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一体何が変わった?令和5年度法改正【商標法編】


知財の法律の一部が変わる

  商標法などの知財の法律は、定期的に改正されます。
 令和6年4月1日、改正された法律「不正競争防止法等の一部を改正する法律」が施行されました。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/hokaisei/sangyozaisan/fuseikyousou_2306.html

 今回は、商標法で大きく変わった制度を紹介します。 

商標法の改正点その1 コンセント制度が導入される

 商標登録出願した後は、登録できるか否かが特許庁で審査されます。
 登録できない場合のひとつとして、①他人が先に出願し登録された商標権(先願先登録商標)があり、②先願先登録商標の商標と自分の出願の商標が同一又は類似であり、かつ③先願先登録商標の指定商品・役務と自分の指定商品・役務が同一又は類似である、ことがあります。
 他人の持っている商標権と紛らわしい商標を登録させると、需要者に「どっちがどっちだ?」と出所の混同を起こすため、登録されません。

 しかし、法改正で「コンセント制度」が導入されることで、上記①~③に当てはまっていても、商標登録できる可能性が生じます。
 具体的には、先願先登録商標の商標権者が自分の出願した商標の登録に同意(コンセント)し、需要者に出所の混同が生じるおそれがない場合には、商標登録が認められます。

 コンセント制度が導入される理由としては、以下の2点があります。
 ・諸外国の多くは、先願先登録商標の商標権者による同意があれば、同一又は類似の商標であっても併存登録を認める、コンセント制度を導入しているため。
 ・中小企業を含むユーザーから、簡便な手続であるコンセント制度の導入について、需要があるため。

商標法の改正点その2 他人の氏名を含む商標が登録されやすくなる

 他人の氏名を含む商標は、商標登録できません。
 勝手に他人の商標を登録すると、その他人の人格権を侵害するためです。
 現状では、その氏名を持つ他人の承諾を得た場合のみ登録されます。
 そのため、自分の氏名を出願した場合も他人の氏名を含む商標に該当し、「世界中の同姓同名の他人全員の承諾を得ないと登録できない」という、非現実的な状況が生まれていました。

 しかし法改正で、承諾を得ていない場合も商標登録が可能になります。
 具体的には、商標に含まれる氏名が、①一定の知名度を有する他人が存在しないこと、及び②商標を構成する氏名と出願人の間に「相当の関連性」があり、商標登録を受けることに「不正の目的がない」こと、を満たす場合は、同姓同名の他人の承諾なしに商標登録されます。

 他人の氏名を含む商標が登録されやすくなる理由は、ファッション業界を中心に、同姓同名の他人全員の承諾を得なければならない現状を変えて欲しいという需要があるためです。ファッション業界は、創業者やデザイナーなど、氏名をブランド名に用いることが多いです。

まとめ

 今回は、コンセント制度の導入と、他人の氏名を含む商標の登録要件の緩和について、紹介しました。

 コンセント制度に関しては、「待ってました」という気持ちです。
 先願先登録商標のせいで登録を諦めた商標もあり、悔しい思いをしたことがあるためです。
 
 他人の氏名を含む商標の登録要件の緩和に関しては、非現実的な現状が変わって良かったなと安堵しています。
 まだファッション業界の方のご依頼を受けたことはありませんが、今後が楽しみです。

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