夏と魔法と過呼吸
気づいたら受付時間ギリギリで、慌ててタクシーに飛び乗って酔った。酔った上に手足が急にこわばって、それは初めてで理解が追いつかない。停車した後に少しだけ横にならせてもらって(その間にメーターが上がった気もするけどすみませんとしか言えない……)、どうにか小銭が掴めるようになったので払ってふらふらしながら降りた。しゃがんだ。
行き先がちょうど病院だったので、ついでに聞いてみたところ過呼吸らしい。千円余分に払って過呼吸体験をした回、だった。
宅配を受け取るというミッションもあったので、寄り道はせずに大人しく、今度は歩いて帰る道中、魔法少女みたいな格好のお姉さんとすれ違った。この町にも魔法少女はいるらしい。
梅雨の晴れ間なのか普通に夏なのか分からない。適当に髪を梳かしただけの頭にじっとりと汗をかく。適当に梳かしただけで出かけられるのは楽だなと思った。
絶対にいいのも絶対にしんどいのも分かっている映画を観に行く元気が取り急ぎ欲しい。
切実な願いがくだらないものと見做されて得たくだらない魔法
/山形さなか
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