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本当の運動会

我が家がお世話になっている保育園の近くの公園。

とても小さな公園だが、毎年この時期になると熱きバトルが繰り広げられる。

綱引き大会。

子どもの部、
大人の部・女子、
大人の部・男子、
の3つのトーナメントが行われるのだが、
我が家の息子りとは、同じクラスの子たちと子どもの部。
私も主人も、りとのクラスメンバーの保護者のパパ・ママと一緒に参加する。

ママ友、パパ友が団結して全力の力を出し、1本の綱を引く。

私たちはそれを「本当の運動会」と呼んでいる。

そもそもこの綱引きが恒例になったのは、昨年同じグループのリーダー的存在のママが「綱引きやる人~」とLINEで声かけをしてくれたことから始まった。

すると、すぐに参加人数が集まった。
現地に行くと、どうやら大人も出来るらしいということを知り、パパママも参加することに。
すると、まさかのママの部は準優勝。
パパは3位。
子どもたちは、まだ3歳とか4歳。当時1番年下のクラスで「綱を引く」ということすら理解できないまま、ぽかーんと相手に引っ張られて終わった。

これが、昨年の結果。

今年はどうだったか。

少し成長した子どもたちは、今年、なんと準優勝。
小学生のお兄ちゃんたちにはさすがに勝てなかったが、ちゃんと縄を持ち「引っ張る」ということを出来るようになっていた。

うちのりと、バスケと同じ悪い癖が一瞬出たのを、母ちゃん見逃さなかった。

決勝戦、小学生のお兄ちゃんたちとの試合の1本目。
彼は、まさかの片手でゆるく引っ張っていた。

かっちーん。

絶対にりとはこう言う「だって、絶対に勝てないんだもん。」

そんなこたぁ許せない。
ママは今日、完全に燃えているんだ。
気持ちに寄り添う、なんて余裕はねえのよ。
脇におとちゃんを抱きかかえ、2本目の準備をするりとのことろに向かう。
ジャッジャッジャッジャ。砂利の音を鳴らしながら。

「りと!片手でなんかしないよ!
しっかり両手でぎゅっと持って放さないよ!
最後まで諦めずにしっかりやるよ!」

りとも意外と「分かった!」と言って、気合いを入れて引いていた。

みんなも一生懸命引いたけど、
残念ながら、負けた。

でも今年は、準優勝。

なかなかの健闘である。

景品に、バナナを1房(つまり、バナナ15本くらい)、じゃがいも沢山、さつまいも6個、玉ねぎ沢山、みかん沢山。

段ボール一杯入った野菜や果物がもたらされた。

ありがとう、子どもたち。

いよいよママの部。

来たな。(炎)

実は前日の夜、みんなで綱引きの動画をシェアしたり、服装などもアドバイスしあい、結構な気合いを入れていた。

メンバーは、私とリーダー的ママの2名以外は、新たに今年参加するママだった。

靴は、ウォーキングシューズ。
服は、どうなっても良いようにもう何年も着ていなかったゴルフウェアを出して着た。

周りの皆さんも、腕と脇が縄でこすれて痛くないよう、長袖でケアした服装。しっかりとした靴。

よしよし。

なんてったって、昨年準優勝したのだもの。

景品の野菜・果物がすご過ぎて、今回も絶対に取ろうと意気込んでいた。

さて、我々の出番は2本目。

1本目の試合を見ていたら、なんかじわじわと緊張してきた。

これが不思議と、緊張するんですよ。(笑)

すると、遠くにいた新メンバーのママが私の腕にしがみついてくる
「山口さん、ちょっと待って、全然勝てる気がしないんだけど・・・!」

完全にビビっている。
でも、気持ちはよく分かる。

目の前で繰り広げられる、大の大人の本気の綱引き、迫力がすごくてめっちゃ怖い。(笑)

しかも相手チームから醸し出される雰囲気、明らかに強そう。
体もどしっとしているママたちが真っ黒のTシャツを着て、足袋なんかはいているのだもの。

もう風格がまるで違うのだ。

これを初めて見たら、それはビビる。

我々チームはまったくそんなオーラは出せていない。
それは、認める。

でも分からない、昨年は準優勝したんだ、やってみないと分からないよ。

さぁ、試合開始!

腰を落として低く構え両足で踏ん張る。
空を見上げ体重を後ろにかえて、足を伸ばし突っ張って立つ。

目をつぶり、歯を食いしばり、もう無心で全部の力を込めて引く。引く。

ピピ-!!

笛が鳴る。

初戦は、勝った。勝った!

よし、もう次回は準決勝!(笑)
小さな公園のこの町の大会なので、参加チームは少ない。

そして、準決勝。

相手は、はちまきをぎゅっとして、服を全身合わせた、大学生くらいの若い女の子チームだった。

う、、見るからに強そうんだけど、、、

この若さあふれる感じからだろうか、相手にも余裕を感じる。
きっと、私たち、弱いと思われている。

いかんいかん、初めから気持ちで負けたらダメ。

みんなで輪になり、綱引きのポイントを復唱して勝利を誓った。

ピックアンドローブ、(縄を持ち上にあげる)
セット、(縄を脇に挟む)
レディ、ゴー!

一気に全身の力を脇と手に集めて、どんなに苦しくても、辛くても、空を見上げてぐーっと後ろに、引く。

でも、体が持って行かれる・・・!ぬぐぐぐぐ。。

あー、負けてしまった。

でも、2本目がある。

我々ママチーム、陣痛を思い出せ、あの時の、出産の踏ん張りを今ここでもう一度思い出すのだ。

レディ、ゴー!

と共に、力をぐっと込める。

今回はじりじりと良い戦いをしている。

とにかく気を緩めずに引くのみ。

後ろからキャプテンの綺麗な英語の発音で、
「Low!Low!!」
が聞こえてくる。

そうだ、腰を落とせ落とせ。低く低く!

最後、ダダダダ~っと、相手に、
持って行かれた。。

あぁ、くそう・・・!

我々は負けてしまった。結構悔しい。。

でも朗報が。3位決定戦がある。

それまでお昼休憩とのことで、2時間ほど空く。

結構空くなぁ。

我々は、屋台の焼きそば、たこ焼き、唐揚げを購入し、
飲んだ。(笑)

缶ビール、シューハイを、飲んでしまった。

「乾杯!体を温めよう!」

それが私たちの作戦ということにした。

そして、いよいよ3回戦。

相手は・・・地元の消防団。

えーーーー。

ずらっと消防服を着たがたいの良い方々と対峙する。

ちょっと、これは本当に、本当に勝てないかも。

そんなことをたぶん皆が感じて、礼をし挨拶。

お辞儀をして顔を上げると、あれ?

私の目の前の人は、
おじいさんだった。

んんん?

メンズ?

隣は?

またもおじいさんやんけ!

5人中2人、おじいさんが混ざっていた。

ちょいちょーい!

しかもおじいさんは、よぼよぼの倒れそうなおじいさんではなく、薄い色のサングラスをした、ちょっと強面の強そうなおじいさんだった。

なーんか納得いかないが、やるしかねえ!

よしこい!

レディ、
ゴー!

ず、ずずず、、ずずず、、
引きながら分かった
「私、引っ張られている・・・」

みんなで全力を出し切ったけど、
相手の方が完全に上手で負けてしまった。

おじいさん、絶対にあなたは強い。
「私は年寄りだから女性と同じですよ~」
じゃないんだよ、絶対に。

福島の農家だったじいちゃんを見ていたから、私は知っている。
おじいさんを侮ってはいけない。

あぁ、残念。悔しい。

でも、りとが誉めてくれた。
「ママ、すごい顔ですごい引っ張ってて怖かった。」

お褒めの言葉をありがとう。

そして、パパチーム。
パパチームは・・・
もう、正直絶望的に弱そうだった。

もう周りのチームが強そう過ぎて、強そう過ぎて、可愛そうになった。(笑)

消防団、警察、毎年の常勝軍団。
お相撲さんのような大きな体をした人たちも、どこからか急にぞろぞろ出てきてこの小さな公園にぎゅうぎゅうに集まる。
この人たち本当に地元の人?ってくらいの非現実的な迫力。
手袋をしっかりはめ、足袋を履き、男性の方が「本気」そのものだった。

我々パパたちは、みんなスマートだった。
服装もそこまでの準備はしていない。
正直、見た目から違う。
細い細い。(笑)

でも子どもたちに本気の姿を見せるんだ。

気合いの入ったパパたち。
カッコ良い姿に、もう、今、優勝をあげたい。

さあ、試合開始!

いつも穏やかで大人しいパパさんが、めっちゃ本気で真剣に綱を引いていた。僕、文系なんですよね、という感じのパパも必死だった。我が家のパパも顔を真っ赤にして、たまに転びながらも、最後尾を託され踏ん張っていた。

でも、
負けてしまった・・・!

いや~強かった。

こうやって、今年の綱引きは終わった。

家に持ち帰った景品は、子どもたちが勝ち取った野菜や果物だった。

あぁ、子どもたちよありがとう。

これがあるのと無いのとでは、この日の達成感がまるで違う。

本当に、感謝しかない。

そういえば、保育園のクラス単位で参加したチームは、りとのクラスだけだった。

リーダー的存在のママがいて、みんながそれに乗っかり本気になって楽しむ。

負けたけど、皆が声を揃えて言った
「また来年ですね。」

いつも思う。
このクラスにいられて、このクラスの皆様と仲良くなれて良かった。我が家はラッキーだ。

あぁ、こうやって”本気”を分かち合うことこそが、友情を深めるんだな。

やっぱりこれが、本当の運動会だ。

来年は参加して3年目になる。

ついに、足袋を履いてみたい。








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