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2019年1月の記事一覧

目は開けたまま、舞台は終われども。––屋根裏ハイツ 5F 演劇公演『ここは出口ではない』

1 佃煮となめたけ

A なめたけって佃煮なの?
B …佃煮でしょ、
B スーパーの分類では、同じところにいるよね、

 なめたけ(の醤油炊き)が(海苔の)佃煮と同じであるかは、双方を定義する仕方に依るだろう。だがB(作中で「シホ」と呼ばれる、Aと同棲している女性)にとって両者の異同は、スーパーでの陳列のされ方という、場の近接の度合いで測られる。当然、その尺度を正当化する根拠などない。だが多くの人

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捩れから浮かび上がるもの/ジエン社『ボードゲームと種の起源』

 かっちりとした「批評」のスタイルで書ける気がいまはしないので(そもそもそういうスタイルがあるのかどうかしらないけれど)、まずは劇中で印象に残った台詞(言葉)について触れるところからはじめてみたい。

チロル「近すぎたわたし?……わたし距離が近くなりすぎるから、人間たちをおかしくさせてしまうらしい」

 当日パンフレットの登場人物紹介によると、チロルは「自称妖精の女。妖精の森出身で、3か月前、魔界

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同じ大地の上に立つ——マレビトの会『福島を上演する』の倫理

フェスティバル/トーキョー18における上演で3年にわたるプロジェクトにひとつの区切りをつけたマレビトの会『福島を上演する』。同プロジェクトはそのタイトルとは裏腹に、主にその形式の面で注目を浴びてきた。何もない舞台空間と大雑把なマイム。ほとんど普段着のままの俳優たちの発する言葉には「リアルな」感情はのせられておらず(少なくともそのように見え)、多くの場合は棒読みのようにすら聞こえる。特異なのは演技の

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劇評マガジンはじめます。

あけましておめでとうございます。
突然ですが、noteで劇評マガジンをはじめることにしました。現時点での参加メンバーは演劇研究者の伊藤寧美さん、批評再生塾から渋革まろんくんと野村崇明くん、ふじのくに⇔せかい演劇祭2017劇評コンクール最優秀賞&第22回シアターアーツ賞佳作を受賞している高須賀真之くん、そして私の5人。

書き手には書く場を、読者には読む場を。今回参加してもらった書き手はそれぞれにブ

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