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「自分のチカラひとつで成り上がれるのが面白い」。ベルトレスリング&民族格闘技の世界。

※2024年2月7日に配信されたトークライブ「くらしとしごと」をもとに構成されたコンテンツです。


トークライブ「くらしとしごと」とは
世界にはひとの数だけ、「くらし」(ライフ)と「しごと」(ワーク) の形がある。そのひとつひとつにスポットライトを当て、生き方のヒントを探るトークライブ。

兵庫県のまんなか、神河町に拠点を置くOFFICE KAJIYANOが企画。2018年にスタートし、コロナ禍を経て2023年からは月1ペースでインスタライブにて発信中! @office_kajiyano

#22 ゲスト:黒崎辰馬さん 
ベルトレスリング日本代表/大学講師

▽神戸医療未来大学レスリングクラブ
@kufhs_wrestling
民族格闘技研究所 公式Facebook


「マイナー」ではなくワールドワイドな競技。


競技人口が少ない=「マイナースポーツ」

何気なく発してしまう単語だけど、よくよく考えれば、それってだれ目線?

「ベルトレスリング」を入り口に、奥深き民族格闘技の世界へ。

並ぶと、引き締まった体型との差が歴然

その国の「国技」に飛び込むサムライ

いったいどんな競技なのか。黒崎さんの説明を借りよう。

ロシアや中央アジアを中心に盛んに行われている、帯(ベルト)を使用した組技系民族格闘技を競技化したもので、近年では国際大会や世界選手権などが開催されるなど、世界的に普及が進められている競技です。<中略> ベルトレスリングは、互いに胸を合わせた状態で腰に巻いた帯を持ち、審判の合図によって相手を投げ合い背中から落とすという競技になります

2021年度 公開講座 ベルトレスリング~民族格闘技の世界~(上)|神戸医療未来大学

遊牧民が多いシルクロード沿いではメジャーな国技で、日本でいうところの相撲や柔道。

国際大会や世界選手権などが開催されるなど、近年世界的に普及が進みつつある競技の日本代表を務めるのが、黒崎さんだ。

生命の危険を感じました。

現役のレスリング選手ながら、ベルトレスリングでは世界で五指に入る存在。

日本ではまだまだ競技人口が少ないが、海外に出ると選手層が厚く、下は10代、40代になると勝てなくなる というシビアな勝負の世界。ベテランの域に達していることを自覚しながら、念願のメダルを追っている。

ベルトレスリングは、シルクロード沿線で特に盛ん。

Kaidor - このファイルは次の画像から切り抜かれたものです, CC 表示-継承 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=71237789による
実物のベルト。赤が公式カラー

民族格闘技の選手と大学講師の「二足のわらじ」

黒崎さんは、福岡生まれの九州男児。年末にテレビで放映されていた格闘技の選手たちに憧れ、東福岡高入学とともにレスリング部へ。

福岡県大会では2位、全日本選手権での入賞歴もある。

レスリングを続けながら、福岡大学、大学院へと進学後、若くして助教となり後進の指導にもあたるように。大阪体育大学の研究員を経て現職。

プライベートでは一児のパパ。キルギスやトルコなど世界を飛び回る競技生活には家族の理解、応援も得られているそうだ。
羨ましい。あ、本音。

アクロバティックな「高い高い」 ※うちの長男です。

ベルトレスリング、そして民族格闘技の魅力


前述のとおりベルトレスリングのさかんな国では、その注目度、そしてステータスも日本とは大きく異なるそう。

国技なので、観客がすごい。スポンサーもついている。勝者にはチャンピオンの称号と栄誉が与えられるとともに、金銭的インセンティブも。

例えばカザフスタンでは、優勝賞品はベンツ(!)や賞金。

キルギス等では、羊、ヤギが与えられ、背負って表彰式に立つのが恒例の光景のだそう。(家畜たちは、その晩のパーティーのテーブルへ)

※ヤギ飼いとしては複雑な気持ち。。。

黒崎さん曰く、ベルトレスリングはじめ民族格闘技の魅力は、「自分の力一つで成り上がる」ことができること。

民族同士の争い、力比べや取っ組み合いが原点。
「力が強いものが勝ち」という明快な基準がそこにある。


民族格闘技の頂点を決める「ワールドノマドゲームズ」


この世界のオリンピックにあたるのが、「ワールドノマドゲームズ」

遊牧民たちのスポーツが集まる祭典だ。

ベルトレスリングはもちろん、ベルトレスリングの一種である「アシートマリ アバ ギュレシュ」のほか、牛の関節を投げるカーリングのような競技も。

手に持っているのが牛骨。

ユニークなのが「オイルレスリング」
その名の通り、手で掴めないように体にオイルをヌルヌルに塗って取っ組み合うという競技。トルコでは 全競技の中でも一番くらいにメジャーな競技で、勝てば国中のヒーロー。

過去大会ではエルドアン大統領も観にきたらしい(!)

群衆が見守る中、真剣勝負。右が黒崎さん。
勝者のヒーローインタビュー。

さまざまな国から選手が集う大会ならではの特徴として、宿舎では違う国の人と同部屋になることが多いそう。前の大会で同じ部屋だった縁で「あぁ、あの時の」みたいなことも民族競技者「あるある」

侵攻後、ロシアの選手とウクライナの選手がいっしょに過ごしていたことに感銘を受けたとも (ロシア側が気まずそうにしてたいたらしいけど)。

トルクメニスタンの選手団と

競技自体の醍醐味もさることながら、世界を行き来してグローバルな選手交流ができることも大きな魅力なのだという。楽しそう。

ちなみに、気になる言語コミュニケーションのほうは・・・多く行き交うのはロシア語で英語はややマイナー。

ただし、言語を知らなくても、現地語の「ありがとう」や日常の慣用句だけ覚えておけばなんとかなると黒崎氏。

遊牧の血を引く猛者たちと渡り合っていくには、そのメンタルが必要なのかもしれない。

改めて、この中にいるのがすごい。

これからのこと

ベルトレスリングは体重階級制の競技ではあるが、一番上の階級は制限がなく、身長2m、体重150kgもの異次元の選手の試合を間近で見ることも。長身とはいえ、チカラがものをいう世界で、体格的にハンデを背負う黒崎さんが最前線で戦えているのは驚異的なことだ。

最高戦績はアジア選手権5位。あと一歩のところでメダルに手が届かず、悔しい思いを味わってきた黒崎さん。(世界選手権もあるが、レベルが高いのはアジア選手権)

ただ、日本勢が15年近くメダルから遠ざかっている中で、昨年には日本人選手がアジア選手権で2位と躍進。

「日本人にも可能性があることが証明された」

「今回はメダル取れるのか?といつも聞かれる。期待してくれている人のためにも勝ちたい。」

柔和な表情に光る、アスリートの眼差し。

主要大会は直前に告知されるURLから視聴できるそうなので、ぜひ!
(情報をキャッチしたら、カジヤノinsta等でも告知します)

ちなみに、ベルトレスリングは女性競技者も多く存在するものの、日本人はゼロ。「最初の1人になりたい」という女性の方がいらっしゃれば、ご紹介しますのでご連絡ください。


Information

黒崎 辰馬(くろさき たつま)
Instagram📷
▽神戸医療未来大学レスリングクラブ
@kufhs_wrestling

民族格闘技研究所 公式Facebook

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