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SF笑説「がんばれ!半田くん」   ⑬ 地球の中心で愛を叫ぶ

 出来たてホヤホヤの地球は、真っ赤に燃えた火の玉だった。真っ赤に燃えたマグマの中で、僕たちは友達との悲しい別れを経験することになった。それは、テッチャンとの別れだった。テッチャンは重たい物質なので、溶けた地球の中を地球の中心へ向かって沈んでいく運命にあった。テッチャンは、僕たちに話しかけた。

「ぼくたち鉄の大半は、これから地球の中心にむかって旅立つんだ。重い僕たちが、地球の中心に集まって、どっしりと構えないと、地球がシャンとしないからな。」

「そうか、溶けた地球の中で、重たい君たち鉄は、沈んでいって、地球の中心に集まる運命なんだね。そこで、ぐるぐる回って、磁石も作るんだろう?きみたち鉄のおかげで、地球上の生き物が守られるんだね。よろしく頼んだよ。テッチャン!」

マグネシウム王子は、頼もしそうにテッチャンを見て、お別れを言った。

「さようなら、みんな!僕たちは、一旦地球の中心に集まって地球のためのミッションに励むけど、僕たち鉄の仲間の一部はまた表面に出てきて、みんなに会えると思うよ。そのときまで、さようなら〜」

テッチャンとその仲間たちはそう言うと、マグマの海の中をどんどん深い方へ沈んでいった。手をふる球体の姿がだんだん小さくなって、点になって、そして最後はとうとう見えなくなってしまった。

「そう。みんなそれぞれ役割があるんだ。それぞれの役割を頑張って果たすことで、地球を守っていくんだ。半田くん、つばきちゃん、山美、分かったかい?」

シリコンは、そう言って、テッチャンたちの別れを惜しんでいた。

テッチャンは、その後、地球の中心に向かってひたすら進んでいった。そして、地球の中心に近づくにつれて、多くの鉄の球体仲間が集まってきた。

「テッチャン久しぶり。鉄子よ、覚えてる?」

「ああ、鉄子か。よく覚えているよ。いろいろなゲストを呼んで、鉄子の部屋という番組をやっていたよね。有名だったもの。」

「本当?見ていてくれたの?ありがとう。今度ゲストで出てね。」

「うん。ぜひ呼んでね。でも、その前に、地球で一仕事しなきゃいけないんだ。」

「おおい、テッチャン、僕のことも覚えてる?」

「ああ、鉄人28号か、良く覚えているよ。あっ、そっちの君、もしかしてアイアンマン?」

「ハーイ、アイ・アム・アイアンマン!ハウ・アー・ユー?」

本当にいろんな鉄球体が集まってきて、テッチャンたちは、仲間との再開を心から喜び合った。

 彼らの役割は、地球の中心に集まって、地球のコア(核)を作ることだ。鉄は他の元素に比べてとても重いので、その大部分は、地球の中心に集まってくる。本当の中心部は、固体の鉄だけど、その外側には液体の鉄が集まっている。固体の中心部では、鉄の球体は互いにギューっと詰まっているので動けない。でも、その外側の液体の部分では、比較的自由に動けるようだ。我らがテッチャンは、そこにいた。

「おい、みんな元気かい?地球の中心部に行った仲間たちは、山手線の満員電車みたいにぎゅー詰めで、動きが取れないみたいだけど、僕らの場所では、自由に動けるよ。だからみんなで元気に動き回ろう。僕ら鉄の球体たちが頑張って動き回ることで、地球に磁石ができるんだ。ほら、地球で方向を調べるとき、北と南を示す磁石があるだろう?あの磁石を動かしているのが、僕たちが動き回って作っている地球磁場なんだ。あれがあると、道に迷ったときどっちが北かわかるのでとても便利だろう?でも、そんなことより、大切な役目があるんだ。太陽系の真ん中にある太陽は、僕たちの地球を作り出した母親みたいなものだけど、太陽の表面からは太陽風という高温の粒子が四方八方に吹き出していて、地球にも降り注いでいるんだ。これに直接当たると生物は被爆してとても危険なんだ。そうならないように、僕たち鉄球体グループは頑張る必要があるんだよ。僕らが動き出すまでは、マグマオーシャンに残っている、マグネシウム王子やシリコンさん、カルシウムくんらががんばって、磁力を作り出しているけど、だんだん作れなくなるはずだ。そのときに備えて、僕たちが動き回って、磁力を作ろう。そして、地球を守るんだ。」

 地球の一番深いところに大集合した鉄の球体たちに向けて、テッチャンは呼びかけた。

「さあ、鉄の仲間たちよ、この地球の中心で、僕たちの世界を作るんだ。僕たちのこの場所を核と呼ぶことにしよう。核とは、地球の中心という意味だよ。僕たちは、愛する地球を守るため一丸となって活動するんだ。地球の仲間たちを宇宙に飛ばさないように、重力を引き起こすんだ。そして、地球の仲間たちを有害な太陽風から守るために磁場を作るんだ。そうだ、地球の中心から愛を叫ぼう!」

 テッチャンの呼びかけに応えて、仲間の鉄たちは、一斉に働き出した。こうして、地球の中心に集まった鉄の仲間たちは、地球を支える役割を担いはじめていた。

地球の中心に向かって進む鉄球体たち。頑張れ!鉄球体。地球の核を作るんだ。