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柿食う客『へんてこレストラン』観劇レポート

8月9日(月・祝)地元福井で開催された「柿喰う客」の公演を観劇してきました。一言でつぶやけそうになかったので、記録もかねてレポートを残しておきます。ネタバレは無いようにしますね。

公演概要

柿喰う客こどもと観る演劇プロジェクト
『へんてこレストラン』

原作:宮沢賢治「注文の多い料理店」
脚本・演出:中屋敷法仁
出演:柿喰う客

日時:2021年8月9日(月・祝)13:30開演
場所:ハートピア春江 大ホール(福井県坂井市)
主催:子どもいきいきプロジェクト へんてこレストラン実行委員会

その他詳しくは主催者ホームページからどうぞ・・・

柿喰う客って?

2006年に結成された劇団さんです。代表は演出家・劇作家の中屋敷法仁さん。公式サイトはこちら
ショッキングピンクのチームカラーが芝居の雰囲気にぴったり。

演劇を始めたころ、観劇三昧という配信サービスで配信されていた「いまさらキスシーン」を観て好きになりました。現在放送中の朝ドラ「おかえりモネ」に出演している玉置玲央さんの一人芝居です。

初めて観た時、正直「うわっ」と思いました。めちゃくちゃ濃い。濃厚。独特。シンプルでさりげない、無味無臭みたいな芝居が好きだったので、ちょっとこれは私無理か…?と思いながらもなぜだか目が離せず、見終える頃にはずっぽりとハマっていました。中毒性がすごいよ。

すごいのは中毒性だけじゃなくて、劇団としての行動力もすごい。Youtubeで公演の動画をいくつも全編配信してたり、「こどもと観る」とか「高校生のための」とか幅広い世代に向けた企画を展開してたり、さらにはこのコロナ禍で演劇に触れることが難しくなった子どもたちに向けて演劇作品を無料配信(しかも新たに収録したもの!)するためにクラファンにチャレンジしたり、他にもいろいろたくさん。劇団を運営する人間として、見習いたいところがたくさんあります。かっこいい。

へんてこレストランって?

そんな柿喰う客の看板的な(と勝手に思ってる)演目のひとつです。宮沢賢治の小説「注文の多い料理店」を原作に中屋敷さんが脚本を書いたオリジナル作品。

なんとこれ映像でまるっぽ観れます。いや太っ腹・・・

映像で観れるなら生で観なくてもいいか、と思う人もいるかもしれないですが(私も昔そう思ってた口です)、映像で観ると「これは生で観なければ!」となります。動画でこの迫力とムードを全身で体感したくなる。

観劇した今改めてこの動画見るとやっぱり生は違うなあ。映像は映像で表情とかアップで観られて楽しいし素晴らしいんだけど、なんか生々しさというか肉感というか、全然違う。
あとこの演目は2013年が初演らしいんですが、それからずーっと演じられているそうで。今まで積み重ねてきた集大成みたいなものが役者さんの身体に染み込んでいて、まあとにかく全然別物になってる。グレードアップしてるというか。今の姿を観られる魅力というか、そういうものが生の芝居にあります。

まとまりませんが、動画もおすすめだし生もおすすめということです(笑)

公演感想1:主催者さんのおもてなし

そんなことでとっても楽しみにしていた柿喰う客公演。会場に入るとロビー~受付まで手作りの設えが。写真撮らせてもらえばよかったな。駄目だったのかもしれないけれど…
演目のイメージ「レストラン」に合わせた装飾がかわいらしく、子どもはもちろん大人も「あっ」となる工夫が所々にありました。受付でチケットやアンケート回収箱が寸胴とかフライパンだったの可愛かったな。

感染症対策もばっちりでしたが、でも堅苦しく感じなかったのはこの飾りつけのおかげだなあと思いました。「消毒をお願いします」とか「前の人と距離を空けて~」とかのお願い文を、子どもにも分かりやすく平仮名で、かつ「注文の多い料理店」の物語のイメージに合わせて、「ここで靴をお脱ぎください」的な「注文」スタイル。かわいい。

ゆっくり立ち止まって見たかったんですが、後ろから来るお客さんを詰まらせてしまうのも申し訳ないのでさらっと通り過ぎました。気使ってもた。主催者さんの方で記録写真とかアップしてもらえるといいなあ。

あとスタッフの方の衣装が良かったですね。レストランのお話なのでウェイターさんとかメイドさんとか。柿喰う客のお芝居って衣装に統一感と個性があって、今回のへんてこレストランはスーツとメイド服が印象的なんですが、このイメージをしっかり反映した感じ。スタッフさんの統一感あったけど、まさか揃いで購入したのかな。私物でそろえたなら上手く準備したなあ。

公演会場に入るまでに、主催者の方のおもてなしの気持ちとか、柿喰う客を愛する気持ちを感じました。準備されるの大変だっただろうなあ。でも楽しそう。当日バタつくこともなく、トラブルもなく(客には感じさせず)、とても気持ちよく観劇することができました。

ちなみにこの公演、コロナの影響で過去に何回か延期になっています。そのたびにチケット払い戻しとか手続きとか大変だっただろうなと思うし、スタッフのみなさんのお気持ちを考えると胸が痛かった。だからそういう意味でも今回開催していただけたことがとても嬉しかったです。本当にお疲れ様でした。

公演感想2:子どもたち楽しんでたなあ

「こどもと観る演劇プロジェクト」ということで、会場には子どもたちがたくさん。

ただ、このコロナ禍だからかな。公演が始まる前は思ってたより静かでした。みんな大人しくしてて偉いなあと思いつつ、なんか寂しくもなった。感染症対策を気にかけて、動き回らないようにしたり大きな声でしゃべらないようにしたり、保護者の方も気を付けてるだろうし、子どもたちの方も慣れてきてるんじゃないかなあ。お隣の席の方は絵本を持って来られていて、開演までお子さんが飽きないように小さな声で読み聞かせしてあげていました。

どうなんだろう。コロナ前でもこういうものだったのかもしれませんが、今となってはみんなの一致団結感が頼もしくもあり、早くこんなこと気にしなくていいようになればいいのにって切なく思う部分もあり。

そんな背景もあって、公演が始まると、少しずつ会場の空気がほぐれていくのを感じました。へんてこレストラン、本当に子どもも大人も楽しめる演目で。言葉のリズムとかメロディとか、役者さんの躍動的な動きとか、ストーリーも分かりやすいし、結構笑えるところ沢山あって。
公演が進むにつれて徐々に会場の笑い声も大きくなっていって、子どもたちの笑い声もたくさん聞こえて。この言葉は子どもに伝わらないかも?と思うところもあったけど、それでも笑いが起きてた。あーこれが芝居の力だなあって思いました。

子どもたちの中には初めてお芝居を観た子もたくさんいたと思います。それが柿喰う客だったなんてめちゃくちゃ質の高い初体験だし、そういう経験を沢山させてあげられる大人になりたいなあ。と意識が高まったのでした。

公演感想3:距離の近さがうれしい

開演直前、役者の方がふらふらっと舞台上に現れて、「こんにちは~」と声をかけてくれたり(ちゃんとステージと客席の間は2m以上空いてる)、手を振ってくれたり。動画で見てたのである程度分かっていたものの、あ、こんな感じなんだ~と感動。一緒に母親(50代)を連れて来てたんですが、観劇経験の少ない彼女も感動したみたい。こういう感じで始まるのもあるんだね、と喜んでいました。

なんだか、役者さんがそのままの感じで歩いているところを見られると安心します。親近感が湧く。この効果は使いようで、芝居の内容とか劇団の目指すところによってはやらない方がいい場合もあると思います。柿喰う客の場合はそれが成功していて、これから何が始まるんだろうというワクワク感が沸いたり、緊張をほぐしたりとか。地方公演なので観劇自体、もしくは柿喰う客の公演自体に慣れていない人も多いと考えると、この導入のおかげで場の空気が出来たともいえるなあ。
このあたりは柿喰う客さん、考え方とか方針をしっかり持ってるんだろうなあ。私ももっと勉強しよう。

公演終了後には演出の中屋敷さんが登場。役者としてさっきまで演じていた永島さんも再登場してくれて、アフタートークなるものが開催されました。柿喰う客ではいつもやっている企画だそう。

これに関しては柿喰う客のファンとか、演劇が好きな大人の方はとても嬉しかったんじゃないかなあ。私も「え!そんなサービスしてもらっていいの!」とびっくりしたし、一字一句聞き逃さないように集中してました(笑)

内容については多く語れませんがとても充実していました。子どもたち飽きるか?と思ったけど、みんなきちんと聞いていた印象。すごいな。
役者の永島さんが福井の印象を聞かれて、客席からの歓迎ムードというか、一体感みたいなものを喜んでくれていたのが嬉しかったです。これは主催者さんの努力の結果だなあ。

きっとコロナで観光もしてもらえなかったんだと思いますが、落ち着いたらまた来てほしいな。福井のごはんは美味しいよって伝えたい。

まとめ

公演内容はもちろんアフタートークなどの企画ものも、主催者さんのおもてなしも、どれも素敵で満足できました。まじめさも大事だし、遊び心も大事だなと勉強になりました。

柿喰う客のみなさん、厳しい環境の中、福井にお越しくださってありがとうございました。
子どもいきいきプロジェクトのみなさん、本当にお疲れ様でした。これからも応援しています。

久しぶりの観劇、楽しかったなあ。

おしまい。

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