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マーケティングと感性とクリエイティビティ、感情を動かすエモーショナルマーケティングの必要性について

Start-Xで代表を務めております山口です。

Start-Xはクリエイティブを起爆剤に企業のマーケティング/PRを支援している会社です。最近では、マーケティングの観点をもとに新規事業開発や既存事業のグロース支援、各種企業様との共同事業開発等もおこなっております。

さて今回は、マーケティング/PRプロデューサーとして活動している私山口が「マーケティング」と「感性」と「クリエイティブ」そして、近年注目されているエモーショナルマーケティングにも目を向けながらnoteを書いていこうかと思います。


マーケティングはサイエンス?

まず、マーケティングはある種サイエンスな部分があるのではないかということです。

現代のマーケティングは科学的手法に則った知識体系で形成されています。

科学的手法とは観測や実験から仮説や予測をたて、その仮説や予測の正確さを確かめるため観測や実験を繰り返し再現性を高める、いわゆるPDCAと呼ばれるような仮説検証プロセスにより利益や価値を高め課題解決をすることです。

一般的には評価指標(KPI)を数値で設定し、どれだけKPIに近づけることができたのか(どれだけ目標達成できたのか)を数字で可視化するなど、論理的な思考が求められる極めてシビアな世界です。

デジタルやWebマーケティングではデータ分析ツールの高度化やPDCAサイクルの高速化などの進化も早く、専門知識を有する人材の奪い合いになるなど、業界全体の進化と成長はとどまるところを知りません。

生活者の心理的な感情変化

一方で、マーケティングの根幹はサイエンスな側面はありながら生活者の心理的な感情変化に触れていくことも非常に重要です。

少し古いお話しですが、“モノより思い出”というコピーが20世紀の終わりに生まれました。

高度経済成長の時代には、高価な消費財やサービスを手に入れることが一種のステータスとみなされていましたが、バブル崩壊後の低成長時代になると高価なモノよりもコト(思い出)を重視する生活者の心理的な変化を上手く捉えた言葉です。

生活者はモノよりもコトを重視するようになり、物質的な満足度よりも心理的な幸福度を重視するようになりました。そして心理をマーケティングで紐解く必要性が求められるようになり、マーケティングに携わる人にその素養が求められるようになりました。

マーケティングではデータが重要な資源であり、数字や言語を司り、論理に優れている左脳的な思考が大切で、数字を正しく読み解く能力が求められると思います。

サイエンスに則って作られた現代のマーケティングにおいて、掴みどころのない生活者の心理をデータとして取扱うことは容易ではありません。

“なぜ”、いいなと思ったのか?“なぜ”、欲しいと思ったのか?直感的な行動を論理的に説明することは容易ではありません。しかし、生活者は直感的にモノよりコトを選ぶようになりました。

もちろん“モノ”が持つ物質的な価値を無視しているわけではありません。“コト”が決断の重要なトリガーになっているのです。

※少し話は脇道に逸れますが、、、

生活者の動向に関してマクロな情報を知りたい方に関しては、やはり博報堂さんの博報堂生活総合研究所が公開している「生活定点」がおすすめでしょう。

生活定点

最新版では、1992年〜2022年までの30年分の生活者観測データ約1,400項目が無償で公開されています。意外なデータも多く存在していますので、自己的な観測や推測ではなく、生活者の感情や心理状態をより正しく把握するようにするためにもこちらのデータを一度ご覧になったほうがよいかと思います。

感性とクリエイティビティの重要性

さて先ほど述べた通り、人は“コト”を重視するようになり、“コト”を満たすことで心理的な幸福を求めるようになりました。高価なブランド品を身に纏い、華やかに振舞うことよりも、美しい自然を愛でその土地でしか味わえない食材に舌鼓を打ち、非日常に身も心も委ねる、そんな形としては残らない体験に価値を見出すようになったのです。

もちろん“モノ”にもこのような体験価値は存在します。その“モノ”を所有すること、使用することで得られる体験価値をいかに高めるのか、いわゆるカスタマーエクスペリエンス(CX)というマーケティング思考です。

カスタマー(顧客)の体験価値(エクスペリエンス)を高めリピートやロイヤルティの向上を生み出すことで利益を追求し、ひいてはブランドや企業価値を向上させ市場優位性を高めることを目的とする考え方は多くの企業やブランドに浸透しています。

オン・オフラインを問わない生活者との接点を洗い出し、満足度の高い体験価値を提供する、そのために使われる手法やツールも高度化し本来は数値化することが難しい体験価値をデータとして可視化し科学的手法を用いることで課題解決を図っています。

しかし、先ほど述べた直感的な選択をなぜ行ったのかという本質的な理解を科学的手法で解決することはできていませんし、今後もできないかもしれません。

いいね、と思う感覚や思わず手にとってしまう、見惚れてしまう衝動を生み出すためには、何が必要なのでしょうか?私は感性とクリエイティビティが、重要な役割を果たすと考えています。

感性をシンプルに表現するならば、美や善を評価判断する能力。クリエイティビティは、創造力や独創力という言葉で表わすのが一般的でしょうか。どちらも数字や情報のように目に見えるカタチで表現することが難しいエモーショナルなものです。

“コト”を感情や情緒に訴え創造的な手法で伝える、科学的手法や論理的な思考(左脳的なマーケティング)では解決できない直感的な判断や行動を、感性とクリエイティビティによって促すことができるのではないでしょうか。

“モノより思い出”。言葉の受け止め方は、人によって異なるかもしれません。しかし、感情や情緒に訴える何かがあり、直感で肯定的に捉えられたからこそ、コトを重視するようになった生活者から支持されたのではないでしょうか。

マーケティングには、左脳的な思考と右脳的な閃きの高次元なバランス感覚が必要不可欠な能力だと以前のnoteでもお話しましたが、今回私が述べたマーケティングはサイエンスとは左脳、感性とクリエイティビティは右脳が司る領域です。

モノよりもコトを重視する生活者の心理的な変化に訴えかけるには、サイエンスだけでは限界があり、より直感的でエモーショナルな感性とクリエイティビティがますますマーケティングにおいて重要な要因になっているのではないでしょうか。

そこで重要になるのがエモーショナルマーケティング

そもそもエモーショナルマーケティングとは、

お客様の感情に働きかけることで購買意欲を刺激するマーケティング手法

と一般的には定義されています。

エモーショナルマーケティングの概念を理解する上で重要な鍵となるのは、お客様の欲求、つまり欲しいという気持ち(=ウォンツ)を刺激するのであり、必要性(=ニーズ)を刺激するのではないということです。本能的な感情であるウォンツは、購入判断にニーズを超えた強い影響力を及ぼすとされています。

たとえば、栄養価の高いドリンクを販売する際、以下のような二つのマーケティングの戦略方針が考えられます。

A:このドリンクに含まれる成分は骨を丈夫に保ち、骨折の予防などに役立つため、健康志向の人をターゲットにする

B:このドリンクはスタイリッシュなモデルやアスリートが摂取しており、彼らのようなライフスタイルに憧れる人をターゲットにする

ドリンク商品を企画するにあたって、同一成分の商品であってもAとBのような異なるマーケティング戦略を立案することが可能です。健康に役立つ栄養分を売りにするAは人々の健康ニーズに働きかける方法ですが、Bは憧れという感情・欲求に働きかける、つまりエモーショナルマーケティングの手法です。

Aのようにニーズに働きかけるのであれば、健康成分や効果を前面に押し出した商品名やキャッチコピー、パッケージデザインが重要となりますが、Bの場合はスタイリッシュさやおしゃれなライフスタイルをイメージさせる要素が求められます。

もし人間がニーズによってのみ購買行動を決定するならば、健康を意識した商品だけが売れるはずです。しかし多くの場合、人の行動決定の大きな要素となっているのは感情であり、「美味しそう」「話題の商品を試したい」、または「憧れ」などの感情が商品に強い興味を抱かせる原動力になります。エモーショナルマーケティングは、人間の根源的な欲求を理解し、そこに上手に応えていくことで利益につなげていきます。

エモーショナルマーケティングで注目すべき感情

たとえば、マンションやアパートを借りる場合、希望条件に合う複数の物件情報を確認した上で、実際に内見に行くことがあります。立地や家賃、設備、間取りなど、条件に合致した物件を複数見た後で、契約申し込みの決定を後押しするのは、感情であることが珍しくありません。同条件であるにもかかわらず、「なぜかこの部屋が好き」という気持ちが決定打になるのです。

「好き」という感情は、それまでに得た情報によって形作られていきます。明文化された賃貸条件以外にも、以下のような情報に触れ、そこから感情が形成されているのです。

・室内や建物の印象
・実際に訪れた際の周辺の雰囲気
・窓やベランダから見える外の景色

これらは物件の検索条件に入力できるものではありませんが、人の感情に大きく影響します。希望額よりやや高い賃料であったとしても、「ここに住みたい!」という感情をお客様に持ってもらうことができれば、お客様が上限額を上げて検討するという可能性もあります。感情がそれほどまでに人を動かす力を持っていることを、実体験として経験したことがある人もいるかもしれません。

不動産物件の例と同様に、お客様の感情に影響する要素として、商品写真やディスプレイ、名称やキャッチコピー、ロゴ、宣伝スタイルなどをトータルで感情に訴えかけるものにしていくことが、エモーショナルマーケティングの第一歩です。

エモーショナルマーケティングに関係する価値観

エモーショナルマーケティングを実践する際は、どんな価値がお客様のどんな感情に働きかけるかを想定する必要があります。購買意欲をかき立てるためにはポジティブな感情が必要なだけでなく、感情の種類も見極めた上でマーケティング戦略を立案します。

一例として、中古家具の販売を考えてみましょう。

中古という言葉からは、

「人が使ったもの」
「古いデザイン」
「安い」
「清潔でない」
「年数が経過していて壊れるかもしれない」

というイメージを持つ可能性があります。

しかし、中古を「ユーズド」や「アンティーク調」「レトロ風」などの言葉に置き換えてみると、イメージは変化します。これらの言葉からは「歴史がある」「趣きがある」「個性的である」といったポジティブな価値が感じられ、関心を持つ人の「こんな家具が似合うライフスタイルを送りたい」という気持ちに働きかけます。

他にも、以下のような価値が、感情を動かします。

話題性、トレンド感がある:新しいものや流行に敏感な人の心を動かす
有名、老舗である:信頼や実績を求める人の心を動かす
おしゃれ、かわいい、格好いい:好みのスタイルを実現したい人の心を動かす
芸能人・著名人が使っている:憧れの人に近づきたい人の心を動かす
特殊性、専門性が高い:機能性以上の特別感や信用を求める人の心を動かす

これらの価値は、商品やサービスの「役に立つ」「良い材料を使っている」といった性能・性質とは異なる属性です。

商品やサービスに実用性があり、さらに感情に働きかけるエモーショナルマーケティングの要素を伴えば、購買意欲を後押しすることになり、利益に貢献します。

エモーショナルマーケティング実践方法と注意点

エモーショナルマーケティングの実践は、商品設置のポップやディスプレイを工夫する、SNSやYouTube・ブログ投稿の内容を感情にフォーカスしたものにするなど、手近なところから着手することが可能です。さらに広告の出稿先や内容を感情重視でアレンジすることによっても、潜在的なお客様の心を捉えることができます。

ただし、商品やサービスの種類、性格によって、エモーショナルマーケティングの使い方には注意が必要です。医薬品や医療器具、乳幼児向け商品、乗り物など、安全が最優先されるものを売る場合、感情面への働きかけを優先しすぎて効能や機能の説明が不足すると、不安感にもつながりかねません。安全性などのプロモーションや説明を行う前提のもと、エモーショナルマーケティングも併用することで、お客様の必要性と感情の両方に訴えかけましょう。

人がモノを購入する際の心理を考えたとき、まず「魅力的」であることが「欲しい」という感情を動かし、その上で「どのような特性があるか」「他の商品と差別化されている点は何か」という思考が働くことを覚えておきましょう。

もっともわかりやすい例としては、自分自身がある商品を「欲しい」と感じたときの心理の流れをトレースすることで、お客様の感情も想像しやすくなります。お客様のタイプや属性を問わず、なおかつ店舗や企業の規模にも関係なく使えるエモーショナルマーケティングを、ぜひ戦略に取り入れてみてはいかがでしょうか。


まとめ:生活者の感性を動かすために、クリエイティブの重要性を知りエモーショナルマーケティングにも着手してみよう

さて上記で、

  • マーケティングはサイエンス?

  • 生活者の心理的な感情変化

  • 感性とクリエイティビティの重要性

  • エモーショナルマーケティングの重要性

といった点に関して触れてきました。

今回は、マーケティングと感性や感情という少々わかりずらい内容だったかもしれませんが、実際にマーケティグのなかで作るクリエイティブの効果においてもこの「エモーショナルマーケティング」を意識するかどうかでCTR/CVRといった効果が大きく変わってきます。

数値のようなサイエンスだけで、マーケティングを実行するだけでなく生活者の心理や感性に普段から目や意識を向けていくことでよりビジネスでも大きな成果に結びつくかもしれませんね。


一緒にクリエイティブやマーケティング/PRの可能性を信じながら、新規事業開発や事業成長を突き詰めていきたいと考えていただける企業様がいらっしゃいましたらぜひお気軽にHPか私のSNSまでご連絡いただけましたら幸いです。

最後に、今回のnoteをお読みくださり誠にありがとうございました。

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