見出し画像

良いPMOとはなんなのか? そもそも良いプロジェクトって何?

どうも開いて頂きありがとうございます。本日はITコンサルで一番多いと思われるロール「PMO(Project Management Office)」について語ろうと思います。なぜかというと、ITコンサルに関わらずこの仕事が出来ていなかったり、重要性を理解していない人が多いからですね。フリーランスが増えてきたこの時代だからこそ、初めましての人で構成されたチームを運営するPMOスキルは非常に重要だとお思います。ITに興味ない人にも騙されたと思って読んでもらいたいです。

PMOってなんなの?

 まず、PMOと呼ばれている人はいますが、ほぼ全ての人は資格を有していません。名乗ったもの勝ちの商売です。とはいえ、一応は役割はハッキリしていて、「プロジェクトを円滑に進めるために、QCD※を予算内に納めるようにする組織/人」という意味を指すことが多いように思います。
 ※ Quality(品質)、Cost(支出金額)、Delivery(納期)の略

 ここで疑問になるのが、「そもそもプロジェクトって何?」ということだと思います。プロジェクトは厳密には
「相互に関連するタスクから構成され、多くの組織が参画して実施される3年以下程度の期間の活動」
という定義もあるらしいです。とはいえ、一般的には何かしら目的を持って動く一連のチーム/活動を総称した言葉でしょう。プロジェクトという言葉自体は特別なものではありませんが、近年のIT化やフリーランスの増加に伴って、従来の重厚長大な組織ではなくプロジェクト型の仕事が増えています。プロジェクトのメリットは、必要な時にだけ必要なスキルを集められる点ですが、一方で弱点としては初対面の人同志の意思疎通がしにくい点にあります。この辺りがPMOが必要とされる背景に繋がってきます。PMOが行う仕事は私見では2種類に分けられます。1つが「上層部の意図を明確にすること」、もう1つが「現場の作業者の実態を明確化すること」です。極論を言うと、「上層部が言語化がすごく上手くて、何がしたいのかが万人に分かり、かつ、現場の人が細かく報連相をできる」状態であればPMOは不要です。まあ、現実的にはそれが無理だと言うことは社会人なら誰もが把握していることと思います。

 では、なぜそういったコミュニケーションが難しいのか。それは個人の心持ちもありますが、スキル面では知識という話があります。例えば、RubyエンジニアがRubyどころかパソコンも良く分からないお爺ちゃんにコーディング内容の説明をすることは困難です。この翻訳を行うには以下のスキルが必要になります。
 1. お爺ちゃんが知っていることは何か
 2. お爺ちゃんが知りたいと思うことは何か
 3. Rubyで何を実装しようとしているのか
 4. Rubyで実際はいま何を実装しているのか

 これを完璧にこなすのは、意外と片手間では難しく、専門の人間が必要になります。これがPMOと言うわけですね。 ということで、次の章では上層部(お爺ちゃん)の話を聞くことについて掘り下げます。

上層部のご機嫌を取れ

 そもそも、上層部のご機嫌をなぜ取るべき理由は2つあります。1つはシンプルに「お金を出してくれるから」ですが、もう1つは「意外と正しいことを言っている」からです。若手エンジニア組織にいると、大企業役員に対するdis(悪口)を良く聞きますが、実際には役員たちだって馬鹿ではなくてちゃんと一年中ビジネスを考えているので、ITに疎いだけでビジネス勘はあることが多いです。長年の経験に沿った戦略/戦術を正しくIT化して実現することはプロジェクトにとって重要なファクターと言えるでしょう。

 そして上層部のアイディアがイケているかとは別に、組織としての統制が機能するかという話があります。一般的に、一人の上司が抱えられる部下は10人くらい。仮に10人部下がいれば、毎週1on1でMTGして10時間=週の労働時間の1/4が消費される水準です。そして、人間の考えが直接伝わるのは大体は部下の部下 = 孫部下までです。そのため、1人のリーダーと10人のサブリーダー、100人の現場というのが組織として円滑に動ける最大規模と言えます。これを超えた時、専門知識をもった組織円滑化のプロフェッショナルがいないと、大体の場合でグダグダが始まります。

 つまり、上層部には重要な二つの機能があると言えます。

① 過去の知見を用いて、イケてる企画を考えること
② 自分のアイディアを正しく下に伝えること
③ アイディア実現に必要なリソースを調達すること
④ 現実と理想がズレた時に折衷案を決めること

現実にこれらが難しいのは、実現可能性を知るためのIT知識などを今更学習できないという部分が大きいです。ここで正しいインプットや、質疑応答を行うのがPMOがこなすべき役割だと言えるでしょう。組織の中にいる人間だと、面と向かって言えない「それは違います」を言うことが大事な仕事ということです。

余談ですが、こういった役員の無知につけこんだ「魔法のAI」のようなコンサル営業をする人間は、業界の癌だと思います。また、そういったコンサルに騙されて③を実行し、あとに引けなくなった(1000億円もう拠出されたけど何も完成しない)という状態も聞いたことがあります。

 では、上層部に気に入られるためにすることはなんでしょうか。一番は泥臭い営業です。アホみたいですが、一緒にカラオケやゴルフ、タバコにいきましょう。エンジニアなどがやりたくない仕事を請け負うのがPMOです。また、端的に要点を得る報告だけをしましょう、若手が考える以上に役員クラスは忙しいです。「XXくんと話す時間は有意義」と感じてもらうため、1分話すためにExcelやPowerPointを駆使しましょう。非効率に見えるかもしれませんが、若手PMOの8時間は役員クラスの5分と同じくらいの価値です。存分に時間を無駄遣いしてください。

現場の声を聞け

 さっきと逆のことを書きますが、上層部だけ見ててもモノは完成しません。やはり現場の声を知ることは非常に大事です。というのも、ほぼ100%のプロジェクトで事前の計画は破綻するからです。どうせ破綻するので、「④ 現実と理想がズレた時に折衷案を決めること」を役員に行ってもらうために、常に現実をチェックする必要があります。

現場の計画破綻における主な要因は、だいたい以下かと思います。

 1. 開発会社の営業が嘘ついて受託 (初めから破綻)
 2. 用意できた人員のスキル/リソース不足 (調達ミス)
 3. 上層部の要件がコロコロ変わる (企画ミス)
 4. 上流段階の要件定義や設計が不可能だと判明 (調査不足)
 5. テスト濃度が甘くバグが後から出てくる (組織編成ミス)
 6. 法規制などの外部環境の変化

 基本的にはこれら全てはPMOの責任において防止します。1はしょうがないので、証跡を残していざという時に訴訟する準備をしておきます。

 また、こういった致命的なミスがなくても小さなズレはどんどん発生します。本当に細かいものだと、「キーマンのお子さんが熱を出した」で遅れる計画もあります。こういった少しの遅れも見逃さず、原因と影響を全て書き出して、何かしらの折衷案を出せないかを上層部に相談することが大事です。ここでいう影響とは、「特定の機能のリリースが1日遅れると、それを前提とした機能Aと機能Bの開発も1日遅れる」といった事象を指します。

 このような細かな現場事象を把握するために必要なのは上層部の時と同じく寄り添いだと思います。筆者は若い時何もできないポンコツでしたが、関係システムの仕様書と関係法規制は熟読して、プロジェクト内の誰よりもエンジニアの弁護ができるようにしていました。やはり、みんな人間なので自分が担当しているシステム/機能について良く知っている人とは仲良くなってくれることが多かったように感じます。

頑張った果てに変えられるもの

 ここまで書きましたが、ご理解頂けた方には地獄のような仕事と思われたかなと思います。実際、真面目にやると残業時間が尋常ではない職種であり、メンタルを病む人も多いです。とはいえ、PMOをやっている人は自分たちが非常に重要なタスクを持って、上から下まで面倒を見ている自覚と自信を持っています。やりがいはめちゃくちゃにありますね。

 逆に、PMOがいないプロジェクトを想像しましょう。

役員「AIを作ろうぜ」
部長「いいっすねー。流行りですよ」
課長「ちょっとエンジニアに聞いてみます」

エンジニア「いや、ゼロからAI作っても大した精度出ないですよ。そもそも・・・」
課長「作れるは作れるってことだよね?」

課長「できるらしいです」

〜〜半年後〜〜

エンジニア「できました。。。」
課長「まー動いてるね。いいんじゃない?」
部長「ちょっと違うくない?」
役員「いや、全然、業務の効率化できないじゃん。予算無駄遣いでしょ」

 まあ、極端な例ですが似たような話はあると思います。業界には割と笑い話が残っていますが、失敗したプロジェクトは大体の場合、プロセスが無駄に長いだけで上記の小咄みたいなことをしています。結局、外部の人間が役員に対して「いや、AIって言っても複雑ですよ。やりたいことを具体化しましょう」っていうのが一番必要だったという事例だと思います。

 あとは、やりがい以外に実利として金になる職種だと思います。というのも、PMOがいることで得られる便益はプロジェクト規模に比例するため、非常に高額になるからです。500人を動かすプロジェクトの場合、平均の月額費用が50万円だとすると2.5億円が毎月出ていきます。これを無駄にしないためなら、保険として1000万円でPMOを5人呼ぶ人は多いと思います。なので、結果としてPMOは200万円をもらえる価値があるということですね。

 色々と書きましたが、さまざまなプロフェッショナルと関わり、その業務を効率化するために動くPMOは非常にやりがいのある仕事です。一方で、PMOが悪いことをすれば、一気に大企業を失態に追い込むことすら可能な影響力もあります。もし、大きな仕事をして達成感を得たいと思う方がいるなら、PMOはなかなか面白い仕事だと思うのでぜひチャレンジして欲しいですね。


ということで、ITコンサル/PMOの事業もしています。働きたい側でも依頼したい側でも募集しているので、興味ある方はお問い合わせお願いします。