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【表現辞典】霊石典/名作家の文章〈10〉岸田國士『巴里素描』(全文無料)

霊石典

〈おしらせ・索引〉

 この記事は、私が編集している『霊石典』の派生記事です。名作家の作品の中から、『霊石典』収録の言葉が使われた印象的な文章を紹介します。言葉に興味を持つきっかけとして、あるいは、言葉をさらに深く理解する参考として、ぜひ本編の記事とあわせてお読みください。

岸田國士『巴里素描』(青空文庫)

 朝から噴水を見てゐる。
 玩具のヨットが波を切る。
 母親の若い日傘が眩しい。

 眩しいのは太陽の光のはずですが、日傘を眩しいと表現しています。日傘を持つ女性の立ち姿に、ほれぼれするような美しさや神々しさがあったのかもしれません。
 もうひとつ見逃せないのが、「若い」が「母親」ではなく「日傘」に向けられているところです。一瞬、意味が分かりませんが、それがかえって幻想的で、くらっとするようです。これは、[【文芸センス】掘辰雄『鳥料理』④夢と詩]でお話しした、言葉と言葉の結びつきの解体といえます。
 素描という名のとおり、見たものを淡々と描いているだけの文章ですが、言葉の使い方が天才的で、公園の一場面が強烈に印象に残ります。

 この記事では、[まぶしい(眩しい)]が使われた文章を紹介しました。

 ぜひ、本編の記事もお読みください。


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ことばには、目には見えない力が宿っています。霊石典では、言葉の力を掘り起こし、その力を文章表現に活かすことを目指しています。

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ことばには、目には見えない力が宿っています。霊石典では、ひとつの記事でひとつの語句を取り上げ、意味や印象、類語や用例などを探るとともに、そ…

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