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天狗の供物と夜叉の褥 11/14

研究室

 一面の白い砂。
 これが夜叉の褥、なの?。直径何メートルぐらいだろう。もっと広いと思っていた。
 浅く白い皿のような場所の中央に、その半分ほどを占める円形の白く低い建造物があった。建物はうっすら灰色をしている。白が汚れたような薄い灰色だ。
 夜叉の褥。初めて見る場所だ。既視感がまるでないのがかえって不思議だった。いつも心の中にあって、よく知っている場所のように思っていたが、実際に見るのは初めてなのだ。
 もっとこう、なんていうか。というか既視感もなにも、イメージがぼんやりしすぎだ。
 もっと見るからに怖ろしげな場所だと思っていたんだ。ただただ怖ろしいだけの場所。
 一面の白い砂。
 けれど陽射しが反射して眼を射ることはない。砂が光を吸収しているみたいだ。
 ゾワゾワと恐怖が這い上ってくる。
 わたしは恭輔の袖を掴もうとした。だけどここにはわたし以外誰もいない。
──大丈夫か? 真希、僕の身体はもうないかもしれない。それをわかっていて夜叉の褥に立ち入るんだ。きみは無理しなくていい。僕は……。
「無理するに決まってるでしょ。無理した先にあるのが絶望でも、恭輔さんと一緒ならなにか道が見えると思う」
──きみのその根性に出会うときはいつもワクワクするよ。初めて出会ったときも砂漠をいくキャラバンの強靭さを感じたんだ。
「恭輔さんはわたしを勘違いしてる。わたしに強靭さなんてない」
 返事なし。

 白い砂地。
 砂の一粒一粒が、天狗が夜叉に献上した人たちが粒化した砂なのかもしれない。その人たちの最後の思いが想像できない。恐怖だけでなければいいけど。
 でもその上を行く。その上を歩く。ごめんなさい。
──泣くなよ、真希。一気に研究所へ行く。
 恭輔さんが走る。わたしの身体は恭輔さんの意志に従っている。
 視野の中に粒化しつつある研究員や作業員たちの身体が何体も入ってくる。
 動いている人はいない。
 建物は沈むのに、人は沈まず白い砂上に浮かぶように横たわっている。衣類と靴だけになってしまった人もいる。
 時計がポツンと残っている。そのあたりに手があり手首があったんだ。
 血を流すことなくはらはらと極々小さい粒になって、崩壊して消えていったんだ。
 半分になった頭蓋骨からも、シャツの袖からのぞく手首からも、ズボンから出た足からも、淡々と粒化していく身体。
 消えていこうとしている指に指輪がキラリと光り、消えた頭のあたりにはピアスが残っていたりする。ごついリングピアス が一つ。
 血も白く粒化するのだろうか、赤い粒を見つけることはできない。
 血を見なくていられるから、消えていく身体を見られる。血が見えないから現実感が薄く、寂寥感に押し潰されそうになる。

 恭輔さんはわたしの足の最長ストライドで白い砂場を行く。たぶん五秒ほどで研究室に着いた。明日はきっと股関節が痛くなる。
──ドアが沈んでしまった。だが完全に埋没するのにはまだ二時間以上かかるだろう。
 それより僕たちの粒化の始まりまでの余裕がわからない。冷静に、だけど焦ろう。
 
 恭輔さんは両手を屋上に置くと、ひょいっと上に上がった。私にはできない動作だ。
 わたしの身体を使っているからといっても、恭輔さんなみに筋力が増強するわけじゃない。なのにこんなことができるのは、つまりわたしは身体の使い方が下手くそということになる。

 ハッチはカポンと間の抜けた音を出しながら開いた。そこから垂直に梯子が降りている。
 足元は明るく、室内もほどよい明るさが保たれていた。
 この建物の北側から聞こえる稼動音は自家発電の音だろうと勝手に辻褄を合わせる。発電機はまだ白い砂に埋れていないのだろうか。夜叉の褥の外、森の中に設置してあるのだろうか。視界の中に見えない。
 話し声は聞こえない。人気を感じない。聞こえるのは機械の作動音だけだ。
 降りるのは恭輔さんなので、積極的に身を委ねる。
 ものすごく嫌な臭いがふわりと漂ってきた。えずきそうになったが我慢できた。
 恭輔さんがうまくコントロールしてくれたのだろう。わたしなら吐いていた。
 腐臭なんて野菜を腐れせたときぐらいにしか嗅いだことはないけれど、それとは違う。玉ねぎを腐らせたときは、オエッとなったけど吐くまではいかなかった。
 この臭い、嗅覚が全力で拒否する臭い。
 金属的なというか、化学薬品的なというか、懐かしくは無いけど、記憶の奥のほうにあるアセチレンの臭いを不快にしたような臭い。記憶にあるアセチレンはそれほど苦手な臭いじゃなかったけど。
──アセチレンガスはほぼ無臭だよ。可燃性ガスだから安全のために臭いがつけてあることがある。ここには置いてないはずだ。この臭いは別物だよ。
「どんな別物?」
 わたしが首を傾げている。恭輔さんが傾げているのだ。
──降りたらすみっこで吐いていいよ。
「口を濯げる水はありそう?」
──ペットボトルの水はあるようだけど、口をつけないほうがいいだろうね。
 チリチリと食道を逆流してくる酸っぱいものを飲み込み飲み込み押さえつけ続ける。ちょっとでも気を抜くとダム決壊のように嘔吐してしまいそうだ。
 恭輔さんは今、わたしの嘔吐をコントロールする余裕がなくなっているのだろう。

 研究室? 疑問符が二つ三つ並ぶほど機器が少ない。
 パソコンもモニターもCPUも頼りなくフツーの家庭なみだ。ラップトップ三台のうち一台は恭輔さんのものだと思う。
──そのパソコンはあきらめるよ。持ち帰る気になれない。データのほとんどはクラウドにあるから大丈夫だ。ほら、サーバーはでかいぞ。
「あれがサーバー?」
 返事なし。
 円形だったラボの内側は円ではなく、満月手前の十日月ぐらいの形だ。
 まだ準備段階のように物が少ない研究室に、無造作にキャスターつきのテーブルと椅子が置いてある。空間の無駄遣いだ。
 視線を床に移したとき、「ひっ」と声を出してしまった。
 私が悲鳴をあげるのを恭輔さんが止めた。おかげで息ができないほど咳き込み、涙ぐんだけど、パニックを起こさないでいられた。
 人が二人、ドアのそばで倒れている。一人はドアに寄り添うように、もう一人はそのすぐ横に倒れている。
 ドアに寄り添っている人は、顔の前部が半分ほど粒化しているようで、左手の手首から先が無くなっている。
 もう一人は身体に欠損なく横たわっている……ように見える。
 二人のまわりに白い砂が溜まっていた。
──僕を殴って失神させたやつらだ。真希、誰にも触るな。中のものにはできるだけ触るんじゃない。
「うん」
 異様すぎて恐怖心は湧いてこないが気味の悪さが半端ない。
──僕がいない。僕がはどこだろう。昨日は外の砂粒でドアを閉めにくいほど部屋が沈んでいたから、あの男たちはわざわざ僕のボディを放り出すためにドアを開けないだろう。わざわざ僕を担いでハッチを開けることも考えづらい。
 胸がドキドキしはじめた。心拍数を上げたのは恭輔さんだ。不安が勝ち始めている。
──そうだよ。僕はいますごく怖い。
「恭輔さんの身体が部屋の中なら大丈夫。探そうよ。あそこの二つのドアを開けてみようよ」
──ドアの位置からすると、向かって右のドアがたしか医務室だ。そっちから開けよう。
 けれど医務室のドアが開かない。
 ノブをガチャガチャ動かしてみる。ノブの動き具合で鍵は掛かってなさそうだ。建物の沈下でドアが歪んだのかもしれない。
「誰?」女性の声だ。
「わたしは黒野真希と言います。どなたですか?」
 数秒の沈黙。
「富士崎まどかです。私一人でドアを開けられなかったの。真希さん、ドアを外から引っ張って。私、こちらから押すわ」
 言うことを聞かないドアをわたしは力いっぱい引いた。ドアの向こうでまどかさんがドアを押したり、体当たりしたりする音が聞こえる。
 ギシリとドアが開いた。いち、にの、そーれ。二人でドアを全開した。
 息を切らしながらまどかさんが立っていた。

 まどかさんとは七年前、菅野さんが祖母と首藤のじいさま制止を振りきって、天狗山へ入ってしまったとき以来の無沙汰だけれど、変わりない様子だ。
 わたしの両手は真っ赤になって少し擦りむけている。
「田中恭輔さんはベッドにいるわ。何度も呼びかけてるんだけど眼を覚まさないの」
「恭輔さんの意識は今わたしの中にあるんです」
 まどかさんの見開いた眼がわたしを凝視した。それでもうなずいてくれた。
 ベッドが三台並んでいる。左のベッドに女性が上半身だけベッドにのせて、うつ伏せに倒れている。
 真ん中のベッドには男性が腰かけていて、わたしに会釈した。左鎖骨の下あたりにナイフが刺さっていて、出血した血がダンガリーのシャツを赤黒く染めている。ちらちらとベッドにうつ伏せなっている女性を見ている。警戒しているようだ。
「兄なの。富士崎塔矢。兄が山守曽乃です」
「あの、ナイフは……えっ? 山守?」
「詳しい話は後にしましょう。いまはその田中恭輔さんに集中してください。真希さんの中の恭輔さんを、恭輔さんの身体に戻すんですよね」
 右のベッドに恭輔さんが胎児のように丸くなって壁を背にして寝ている。
「恭輔さん」
 わたしは恭輔さんの首に指をあてて脈を探した。弱いが規則的な脈拍を数えることができる。
「恭輔さん、生きてる。よかった」
 泣かないように歯を食いしばった。問題はこれからだ。
──自分の身体への戻り方がわからない。どうしたらいいんだろう。どうしたら戻れるんだ?
 こんなにうろたえ、思考停止した恭輔さんは初めてだ。
 あの手この手を繰り出すいつものクールな軽さが消えている。怖れが恭輔さんをがんじがらめにしているみたいだ。
──自分が丸ごと粒子に分解されるのが怖い。自分という意識はどうなる。
 転送ゲームのように、自分という意識を持ちながら、未知の場所へ転送されるとしたら、意識はいずれ消滅できるのだろうか。ひょっとして転送先で僕という意識は存在し続けるのだろうか。だとしたら怖ろしいよ。
 それとも僕という意識が、何億あるいは何千億、もしかしたら何兆もの意識の粒に宿ったまま漂うのだろうか。
 地球を、月を、太陽系を、遥かかなたの宇宙を、あるいは異次元を、一粒の孤独な「僕」となって永遠に漂うのだろうか。狂うこともできずに。
 怖い。
「恭輔さん、そのときはわたしももいっしょに分解されて粒子になって、恭輔さんの粒子にくっついて何処へでもいっしょに転送されるから。一粒じゃなくて、二粒で一粒の粒子になろうよ。くっついてれば、どこへ転送されても怖くないよ」
 わたしの独り言を聞いてきょとんとしたまどかさんと目が合う。
 わたしは無理して微笑んだ。大丈夫、大丈夫。自分に言い聞かせる。
 靴を脱ごうとしたら『ここでは靴は脱ぐな。絶対に履いてろ』と恭輔さんの声が頭蓋内に響く。恭輔さんのボディもスニーカーを履いたままだ。
 わたしは靴を履いたままベッドに上がった。
 とはいうものの、どうしたらいいんだろう。わたしの中の恭輔さんを恭輔さんの身体に移すなんて。
 一所懸命にイメージを思い浮かべていく。移す、移動させる、動かすとは……。
 形になってきたイメージのままに恭輔さんを仰臥させ、膝を挟んで膝をついた。そのままわたしの身体をうつ伏せに重ねていく。
 恭輔さんの指とわたしの指を組み、腕を重ねる。
 二十センチほど足りないわたしの身長では、足も腕も胴も恭輔さんとサイズが合わないけれど、そこはなんとか胸と胸、額と額をくっつけて、最後に唇を重ねて深く舌を挿し入れた。
 彼の意識がわたしの舌をたどって、彼のなかへ戻れるように。戻れますように。祈り、集中する。
 恭輔さんの指も胸も口腔もほのかに暖かく、わたしは「大丈夫、いける!」と強く思った。
 目を閉じ、わたしの中の恭輔さんのすべてが、恭輔さんの足に、胴に、手に、腕に、頭に、脳内に戻っていくイメージを組み立てていった。

 一瞬、意識を無くしていたのかもしれない。
 恭輔さんの舌が私の舌にからんできて、ハッと我に返った。
 けれどわたしの中の恭輔さんを、すべて恭輔さんの身体へ返すという集中を解いてはならないと意識を固く保持した。
 組んだ指が解かれ、恭輔さんの両腕が私の背中に回された。恭輔さんが私を抱いたまま上半身を起こし、からんだ舌が離れる。
「真希、ありがとう」
 わたしはかすかな恭輔さんの声を聞いた。ほっとして一瞬意識が遠くなった。
「しっかりしてくれ、真希」
 しっかりする……しっかりしろ、わたし!
「恭輔さん、動けそう?」
「とにかくここから出なくては。僕が動けなかったら、真希におぶってもらうよ」
 ハハ……恭輔さんが弱々しく笑う。
「僕が真希の中に入ってからまだ二時間たってないだろ。いくら二四時間以上意識を失くしていたとしても、筋肉は落ちてないよ。だが、もしかしたら粒化が始まってしまったところがあるのかもしれない。想像するのも怖いけど。
 もしそうだったら、ここから脱出したら粒化が止まるだろうか。本当に粒化してたら、その部分が復元してくるのかどうか。何もわからないから怖くてしかたがないよ」
「大丈夫です。粒化は始まってません」まどかさんが断言した。
「根拠としては田中さんはほとんど室内にいましたし、ほとんど白い粒に触れていませんでしたから。根拠のない根拠で頼りないけど、大丈夫です」
 恭輔さんは無言でしっかりうなずいた。
「まずはベッドを降りて外へ出よう。夜叉の褥から出よう」
 まずわたしからベッドを降りて、ベッドから降りる恭輔さんを支えた。
「支えてるから、わたしに体重をかけて」

『連れてって……』

 かすかな声の方に向く。左のベッドにうつ伏せになっていた女性が顔だけをこちらに向けている。無表情な顔がのっぺりと白い。鼻の先が消えている。頬から顎にかけて、うっすらと煙が漂い、ごくごく細かい砂が煙のように漂いながら落ちている。
『置いていかないで……』
 動かない口から言葉が漏れている。
「あっ」菅野史栄さん。驚きすぎたのか声が出せない。
「菅野さんです。わたしを探しに来てくれた兄を刺したんです」
「まどかと田中さんを医務室のベッドへ寝かせていたら、菅野が急に襲いかかってきたんですよ。異様に興奮してましたね。
 さいわい果物ナイフでしたので今のところは出血も止まっているようですし、僕の意識ははっきりしてます。自分で言うのもなんですが、僕は正気だと思います。
 菅野はすごい力でしたね。僕も跳ね除けるのが精一杯でした」
「あの時の菅野さんは異様でした。私、狐憑きだと思っちゃって、兄を助けるどころか、兄の後ろに隠れちゃいましたから」
「おかげで僕としては動きやすかったですよ。へたに庇われたらまどかが刺されかれない状況でした。もしかしたら菅野は、僕ではなくまどかを刺すつもりだったかもしれません。
 あの時もう菅野の脳は粒化がはじまっていたような気がします。脳の粒化が始まっていて、正気が無くなっていたんじゃないかと思います」
「私もそう思いました。菅野さんは外にいることが多かった。白砂を採取したり、手にとってさらさら落としてみたり。無頓着すぎました」
 ふっと菅野さんを近くで見たいと思った。
「近づかないほうがいい。無駄だよ、ここまで進んだらもう助けられない。彼女の顔は粒化がはじまっている。あの声はただ本能的な生存欲求が声帯を震わせただけという感じでしょう」
「菅野さんは自分を過信していました。なぜか菅野さんだけは粒化しないと思っていたんです。私も面倒になるので何も言いませんでした。
 今は夜叉の褥から出ることだけを考えましょう。急ぎましょう」
「行こう、真希」
 恭輔さんの手がわたしの肩にのっている。わたしは彼の動きに添わせて医務室を出た。
 もう一つのドアの前を通るとき、中に誰かいるんじゃないかと気になった。
「トイレです。開けないほうがいい。この建物が沈んだ分だけ、中に砂が入ってきてるかもしれない。
 トイレの下は砂地です。そのまま夜叉の褥なんです。
 有機物は粒化するからと、菅野さんは穴の上に便器を置いただけにした。畏れというものを知らない人です。
 育ちかたの違いなのかな。私は怖ろしくて夜叉の褥へ直接用を足すなんてできません」
 
 わたしは恭輔さんの身体に腕を回して支え、ハッチの梯子へたどり行くことだけを考えた。歩いて数十歩なのに、遠い。
 気が緩むと、医務室の菅野さんやドアの前で倒れている二人に気をとられてしまう。
『連れてって』
 たくさんの声が空耳のように鼓膜にまとわりついてくるみたいだ。
 ほんとうに呼ばれているのか確かめようと首を動かすと、「真希、集中しててくれ。気を散らすな」と恭輔さんがかすれ声で言う。
 幻聴だと思いたい。

 ハッチの下に着いた。
 しんがりを主張した富士崎塔矢さんを強引に先頭にする。その次に恭輔さんを外へ押し出し、わたしが外へでる。
 まどかさんは頑として一番最後を譲らなかった。

 早よ、早よ。早よ山を降りんと、つかまってしまう。早よ、早よ、出発しよ。山のぐるりの道はやめて、まっすぐ役所の前にいく新道を走りなさいよ。

 祖母の声が聞こえてしまう。ほんとうに幻聴だろうか。
 塔矢さんは、「ナイフを抜くのが怖くてね。ほんとうは血管が切れていて、抜いたら噴水のように血が吹き上がるんじゃないかと思ってね。手当ては医者に頼むよ」と言いながらSUVに乗り込んだ。
「菅野さんは、田中さんを昨日の午前二時ごろここへ連れてきた、と言ってました。わたしは今日の未明に研究室へ入りました。
 だから大丈夫です。恭輔さんはこの建物から一歩も外へ出ていないです。粒化しません」
 まどかさんがもう一度念を押すように、強く言った。
「はい」
 わたしはまどかさんと軽くハグした。
 まどかさんはクリーム色の車に乗り、わたしの車の助手席に恭輔さんが乗った。助手席に置いたままだったバッグは後部座席に放りこまれた。
 スマホに着信しているようだけど、出られない。恭輔さんも出る気がなさそうだ。着信履歴の数を考えるとため息がでる。
 塔矢さんとまどかさんは「このまま医者へ行く」と、左折して役場の方へ向かう。診療所があるし、地域医療センターがある。
 わたしたちは万歳へ向かう。
 アスファルトの走行感がひどく嬉しい。見慣れた田舎道が流れていく。  続く  

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