストレスや疲れを感じにくい。
ワーク・エンゲージメントと労働時間の相関はない。
ワーク・エンゲージメントと出勤日数、有給休暇取得率、通勤時間については、負の相関関係がある。

反対に、ワーカホリズムと、ストレス・疲れ、出勤日数、労働時間、出勤日数、有給休暇取得率、通勤時間には正の相関関係がある。

伍魚福でも残業削減、有給休暇取得率向上、短時間勤務制度、在宅勤務制度などに取り組んできていますが、これらの方向性は間違っていないと言えますね。
ライフ・ワーク・バランス(一般にはワーク・ライフ・バランス)の向上が、ワーク・エンゲージメントを高めることにも寄与します。
今後も改善を続けていきたいと思います。



最後までお読みいただきありがとうございました! 伍魚福の商品を見つけたら、是非手にとってみて下さい。社長のいうとおりになってないやないかーとか、使いづらいわー、とか率直なコメントをいただけるとうれしいです。 https://twitter.com/yamanaka_kan