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インタビュー調査は社内から始めましょう

前回「顧客の顔」について少し触れました。

繰り返しになりますが私の実体験では、アンケート調査だけで「顔」がわかっていくケースは稀でした。ある程度わかっている「顔」の解像度を上げていくことには有効ですが、はじめの一歩としてはやはり定性的なアプローチで、なるべく「具体」の方面から進む方が良いと思います。具体のない抽象は単に曖昧なだけですが、抽象のない具体でも差し当たり具体として存在はし得るから、ということも理由としてあります。

定性的アプローチと言いますとまずはグループインタビューやパーソナル(デプス)インタビューなど顧客インタビュー調査が頭に浮かぶ方も多いのではないでしょうか。私もその手法を採ることは良いと思いますが、まずはその前に社内の関係者、特に顧客との接点を直接有しているメンバーにインタビューをすることを強くお勧めします。

というのは、顧客にインタビューするにしても、ある程度の仮説や予備知識がないと、何をどう聞けばいいのかがわからないからです。準備不足のまま顧客インタビューをしても、得るものがありません。

失敗例として思い浮かぶのが、回答者の感情が全然動いていないケースです。

これもいろいろパターンがありますが、最悪の例が「評論」です。回答者が聞かれたことに対して、本年では全然興味がないと思っていて、完全に他人事として回答するケース。
またそれよりはマシですが、興味がないことをオブラートに包んで回答しているケースもよくあります。人間なかなか面と向かって「あなたに聞かれていることには全然興味ないです」とは言いませんから「まあいいんじゃないですか」などと回答します。もちろんこれを「良い反応」と解釈してはダメですよ(笑)。回答者の様子から「興味なし」と解釈しなければなりません。

余談ですが、お付き合いのある調査会社の方から、グループインタビューに依頼主側が一切見学者として参加しないケースがあると聞きました。その場合、上記のようなケースでは依頼主側はどう判断しているのでしょうか…。

話を戻しまして、顧客像に関してある程度の仮説や予備知識がないと、顧客にとって興味のない問いかけばかりするリスクが高まります。そして、大抵これは売り手目線で興味があるだけのポイントだったりします。
よくあるのが「なぜ◯◯を買わないんですか?」という買わない理由を聞こうとするものです。また、私が見聞きしてきた中で最高に売り手目線だったのは「なぜ◯◯に興味がないんですか?」という質問です。プラス(好き)でもマイナス(嫌い)でもない、ゼロであることに理由を回答できる人というのは、果たしているのでしょうか。

当然ですが、顧客に興味がないところを掘っても顧客インサイトを見出すことはできません(顧客インサイトについてはまた別に)。
その意味で、どういうところに顧客の興味があるのか、ある程度アタリをつけることができるのが顧客に直接接点のあるメンバー、というわけです。

これも私の経験則で恐縮なのですが、顧客対応をそれなりに真面目にされている方でしたら、顧客がされて嬉しいこと/されて嫌なことは正確に理解されています。ただ言語化は得意/不得意がありますので、その点をよくお手伝いします。

メンバー聴取のポイントは「顧客の感情が動くところはどこか」。
◯◯をしたら顧客がとても喜んだ、あるいは怒った。そんなところを探し、そのシチュエーションを具体的に描写できるようにします。そして、なぜそのような反応になったのかを「洞察」する。この部分は顧客にオープンクエスチョンで聴取してはいけないので(聞かれても言語化できる人はほとんどいない)、こちら側で言語化してから顧客に問う、そのための仮説を得るプロセスです。

ここまで準備できたら顧客インタビューに移りましょう。課題に沿って用意した質問に対し、顧客から「そうそう、それだよ!」というように、身を乗り出すような反応が得られれば、ひとまずそのインタビューは成功に近いところにあると思います。

なお、わざわざ顧客インタビューをしなくても、メンバーへのインタビューだけでほぼ答えが見えるものも多いです。
調査は意思決定のために行うものですので、わざわざ顧客に負荷をかけてインタビューする必要がないなら、メンバーへのインタビュー結果をもとにさっさと意思決定してしまいましょう。

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