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生きろ生きねば、そしてどう生きるか

「君たちはどう生きるか」
観に行ってしまいました。

楽しみというより、
とんでもなく困惑してました。

座席予約した数日後に
本作がゴールデングローブ賞を 
獲ったからです。

この映画は
本当はだいぶあと、つまり宮崎駿さんが
亡くなってから観るつもりでいました。

自分のなかでは2013年の「風立ちぬ」で
完全に終わっていたからです。
実際引退宣言もして、
ジブリは一度解散までしてますからね。

あと、正直に申し上げると
四半世紀にわたる駿さんの
辞める辞める詐欺以上に
「生きる生きるメッセージ」が
かなりきつかったんです。

とくに漫画版ナウシカの
最終話知ってる人は
新作のタイトルがドンと出た時
「またかよ!」と思った人多いと思う。

駿さんの
「君たちはどう生きるか」は
30年前描いたナウシカで
自問自答に近いやり取りやったのち
すでにはっきりした答えは出ていて
その後の映画でも、今作でも
やっぱりすべてナウシカのラストに
帰結してるんです。

生きろって言われて
励まされたこともあったけど
生きねばねばねばを突きつけられて
もう嫌だよと思うことも多かった。

じじいの説教は
もう聞きたくない
ジブリはすでにオワコンだ
これ以上同じもん作る気なら
自分はもう観ない
それで昨年は、避けました。

プロフェッショナル仕事の流儀も
録りためたまんまで
正月まで観てなかった。
暇だし観て容量減らすかと、
それだけの動機で観た。

駿じいちゃんは
まったくのいつも通りだった。
机で貧乏ゆすりしてる後ろ姿。

めんどくさそうな話思いついて
脚本書かないで絵コンテだけで
話進める手法だから、手間は倍。
ああめんどくさい、どうすりゃいいんだ
ぶつくさ言いながら
大量の紙にうずもれて
鉛筆と消しゴムかけて
あーだこーだ葛藤していた。

その後ろ姿見て、はじめて
「観る」ってなりました。

またアニメで生きろ説法とかれて
劇場返されたなら、どうしてくれよう。

しかし相手は世界のアニメ監督、
創作者としてはトップに立つ爺さん
一度退いて10年後に本線に戻ってきた
バケモノだ。
…どうしよう。

複雑な気持ちで観に行きました。

ネタバレパンフ

そして、観たあと。
…10年前引退してたら
多分絶対許してなかった。

良かったです、めちゃくちゃ。
説教くさくなく、胸焼け感もなく
純粋なファンタジー作品になってた。

一回組織を解体していて
制作体制もかなりシンプルにしたと
聞いてましたが
それがうまい感じに働いていた。

熱風(ghibli)ばっかりだった環境に
新しい風が入ったんだろうな。

胸焼けしなかったと言ったのは
アニメーションの点でもです。

千とハウルあたりが全盛期で
予算や後援や関わってた人数も多くて
豪勢に動かしたり塗ったりを
やってましたよね。

やたらぬるぬる動いていて
描き込みも脂ギットリって感じで
豪華なアニメだなと思う反面

…ちょっとやり過ぎじゃないか?
なんかきしょくなってないか?
みたいな違和感があったんですが

今回、その余計な脂を
うまく抜いていた。
なので観やすかったです。

主人公が何考えてるかわかんなくて
どっか突き放して冷めてるのも
かなり良かった。
純粋で、曇りなきまなこじゃなくて
珍しく心の方に影がありますね。
あんま見たことなかった。
駿少年て実際は鬱屈してたんだなと
思ったりね。

生きろ生きろって
作品中うるさくなかったのは
主人公が内的な子だったのも
あったのがかなりでかい。

ラストもぶん投げだったり
モヤっとする感じではなく
自然にきれいに着地していた。

そしてタイトルの
「君たちはどう生きるか」
の話になりますが。

あんまり話のベースになってないですが
戦前に刊行された書籍ですね。

君はどう生きるんだい

生前、やなせたかしさんが
インタビューでちょろっと言ってた
なかにもこの本の問いがありました。

漫画家目指す人に、
「君はどう生きるんだい」と聞く。
だから人生で書くんだよねと。

漫画家問わず
何かを創る人みなさんに
共通する話だと思います。

宮崎駿さんが引退するって言って
結局また復活しちゃうのは
人生に「創ること」が
もう組み込まれちゃってるから
創ることが生きることと直結してるから。
もう、趣味道楽の域じゃないんですよね。

こういう人は
いくらその時しんどくても
もうやめるって宣言しても
3日後には何食わぬ顔で
描いちゃうし作っちゃう。
共感はできます。
あるあるですよね。

君たちはどう生きるか?
その問いに宮崎駿監督は
「俺もわかんない。でももうちょいやる」
ラストにそういう答えを出してました。
そう受け取りました。

色々あるけど、とりあえず
最期まで現役でいる道は選んだ

そんな答えなんじゃないかな。
私はそれでいいと思います。
鉛筆握ったまま最後でも
いいじゃないすか。
美しく退いて終わらなくたって
いいんすよ。

漫画のナウシカも最後に言ってたじゃん。
『我々は血を吐きながら飛ぶ鳥だ』
だから今回も鳥いっぱい出してたじゃん。

インコ、ペリカン、そしてアオサギ。

アオサギは都下に元ネタがいる

最後に、アオサギの話。
キャラクターとしては
鈴木敏夫さんがモデルだそうですが
そもそもの元ネタは
たぶんあいつだと思ってます。

都下のとある場所に生息してる
大きな野生のアオサギ。
そっくりなんで、場所的にも確定だと
思います。写真は出しませんが。

いつも通り、構想段階で
歩いてた時に遭遇したんだろうな。
 

10年経過して
自分もいろいろと変化があり
あちらにも変化があり
立場こそ天と地下の差ですが

今回はほんの少しだけ近い
創作者目線、そして立場で
観ることができたのは
感慨深かったです。

ほんとに、近いんだか遠いんだか。
因果なもんです。

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