「ユリガッシーン!!」第2話

○シャイクズ(敵組織)参謀室   
   おどろおどろしい雰囲気や装飾のある不気味な部屋。玉座に座る異の
   姿をした魔王と可愛らしい姿のゼイワンを始めとした数人の部下が並
   んでいる。魔王「ほう、やられたとな」
ゼイワン「はい、あのシマタカが、であります」
魔王「シマタカだけにシマタカナイというわけか」
笑う魔王。戸惑う部下たち。
魔王「どうした?つまらなかったか?」   
   笑いだす部下たち。
ゼイワン「いえ、さすがでございます」
魔王「シマタカの奴、妙な事を言ってなかっ
 たか?」
ゼイワン「謎の人間の事ですかね?」
魔王「それにやられたとしたら厄介なことになるな」
ゼイワン「それには及びません。我が精鋭をもってして対処致しましょう」
魔王「そういう油断は許せんな」
ゼイワン「と、言いますと」
魔王「精鋭などという甘えを捨てろ」
ゼイワン「大変申し訳ございません」  頭を下げるゼイワン。
魔王「敵の姿形が分からん以上どうなるか分からない。第二のシマタカを作
 らぬようにな」
ゼイワン「はっ!」  
   敬礼するゼイワン。
魔王「地球人の尊さを吸い取り、奴隷化する計画絶対成功させねばならぬ。
 人間は尊いものを摂取しないと生きられないからな。残りは侵略に成功し
 たものの好きにすればいい」
ゼイワン「はっ!」
魔王「して、次の策は?」
ゼイワン「入れ!」
トビタイヤが入ってくる。 
 

 
 〇むつみの部屋(朝)   
ピンクが主体の部屋。   
   ベッドで自分の身長程もある熊のぬいぐるみを抱いて寝ているむつ
   み。八時を指した目覚まし時計が鳴り響く。   
   目覚めるむつみ。   
目覚ましを止め、息を切らしているむつみ。
むつみ「ユリガッシーン、夢か……悪い夢と書いて悪夢ね、いや、現実なん
 だけど」   
   もう一度熊のぬいぐるみを抱きしめるむつみ。

〇道(朝)
   スーツ姿で歩いているむつみ。
むつみ「今日の会議で絶対昨日の事について触れられるだろうなぁ」   
   ため息をつくむつみ。   
   千里の事を思い浮かべるむつみ。
むつみN「キスして戦って責任取れってなぁ……あそこはキスするしか仕方 
 なかったじゃん」   
   むつみ、大空を仰ぐ。
むつみ「あれは初めてに含めないからなぁ~!」    
   大声だったのか周りの人に見られるむつみ。   
   こほんと咳をするむつみ。 
〇大宮署・会議室(朝)    
   むつみが入ると大川道隆(55)が出迎える。
大川「むつみ、大丈夫だったか!」
むつみ「部長!ええ、まぁ何とか」
大川「警官隊もみんな無事。なんだったんだあの生物は」
むつみ「まぁ、いいじゃないですか。それよりも対策会議を」   
×××   
   会議室を満員にするほど刑事が座っている。むつみは気まずそうにし
   ている。大川が液晶の前で解説している。   
   液晶の前ではシマタカが爆破する映像が流れている。
大川「市民から寄せられた動画だがこのように呼称シマタカを何者かが撃
 破する事に成功出来ている。我々も希望を捨てずにやっていこうじゃない
 か」
むつみN「それ私がやったやつ……」
大川「次にこのような怪物が出てくるか分からんが技術班には強力な武器を
 用意してもらうように通達はしてある」 
〇公園
   むつみが1人寂しくブランコに揺られながらご飯を食べている。 
   優し気なギターの音色が聞こえてくる。
むつみ「いいギターね」
千里の声「ありがとう」   
   むつみの横のブランコでギターを弾いている千里。千里に気づくむつ
   み。
むつみ「あなた!」
千里「お姉さん!こんなとこでなにやってんのさ!」
むつみ「私はお昼休憩よ!あなたこそ暇なものね。こんな所でギター弾いて
 るなんて」
千里「さっきは褒めてくれたのに忙しい人だなぁ!」
むつみ「ミュージシャンなんて大抵酒とタバコとギャンブルとタトゥーと借
 金をやってるものよ!ろくでもない!」
千里「失礼な!タバコとタトゥーはやってないよ!
むつみ「他はやってるのかい!で、いくら借金してるの?」
千里「そんなのお姉さんに関係ないでしょ!経験豊富だからって調子乗らな
 いでよ!」
むつみ「ま、まぁ、百戦錬磨だけど?」      
   どや顔で嘘をつくむつみ。
千里「腹立つなぁ!」
むつみ「ファーストキスを奪った女のお金事情位知っててもおかしくないと
 思うけど」
千里「あれは不可抗力でしょ!関係ない!」
むつみ「キスはキスでしょ」
千里「うっ!経験豊富はこれだから!」
むつみN「全部嘘だけどね」   
   論破されかける千里。
むつみ「で?いくら借金してるの?」   
   指で2を表現する千里。
むつみ「なに、20万。そんなの少し頑張れ
 ば返せるじゃない」
千里「0一個足りない」
むつみ「200万!」   
   驚くむつみ。
千里「さっきも借金取りから逃げてきた所」   
   気絶しそうになるむつみ。
千里「ミュージシャンはね、常に金欠なの、分かる?」
むつみ「少なくともギャンブルを辞めればお金貯まるわよ」
千里「あのヒリヒリ感がたまんないんだよ!わっかんないかなぁ!わかんな
 いだろうなぁ!」
むつみ「そんな事言ってるから貯まんないのよ」   
   むつみのお腹が鳴る。
むつみ「何か食べなさいよ」
千里「さっき言った通り金欠でして」   
   財布が空である証明を見せる千里。むつみ、千円を千里に渡す。
むつみ「ギター代」
千里「ありがとう!」   
   公園から出ていく千里。
コンビニとは逆方向に進んでいく。
むつみ「コンビニそっちじゃないでしょ」
千里「パチンコで勝って焼き肉じゃ~い!」
むつみ「おいこら」   
×××   
   ブランコで大人しくサンドイッチを食べている千里とむつみ。千里の
   頭部にはたんこぶが。   
千里の携帯電話が鳴る。携帯電話に出る千里。
千里「え?病欠でヘルプ?分かりました!すぐ行きます!」
千里「じゃ、お姉さん、またどこかで」   
   ボロボロのギターケースにギターをしまい、出ていく千里。
むつみ「随分忙しい子だったわね」 
○シャイクズ参謀室
   合成獣トビタイヤが魔王の玉座の前に跪いている。
魔王「名は?」
トビタイヤ「トビウオとタイヤの合成獣、トビタイヤでございます」
魔王「面白い、で何が目的だ?」
トビタイヤ「私が地球の半分を頂いた暁にはこの空をタイヤ天国にしたいと
 考えております。タイヤが空飛ぶ憩いの空間にしたいのでございます」
魔王「面白い願いだ。だが現実はそう甘くない」
トビタイヤ「こんな辺境の星に何がありましょうか?」
魔王「シマタカがやられた」
トビタイヤ「なんですと!」
魔王「シマタカとどうかしたか?」
トビタイヤ「いえ、古くからの付き合いでありましたから」
魔王「謎の戦士にやられたと報告が上がっている」   
   唖然とするトビタイヤ。
魔王「君に仇討ちを頼みたい」
トビタイヤ「はっ!」   
出ていくトビタイヤ。
魔王「ゼイワン、君にも頼みが」
ゼイワン「なんでしょうか」
魔王「この世界の尊さを調べて欲しい」 
〇街   
   街を汗だくになりながら歩いているむつみ。
むつみN「それにしても暑いわね、どっかで休憩……」   
   「コンセプト喫茶ランドル」と書かれた看板を見つける。
むつみ「ここでいっか」
むつみ「いい喫茶店でありますように」 
 
〇喫茶ランドル・内   
   メイドの衣装や男装の衣装などカオスな世界観が繰り広げられるコン
   カフェ。   
   中の看板では「まぜこぜコンカフェ」と書かれている。   
   圧倒されるむつみ。
むつみ「間違えました……」    
   メイドAが現れる。
メイドA「おかえりなさいませ、お嬢様!」
むつみ「う、うぇ!お嬢様? 私?」
執事の声「お嬢様1名~!」   
   席に誘導されるむつみ。
むつみN「初めてこういう店入ったわ。看板で騙された。早く紅茶でも飲ん
 で出よう」     
   男装した千里がやってくる。
千里「お嬢様、ご注文は、って!え?」    
   むつみに気づく千里。
千里「お姉さん!」   
   むつみも気づく。
むつみ「あなた!」
千里「なんでお姉さんがいるのさ!」
むつみ「あなたこそこんな所で働いてたのね!」
千里「こんな所ってなにさ!」   
   花井珠美(38)がやってくる。
珠美「どうしたの?千里」
千里「店長」
珠美「繋がった人でしょ?いつ?」
千里「昨日、でもこんな偶然あるなんて、というかつけてきた?」
むつみ「馬鹿言わないでよ!偶然!立ち寄っただけ!たまたま!」
珠美「うちの稼ぎ頭、かっこいいでしょ?」
むつみN「確かにこの子男装似合うわね、漫画の世界の登場人物みた
 い……」
珠美「昨日さんなら1杯サービスしちゃうよ」
むつみ「別にいいですよ」
珠美「そんな事言ってるうちに~」   
   千里がコーヒーを運んでくる。
千里「はい、お嬢様、アメリカンコーヒーでございます」   
   コーヒーが置かれる。
むつみN「コーヒー、飲めない、帰ろう……申し訳ないけど」
メイドA「タイヤが空飛んでるんだって!」
むつみN「なんかおかしい事言ってるわね」
珠美「コラでしょ、どうせ」
千里「お姉さん、もしかして昨日の」
むつみ「そんなバカな!」   
   外を見る千里とむつみ。
   トビタイヤが高層ビルを破壊しながら暴れている。
千里・むつみ「絶対昨日の奴の仲間だ……」
トビタイヤ「シマタカの仇、討たせてもらう!」
#漫画原作部門  
#創作大賞2024


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?