【表現辞典】霊石典/名作家の文章〈4〉長沢佑『レポーター』(全文無料)
霊石典
この記事は、私が編集している『霊石典』の派生記事です。名作家の作品の中から、『霊石典』収録の言葉が使われた印象的な文章を紹介します。言葉に興味を持つきっかけとして、あるいは、言葉をさらに深く理解する参考として、ぜひ本編の記事とあわせてお読みください。
長沢佑『レポーター』(青空文庫)
空っ風は山を吹き降りてくる乾いた風で、この文章では、「硝子屑のような」と「鋭い」のふたつで修飾されています。寒い地域に吹く冷風には、身を切るような厳しさがありますが、それは生物の活動を許さない清浄さとも言えます。まさに無機質で美しく、「硝子屑」という喩えがぴったりです。
長沢佑は社会主義活動家なのですが、文芸活動も精力的に行った人で、この作品は活動仲間とのやりとりを描いたものです。当時、社会主義者にたいする世間や警察の目は厳しかったはずで、長沢佑は、そんな社会からの苛烈な弾圧を、空っ風と重ねているのです。この作品からは、若者の汚れなき崇高な信念を感じますが、それとともに、あえて社会の逆風を生きることへの自己陶酔も感じられます。長沢佑は23歳で死去しました。
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この記事では、[するどい(鋭い)]が使われた文章を紹介しました。
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