2024年2月トヨザキ社長賞 『半暮刻』月村了衛著
〈ヤクザ、半グレ、広告代理店。(略)この三者が密閉された狭い部屋で顔を突き合わせ、国民の税金を簒奪するための手配を黙々と進めている。(略)黒と灰と白。これこそが社会を表す三原色だ〉月村了衛の新作「半暮刻」に書かれたこのくだりは、日本社会の現状を端的に言い当てているのかもしれない。
主人公は二人の青年、山科翔太と辻井海斗。翔太はシングルマザーに育児放棄され施設で育った元不良で、海斗は経産省のキャリア官僚を父にもつ有名私立大学の学生だ。二人は新宿の会員制クラブ「カタラ」に同時期に