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【表現辞典】霊石典[むすぶ(結ぶ)](全文無料)

霊石典

〈おしらせ・索引〉

 今回は[むすぶ(結ぶ)]です。

 [結ぶ]は霊石典の紹介もかねて、全文を無料で公開します。気に入った方は、ぜひ霊石典をご購入ください。この夏の間に言葉の勉強をして、創作の秋に備えましょう。

【未購入の方へ】
 霊石典とは、言葉の持つ力を掘り起こし、文章表現に活かすための辞典です。マガジンを有料販売していますので、一度購入すれば全記事が読めます。みなさまの文章に言葉の力を活かしていただくため、順次、記事を追加してまいります。見本記事(唱える)もありますので、試しにお読みのうえ、ぜひご購入ください。

むすぶ(結ぶ)

用例

○紐を結ぶ
○東西を結ぶ
○約束が結ばれる
○結像、結露、結果

○江戸川乱歩『人間豹』(青空文庫)

 神谷がそう言葉を結ぶと、明智は何かしら心配らしい顔をして

意味

○複数のものをひとつに束ね、離ればなれにならないようにする。そのようにして、あたらしくひとつのものを生み出す。

○比喩的に、小さなものが集まり、形になること。「努力が実を結ぶ」など。

関連語

○[結う][結わく][結わえる]は、「しばってまとめる」という意味に限定されている。「実を結ぶ」を「実を結う」とは言わない。

○[繋ぐ]は「二点を結ぶ」という意味では共通だが、「束にする」「ひとまとめにする」という意味はない。

表現についての考察

 [結ぶ]の「むす」は息子や娘の「むす」と同源と言われています。「こけむす」からも分かるように、[むす]は生まれるという意味です。そのため、[結ぶ]にも「新しく生み出される」という意味が宿ります。しかも、どこからともなく生まれるのではなく、複数のものがひとつに結びつくことで生まれます。息子や娘は、父と母が結ばれた「果」として生まれるのです。
 [結ぶ]が使われた熟語も多くあります。レンズを通して屈折した光線が一点に集まり像を描くのが[結像]。空気中の水蒸気がガラスなどの上に集まり露になるのが[結露]です。どちらもやや固い科学的な用語ですが、光や水という自然の物体がひとつにまとまる現象を[結ぶ]を使って美しく表現しています。解体して、「光が像を結ぶ」というと、その美しさが際立ちますし、同じ手法で「夜空に星座を結ぶ」のような使い方もできそうです。

さいごに

 すばらしい表現が目白押しの[結ぶ]ですが、我々にとって一番大切な言葉を忘れてはいないでしょうか?米を使ったシンプルかつ最高に美味しい日本人のソウルフード[おむすび]です。[おむすび]は米同士がくっついてできあがります。小さな米粒がひとまとまりになることで大きなエネルギーの塊になった[おむすび]は、人と人の繋がりや、結束力の大切さを教えてくれています。

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