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お前の自由

新しい職場での初めての週末。おいしそうなお蕎麦屋さんに入ってみたら立ち食いで、ごった返しているお客さんは自分以外全員おじさんだった。
行列の中で食券を出すタイミングが分からなかったので店員さんに訊いて、今でもコンディションにはよるけれど、これが出来るようになったのは人生においてめちゃくちゃ大きい、と改めて思う。お蕎麦はおいしかった。


マネキンに一目惚れしてミニスカートのセットアップを買ってしまった。ハイコンテクスト悪口として受け取らないでほしいのだけれど、女子校も同然だった前の職場で数々の先輩から得た一番の学び・希望・勇気は「いくつになっても好きなものを着て良い」ということで、とはいえ自分はいつまでミニスカートを穿けるんだろうと思いつつ、無駄に店内をぐるぐるしたけれどまあこれから可愛くなればいいや。紙袋もお前の自由だと言っているし。

……GUって「自ー由ー」ってこと!?


応募作全首掲載とはいえ参加している歌集の発売される日も生活は変わりなく、なんなら寝不足で調子が悪く、みんなそうなのかもしれないと思いながら過ごした。
電車でもたれかかってきた人も、終点の駅で粋なアナウンスをする車掌さんも、駅からビルへ続く大名行列を構成するおじさんも、有休のはずなのにチャットの既読がつく上司も、みんな黙っているだけで、字書きだったり絵描きだったり、VTuberだったりするのかもしれない。資料まとめなきゃと告知しなきゃとマツキヨ寄らなきゃを同時に抱えながら、セルフレジでうっかりお箸をもらい損ねたりしているのかもしれない。

元気になったので帰りに高円寺へ。残暑が残りすぎている。高架下の飲み屋街を抜けるともう普通に夜の住宅街で、更にそぞろ書房さんはアパート?の二階なので、完全にこの街に住んでいるか住んでいる人を訪ねる人の挙動だった。違う人生みたい。
気になっていた他の歌集と一緒にレジへ持っていったところ、手持ちの千円札が一枚しかなく、万札を出したら「新しい五千円札で行きましょう」と新しい五千円札をいただいた。お釣りで。千円や一万円と比べると五千円札はやや手に入りにくいので、新しいのはたぶんこれが初でした。嬉しかったです。
行けていない喫茶店と新たに気になった歌集を残しているので、住んでいないし訪ねる家もないこの町にも、きっとまた来るような気がする。高架の本当に真下を歩けば、居酒屋とスナックとファンキーなステッカーがところ狭しと並んでいて、そういえば多く住んでいるという芸人さんも、今まさにここで飲んでいたりするのだろうかと思った。


連れてきてもらって本当に良かった初見殺しの社員食堂

もしかして地雷メイクが何よりも盛れるのではないかという疑惑

M-1に出るならネタよりコンビ名のほうを凝りそうな僕達だった

/山形さなか

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