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もいちど算数(2):数について考える・下

「もいちど算数」についてはこちら→算数苦手人多すぎ問題と、算数は暗記だ問題について

もいちど算数(1):数について考える・上 のつづきです。

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前の記事では、現実のものが「どれだけあるか」を表すために、数字を作った……という話をしました。でも、前の記事で作った「1、2,3,4,5」という数字だけでは、全てを表すことができません。
もっと多いものを表すために、さらに数字を作ります。「6,7,8,9」……でも、いつまでも作るわけにはいきません。増えるたびに新しい数字を作っていては、覚えるのが大変です。

図2-1

では、どうすればいいのか。ある程度のところで、ひとつのまとまりにしてやればいいのです
ちょうど両手の指の数がいっぱいになる、9の次を「じゅう」として、この数になると鳥がまとまって合体すると考えましょう。

図2-2

そうすれば、数が「じゅう」を超えても、「じゅう」と「いち」「じゅう」と「に」のように、これまでの数字だけで数えていけます。

図2-3

もっと増えて、「じゅう」がたくさんになった場合も、「じゅう」の鳥が「に」あるから「にじゅう」とすれば、これまでの数字だけでまだまだ数えていけます。
そしてまた、「じゅう」が「じゅう」集まったらまた合体して「ひゃく」の鳥に。ここでようやく新しい言葉が出てきます。

図2-4

このように、「じゅう」集まるごとに合体して新しい鳥になる、という数え方なら、新しい言葉をほとんど作らなくても、大きな数を数えることができます
それでは、数え方はこれでいいとして、「書き方」はどうなるのでしょうか。ふつうに考えれば、それぞれの数に対応する言葉を、そのまま書けばいいのです。漢数字がその考え方ですね。
でもこれだとひとつ、困ったことがあります。それは、大きな数を考えれば考えるほど、「新しい言葉」を作っていかなければいけない、ということ。
地球は一定の大きさですが、宇宙は(たぶん)無限に広がっています。これからどれだけ大きな数を扱うのかわからないので、そのたびに新しい言葉を作るのはちょっと現実的ではありません。

図2-5

では、どうすれば新しい言葉を作ることなく大きな数を表せるのか。
いま世界でいちばん使われている「アラビア数字」は、たった一つのアイデアでこの問題を解決しました。
それは、数字そのものではなくて、数字の書かれた「位置」によって数を表す、という方法です。

図2-6

図の「2222」はすべて同じ「2」という数字を使っていますが、「どの位置にあるか」で表している大きさは違います。
このような考え方をすることで、「千」「百」「十」のような数字を作らなくても、大きな数を表せるということですね

図2-7

ただし、この書き方にも弱点がありました。それは、下の図のように「一」の鳥がいないけれど、「十」より大きいところには鳥がいる場合。
漢数字であれば「二千二百二十」と書けば問題ないですが、アラビア数字で「222」と書いてしまうと、位置がずれてしまいます。
「いない」ということを示す、新しい数字が必要です

図2-8

その「新しい数字」を、「0」としましょう。
「2220」と書くことで、それぞれの数字が正しい位置に収まってくれます。

数はもともと、現実に「ある」ものを表す手段です。
だから、「0」という、「ない」ことを表す数字はまさに「発明」でした
この辺りの歴史は厳密に言うともっと複雑なので省略しますが、「数字」が発明されてから数字として「0」が使われるようになるまでは、千年単位でのタイムラグがありました。

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数についての振り返りはこの辺りで一段落でしょうか。
テーマが「算数を振り返る」なので「N進法」の話は抜かしましたが、
「10で合体」にしたけれど「7で合体」にしたらどうなるか→週・日の関係、「60」なら→時間・分・秒
「2で合体」にすると何がお得か→「0」と「1」の2種類の文字だけで表せられる→コンピューターへの応用
なんて話で、進法の概念にも発展させていけると思います。
キーは、「人間の両手の指が10本だったから10でまとめるのが主流だけれど、必ずそうする必要はない(そうでない考え方も世の中には存在する)」ということかなと。

いちから算数を学ぶ上で一番まずいのが、
「9の次は10」というのを、深く考えないまま受け入れてしまって思考停止したまま「そういうものだ」と固まってしまうことだと思います。
「1の次は2」と、「9の次は10」とでは、大きな違いがあります。
「なぜ2文字になったのか」「なぜもう一度1が出てくるのか」「初めて出てくる0とは何か」
これをしっかり理解することが重要です。

……と簡単に言いましたが、この辺の話を数字も知らないところから理解することって、けっこう大変だと思います。
でも、筆算や小数にはこの「位取り」ありきの考え方ですし、
もっと根本の、「数は現実を表す『手段』である」(=でしかない)という考え方が自然になればなるほど、
「数字ではない手段」例えば分数(数字の組み合わせ)や、数学で導入される「文字を使った式」が頭に入りやすくなるはずです。

次は加減法書くつもりです(いつになるかわからない)→もいちど算数(3):加法・減法

<まとめ>
[覚えなければならないこと]
・位取りの考え方(なぜ「9」の次に「10」になるのか)

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