ゆく夏くる夏
後輩、最終日も光の速さで帰っていって良かった。ぶれずに行けるところまで行ってほしい。
もう交わることはないかもしれないけれどそれぞれに続いていく人生の、その長い時間が健やかな良いものであってほしいと思う。生涯で何人にこれを願うんだろう。
これといったタスクを持たずに真っ直ぐ帰るのは久々のことで、うら寂しさがぽっかりと口を開けていた。
後輩の後ろに続いて「お世話になりました~」と先輩とおどけながら出てきた部屋、まで書いて、続く語を決めてしまうことを、そうやって締めくくりへと向かってしまうことを躊躇う。何からも逃れられはしないのに、新生活へと向けつつある気持ちもあったはずなのに。
まだ長い夏の中で明確に季節の終わりを感じていて、この先わたしが迎えるものは、じゃあ、なんなんだろう。
光らっしゃい わたし達の行ける季節を行きたい季節へしていくんだよ
/山形さなか
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