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なぜ未経験分野の家業を継ごうと思ったのか ヤマデン代表 山本一造
代表の山本は、大学卒業後に起業・留学等を経て、30歳を超えてから未経験業界に飛び込み、1887年創業 東京 神田の機械部品商社ヤマデンを承継しました。山本が今に至るまでのストーリーを、直接話してもらいました!
■ヤマデン代表取締役 山本一造 プロフィール
慶應義塾大学卒業後、ソウ・エクスペリエンスを共同創業、COO業務に従事。2012年にカリフォルニア大学サンディエゴ校に進学しMBAを取得。卒業後、ヤマデンに入社。2018年から現職。
早いうちに起業したことは、人生最良の決断だった
―生い立ちと、学生時代について教えてください。
神奈川県小田原生まれ、東京育ちです。物心ついたときに父は既にヤマデンの社長をやっていて、母は専業主婦でありピアノを弾く人でした。学校はずっと私立の所謂ぼっちゃん育ちで、部活は硬式テニスでした。
大学くらいまでは親が敷いてくれたレールに乗っかり、問題意識もなくのほほんと生きていましたが、2000年に慶應義塾大学に入学したとき、同級生から株式投資クラブの設立に誘われました。そこがひとつのターニングポイントだったと思います。
投資活動のかたわら、熱量だらけの起業家の方々と知り合い影響されました。創業直後のブイキューブやマネックス証券でアルバイトさせてもらい、リスクをとりテクノロジーとアイディアで世の中を良い方向に変えていくチェンジメーカーな生き方に憧れました。あとはヤフオクで収益を上げてました。勉強は全然...
―そして、大学卒業後に、起業されたんですね。
はい、2004年に大学を卒業して一年後、23歳のとき、投資クラブの仲間とソウ・エクスペリエンスという体験ギフトの会社を共同創業し、副社長をやっていました。
起業アイディアは、全世界のVC投資先やスタートアップを見て、自分たちにできそうなものからスクリーニングしました。ヴァージングループのリチャード・ブランソンが同じビジネスモデルをイギリスで展開していて。初期資本も少なくスタートできるし、モノから経験へのシフトというのは時代の流れだなと思い、資本金1000万円をエンジェル投資を募り、スタートしました。
No.2ポジションながら、いま思い返してみれば無知で恥ずかしい経営ばかりやっていました。でも毎日生きている実感があって、死ぬほど楽しくて、希望しかなかった。お金はなかったし、周囲からも会社勤めで経験をもっと積んでからはじめればいいのに、と反対されたけれども、早いうちに起業したことはいまでも人生最良の決断のひとつだったと思っています。
仕事観の基礎も、この頃がベースにあります。オープンでフェアで率直であること、好きなことを突き詰めるべきだということ、何をやるかより誰とやるかが大切という態度、などは、いまでも経営観の根底にあります。
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どんな歴史ある業界でも、今までの経験を活かして起業家精神は発揮できるはず
―その後留学されたんですか?
起業して7年、昔から海外留学したいという漠然とした思いが捨てきれずMBAに。先輩経営者たちからは、MBAなんて最高にナンセンスな意思決定だ、自分で経営し日々困難に立ち向かうのが最良の学びだと叱られましたが、カリフォルニアの太陽とクラフトビールの誘惑に勝てず、2年間。
―帰国後、家業に入った経緯や理由について聞かせてください
渡米したときは、卒業後の進路はノープランでした。今まで父から継いで欲しいと言われたこともなかったし、財務諸表を見たことも会社の拠点がどこにあるのかも知らなかった。
でもある日、とある人と色々なビジネスアイディアを話して、自分にはファミリービジネスがある、とヤマデンの話しになったとき、
「なんでそれをやらない?オールドエコノミーを継ぎながら変化し永続していくことが一番エキサイティングで君にしか出せない価値じゃないか」
と言われ、アントレプレナーシップの発露は色々な形があってよいのだな、とゼロイチにこだわる考えを変え始めました。
父に連絡を取り、『私よりはるかに適任の方もたくさんいらっしゃるだろうが、後継経営者として自分にやらせてもらえる可能性はあるだろうか』と話しました。そのときは、正直、業界の将来性だとか経営状況とかはまったく無知でした。取扱製品に関する知識もゼロです。
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信頼貯金がないなら、結果の出ることから取り組もう
―家業には、偉いポジションから入られたんですか?
いいえ、BtoB x 製造業領域はまったくの未経験ですし、当時の経営陣の意向もあり、現場の仕事からやらせてもらいました。業販部門の倉庫作業からはじまり、受注処理業務、製造現場経験など、モノと情報の流れを学びました。
プライドだけは高く、どうしても自分は組織にフィットしないなと思い、自分はこの会社にいない方がいいのではないか、と思ったことも何度もあります。
何人かの先輩経営者に泣き言を吐露すると、なんだこの甘えたアトツギはと、 『この先ヤマデンにあなた以上適任の経営者が入社してくれる可能性はほぼゼロだからリスクとって思い切ってやれ、結果しか自分を救ってくれない、頑張れ』とおだてられ(?)ました。
正直なところ、自分はもっとやれるはずだという驕りがあったと思います。でも社員や取引先の方と付き合い、商売の中身を数字ではなく「肌」で分かるにつれて、今の自分があるのはこの方々のお陰であること、先祖が守ってきた信頼の襷(たすき)をどうつなぎ、新しい縁をどう作り、社会へのインパクトを大きくしていくかは、自分がいちばん価値を出せる仕事だという決意ができてきました。
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―2018年に代表になられてからは何を取り組まれたのですか?
もともと信頼貯金のないボンボン後継社長ですし、大言壮語しすぎずに、1年目は結果が出やすい足元のことからはじめようと、社内業務フロー見直し、脱アナログをやりました。単なるツール導入といえばそうなのですが、オンプレのメールサーバーやFAXや稟議フローを、モバイルファーストでGSuiteやSlackに置き換えて情報流通を淀みなくすることは効果が高いと思っていました。
2年目からは制度のアップデートと、企業文化を考えはじめました。自分に合った、性格と矛盾のないスタイルのリーダーシップや労働観のある会社にしないと長続きしないと考え、昭和的な労働スタイルや、企業と従業員の関係性のアップデートが必要だと考えたので、人事評価制度の刷新、ミッションバリューの制定などなどに取り組みました。
同時に経営OSのバージョンアップをしつつ、成長戦略ほか未来のことを考えるようにしましたが、それについてはまた別途!
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機械部品流通業界には構造的な負があるが、チャンスにも溢れている
―現在のヤマデンがいる市場環境をどう捉えていますか?
機械工具・部品業界は複雑な流通構造を持っていて、チャンスがたくさんあると思っています。
製品カテゴリー・メーカー、ラインナップが掛け合わさり、天文学的な製品数となります。これらのサプライチェーン全てを数社が独占することは不可能なので、流通ルートは複雑化し、それが国内に数万社と言われる機械部品工具商の存在につながります。
同時に、部品や工具は「売って終わり」ではなく、設計変更・安定供給・品質クレーム対応といったサービスが重視されるため、最終ユーザーからのスイッチングコストは高くなります。代理店制度も根強く、中抜きが起きにくく、小規模プレイヤーが手堅く点在し、業界慣習が経済合理性に基づく適正化を阻んでいるところもあります。
全体の市場規模では、例えば間接資材といえば8兆円などと言われる市場です。ヤマデンが関わる領域でも、新興プレイヤーにより侵食される市場、淘汰が進む市場、新しい需要により生み出される市場があります。
最終ユーザーは常に調達コストの削減を求めていますが、顧客が望むよりも先に、顧客がこれから望むものを理解し提供できる存在にならなければなりません。その先はまた今度。
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山本さんありがとうございました!
次回以降は、未来に向けての展開・理念への思いなどを聞いてみたいと思います!
(作・構成:S.T)
ヤマデンの採用ページはこちら!
株式会社ヤマデン:corp.yamaden.com
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