クラウドvsオンプレミス AIシステム編
前回、クラウドとオンプレミスの選択肢を見てきましたが、AIシステムにおいては、通常のアプリケーションシステムとは異なる観点が追加で必要となります。
AIシステム特有の考慮点にフォーカスを当て直して、クラウドベースとオンプレミスを改めて比較します。ここでは、AIのモデルトレーニングと推論、データのリアルタイム処理という観点から、それぞれの特徴を明確にします。
モデルトレーニングと推論
クラウドベースのAI
リソースアクセス
大規模なデータセットを扱うAIモデルのトレーニングには、高度な計算リソースが必要です。クラウド環境では、GPUやTPUなどの専門ハードウェアへのアクセスが容易であり、これが計算集約型のトレーニングタスクに有効です。
スケーラビリティ
AIのモデル開発は試行錯誤のプロセスであるため、計算リソースの需要が変動します。クラウドサービスはこれに対応するためのリソースの迅速なスケーリングを可能にします。
オンプレミスのAI
データソブリンティ
データ保護法規の厳しい環境やプライバシーが重視される場合、データを内部に保持することでコンプライアンスを容易に遵守できます。
※ソブリンティとは、主権や自己決定権を意味する言葉で、簡単に言えば「データを明確に管理下に置いてある状態」を指します。
カスタマイズ
AIアプリケーションは時折、特殊なハードウェアやソフトウェアの配置を必要とします。オンプレミスでは、これらの環境を完全にコントロールし、カスタマイズすることが可能です。
データ処理とリアルタイム性
クラウドベースのAI
データ伝送
リアルタイム性が要求されるAIアプリケーションにおいては、データをクラウドに送信する時間が遅延の原因となり得ます。特に、ストリーミングデータやオンライン学習を行うAIシステムにとっては重要な問題です。
オンプレミスのAI
リアルタイム処理
ネットワーク遅延を避けるため、リアルタイムでデータを処理する必要があるAIシステムにはオンプレミスが適しています。特に、自動運転車や製造業の品質検査など、即時性が求められる場面で有利です。
まとめ
見てきた通り、このようにAIシステムにおけるクラウドとオンプレミスの選択は、モデルの複雑性、データのプライバシー、リアルタイム処理の必要性に大きく依存します。
例えば長所を組み合わせて、実証実験はクラウドで行い、本番はオンプレミスで稼働させるなど、柔軟に選択することもありえます。各企業はこれらの要因を慎重に評価し、最適な選択を行う必要があります。
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