感想記「光る君へ」第26回から第30回まで
旅行記の枕話としてこれまでNHK大河ドラマ『光る君へ』の感想を書いてきました。
今回は第25回から第30回までの感想をまとめています。もちろんそれだけではございません。当時の感想を振り返る「あとがき」を追記しています。かなり読み応えのある文章量となっていますのでお時間あるときに読んで頂けたなら幸いです。長文を読むのが苦手な方やドラマを観ていない人にも楽しんで頂きたいのでやむなく没になった『真夏の嵐山日帰り旅』画像を載せました。
それでは感想記「光る君へ」をご覧ください。
目次
はじめに
平安貴族をテーマにした大河ドラマということで感想記の中に「宗教」や「政治」の話が出てきます。例として現代の状況を織り交ぜていますがそれらはすべて私見であり皆様に私の思想や理念を押しつける意図はまったくございません。細心の注意を払っていますが不快な表現があるかもしれません。不適切な言葉が見つかり次第"追記"と"修正"を随時して参ります。
あとここを討論の場にしたくはありません。見解の相違をご主張されたい方はここと関係ないところで書いて頂けると助かります。相互不干渉でよろしくお願いします。
第26回「いけにえの姫」
大河ドラマ"光る君へ"第26回「いけにえの姫」観ました。
少し前に白楽天と傾国の美女についてのお話をしました。ちょっとした伏線回収があるのかと思って見ていましたが半分的中でしたね。ロバート秋山さん演じる藤原実資が『定子は傾国の中宮である』とご発言。やはり制作陣は白楽天を意識されていました。
本編後に放送される『光る君へ紀行』では離宮八幡宮の紹介がありました。実は私、今夏に嵐山観光を計画していて余裕があれば参拝したいと思っていたんです。皆様はご存知でしょうか。その昔、男山と大山崎で石清水八幡宮の名をかけた争いがありました。その座は男山に譲ることになりましたが、代わりに製油発祥の地として歴史にその名を刻み、大きな発展を遂げることとなりました。紀行では「かつて山城国府があったとされる地」との説明がありましたがウィキペディアにはそのような記述はなく大変驚きました。大山崎町には歴史資料館があるそうなので、時間が合えばそこで歴史の確認したいと思っています。
さて、藤原道長とまひろの大きな転換点となる藤原彰子入内イベントがついにやって参りました。道長は娘のため鬼となるのか。まひろとききょうの関係は果たして。次週は東京都知事選速報なので二週間お預けです。怒涛の後半戦も目が離せません。
春分の京都旅行「京都市学校歴史博物館Ⅰ」京都大神宮と高麗門より引用
第27回「宿縁の命」
大河ドラマ"光る君へ"第27話「宿縁の命」観ました。
まひろと道長のラブロマンスを毎度楽しく視聴しているのですが、ネットの反応を覗いてみると二人のシーンはあまり評判が芳しくないみたいですね。それにしてもいやはや、まひろの夫・宣孝めちゃくちゃカッコよかったですね。真のプレイボーイは彼のことを言います。
昭和まで寛容だった不倫文化。
現在は不倫した有名人を執拗に叩き、芸能界引退まで追い込もうとする人が増えています。しかし、批判している人たちの中で一体どれほどの割合が清廉潔白な恋愛をしてきたのでしょうか。他人に厳しく自分に甘い人間ばかりが目立つ世知辛い今世ですから、托卵妻でもいいと寝ぼけ眼で愛を語った宣孝がより一層清々しく見えるわけです。
さて今回の脚本はなかなかに凝っていましたね。彰子の入内、定子の御子誕生、まひろの出産。三つの大きなイベントがいい感じで対比になっていました。特に注目すべきは子を産んだ二人の女性。彼女たちの運命はこのあと大きく分かれることになります。
一条天皇、ついに国母に対し積年の想い(恨み)を口にしてしまいましたね。前にも書きましたが、上級国民と呼ばれる人たちも市井しせいと同じくらい深い悩みを抱いています。当時の皇室は藤原氏という外戚の操り人形にならなければ存在しえませんでした。帝という頂点の立場にいるのに思い通りにならなくて、神輿同様の扱いをされていた天皇は日々憤りを感じていたことでしょうね。そしてその怒りは平安末期に大爆発します。院政時代の到来です。
先週放送がお休みだったので感想と考察も勢いに任せて爆発してしまいました。不倫を肯定するような書き方をしてごめんなさい。芸能人であっても夫婦関係に第三者が踏み込むべきではないよという趣旨となります。
第28回「一帝二后」
大河ドラマ"光る君へ"第28回「一帝二后」観ました。
先日某番組で石丸伸二氏が少子化対策の方法として一夫多妻制を提言されていました。大河ドラマを視聴している皆様ならわかりますよね。一夫多妻制が女にとってどれほど辛いものかを。
藤原道長が危篤状態となりその妻である倫子と明子が一触即発の修羅場となっていましたが、あれが一夫多妻制のリアルなんです。定子が中宮になる彰子に気遣って一条天皇に遠慮していました。しかし本音は自分だけを見てほしい、私だけを愛してほしい。それが女心というものです。火葬が慣例であるのに土葬を望んだのは、草木を見て私を想ってほしいという彼女の願いからだったのでしょう。
政治家よりテレビコメンテーターのほうがふさわしいとか、具体性や実績がまるでないとか、本当は何もない人と評価されている石丸氏ですが、いくら極論とはいえ一夫多妻制の提案は女を軽視していると思われてしょうがない発言でありました。(田嶋陽子さんが言及しているように多夫多妻制であればそこまで周囲や世間がざわつくこともなかったでしょう。)
そもそも后という称号は決して幸せをもたらすものではありません。徳川秀忠の娘として生まれた和子もまた恵まれた血筋にありながら、険悪となった幕府と朝廷の仲を取り持った苦労人の中宮でありました。姉や定子の実情を知る道長にしてみればそりゃ明子に「娘を入内させるべきではない」と諭すわけですよ。いくら災いをなくすためとはいえ最愛の彰子を入内させた道長。父娘の関係はこれからどうなっていくのでしょうか。次週も楽しみです。
春分の京都旅行「雨模様の烏丸通」差し迫る時間とルート選択より引用
第29回「母として」
大河ドラマ"光る君へ"第29回「母として」観ました。
私の癒やしは"黒光りの君"こと藤原実資と"転生したニーニー"こと藤原隆家のご両人です。今回はともに登場されていたので個人的にめっちゃ嬉しかったぁ。最後まで彼らを応援していきたいですね。
たびたび出てくる"呪詛"でありますがドラマでは一度として成功したことはありません。今回は藤原伊周が道長を呪うというシーンがありました。まったく効き目がないようでした。しかし一条天皇に藤原伊周が枕草子を献上する場面にて「のちに道長を苦しめることになる」というナレーションがあり複雑な気持ちになってしまいました。清少納言が定子を美化したがゆえに"呪いのアイテム"になってしまった枕草子。清少納言ファンにかける言葉が私には見つかりません。評価というものは見る方向によって形がまったく異なる多面体です。『光る君へ』はまひろと道長が主人公の物語。中関白家が対立軸に置かれるのはしょうがないかなぁと思っています。
京都のことをたくさん勉強しているつもりでしたが、真如堂こと真正極楽寺が藤原詮子の離宮がキッカケであったことを『光る君へ紀行』を視聴するまでまったく知りませんでした。女性の信仰を特に集めていた理由はもしかしたら女院様の境遇に同情した女性が多かったからかもしれませんね。まだまだ私には勉強が必要です。精進精進。
そういえば新キャストが発表されましたね。その中に伊藤健太郎さんがいたので界隈が少しざわつきました。反発する声もあったようですが似たような騒動を起こしたフジモンはすでにバラエティに出演されていますし、私は聖人ではないのでとやかく言う権利はありません。ストーリーはすでに終盤に近づいているので目立った出演とはならないでしょうし、世界観をぶち壊さなければ正直どんなキャスティングでも全然構いません。
次週の予告をみたのですが大きな波乱が起きそうですね。まひろとききょうの仲も気になります。どうなることやら。
真夏の嵐山日帰り旅「さっそく間違える京阪枚方市駅にて」より引用
第30回「つながる言の葉」
大河ドラマ"光る君"へ第30回「つながる言の葉」観ました。
干ばつという自然災害があるのを私は視聴するまで完全に失念していました。40度近い気温で上昇気流が多発するのか、近年の夏は決まって午後に雨が降り時々雷も襲ってきます。そして定期的にやってくる大型台風。なのでこの時期の日照りは私の記憶になかったのです。
京都の運河といえば琵琶湖疏水が有名ですが明治時代に作られたものなのでもちろん平安時代には存在しません。井戸水と京都北部から流れてくる川しか都人の頼りとするものはありませんでした。ちなみに平安時代の井戸はすべて手掘りで、なんと左京区では1,2m掘るだけで地下水が溢れ出てきたそうですよ。さすが水の都ですよね。
恋多き抒情歌人、和泉式部がついに登場しました。パリ五輪開会式で炎上した中川安奈アナを予言したかのような薄いお着物でしたね。そういえば嵐山で下着のような服の外国人女性を見かけましたよ。有名人がセクシーな服を着ると必ず叩くネット民ですが不思議なことに外国人に物申す日本人はほとんどいません。自国の女性だけを叩く。これは品や露出の問題ではなく別の問題が孕んでいることを意味します。
なぜ風紀を乱す服装をしてはいけないのか。大人たちに聞いても規則だからだとはぐらかすばかり。私が十代の頃は大人たちの言い分がまったく理解できませんでした。京都検定を勉強している時に猪熊事件の概要に触れて全てを理解しました。なぜ公の場で扇情的な振る舞いをしてはいけないのか。それはつまり恋愛が大きな憎しみを生む元凶となるからです。あんまり派手なことしてたらあんたいつか刺されるよ、と配慮する優しさも注意の中に含まれているのでしょう。そういえば藤原伊周隆家兄弟が花山法皇に向けて矢を放った『長徳の変』も痴情が原因でした。男も手当たり次第ちょっかいをかけていたら手痛い目に遭います。だからセクシーアピールを公の場で行なってはいけないのですね。
恋愛の基礎知識を義務教育に取り入れるべきだと私は思うのですが、よくよく考えれてみれば少女漫画や源氏物語がその役割を担っていましたね。余計なお世話でした、ごめんなさい。
定子が亡くなって数年が過ぎました。いまだ幻影に取り憑かれている一条天皇。枕草子が大流行し中関白家への同情が集まる中、彰子はどうやって帝を振り向かせるのでしょうか。次週8月11日はパリ五輪のため休止となります。寂しいですが待ちましょう。
番外編
今週の大河ドラマ『光る君へ』は選挙特番で休止でした。
代わりといってはなんですが、Amazonプライムビデオで配信されている『銀河英雄伝説 本伝(通称石黒版)』に関連したお話をしたいと思います。そういえば皇帝ラインハルトの姉弟関係って藤原道長と類似していますね。男に生まれていれば旧王朝でも出世したであろう、と評された才女ヒルダも立ち位置はまひろに似ています。銀英伝は道長時代をモデルの一つにしていたのかもしれません。
七夕の日に日本の人口10%強を占める東京都で首長を決める選挙が行なわれました。その選挙期間中に「マイナス票を導入すべき」という提案をネットで見かけました。そもそも無党派層のほとんどは誰が一番マシかで選んでいます。"人となり"を完全に知ったうえで候補者を応援している人は一割にも満たないでしょう。ちなみに新しい制度を作らなくてもマイナス票を生み出すことは可能です。衆議院選挙の小選挙区でどうしても復活当選させたくない候補者がいた場合、誰でもいいから他の候補者に投票すればいいのです。そうすることで嫌いな候補者の惜敗率を下げることが出来ます。
ところで皆様は専制政治と民主政治、どちらが優れていると思いますか。
民主政治は話し合いで組織の方向性を定めます。"船頭多くして船山に登る"ことになるのでなかなか前へ進む事ができません。日本は特にその傾向が強く、始めるのは遅いが進んだら止まらない暴走機関車のよう。コロナ禍の対応や大阪・関西万博が分かりやすい例でしょうか。一方、鶴の一声で即断即決できるのが専制政治の最大の利点です。
マイナス票を提案した人は、今の民主政治に不満を持っていて専制政治の名君を求めているのでしょう。議員数削減を求める声が時々聞こえてきますが彼らも民主主義に消極的と思われます。もちろんそのような考えは決して悪いことではありません。しかし、権力が一人に集中する専制政治において名君が永遠に名君であり続けることは絶対にありえません。人類の歴史がそれを証明しています。
名君っぷりを発揮している大河ドラマ『光る君へ』の道長ですが、彼もまた巨大な権力の闇に染まっていくでしょうね。ヤン・ウェンリーが年金暮らしを捨ててでも民主政治を死守したかったのは、専制政治の欠点を見抜いていたからに他なりません。立憲民主党の支持母体である連合が蓮舫氏ではなく小池百合子氏支持に回ったのは、専制政治に対する危機感の現れによるものです。
でもまぁ難しい問題ですよね。一人の優秀なリーダーが日本を引っ張ってくれたらと私も正直思うところはありますし、このまま腐敗を放置したら大国に飲み込まれて日本の歴史は途絶えてしまうかもしれません。ただ周辺国の暴走を見ていたらやはり現体制のほうが幸せかな、とも。
聡明な10代、20代の若者たちはすでに銀河英雄伝説を読んでいることでしょう。もし投票権を持っている方で未読の人はぜひ読んでみてください。文字を読むのが苦手な人はアニメもありますよ。途中からになりますが最新版がTVerで配信されています。学校の教科書として採用してもいいくらい優れた作品でイケメンもたくさん揃っているのでキャラ推し必見。私のイチオシです。
補足
銀河英雄伝説の面白さは、軍事・政治・宗教問題だけに留まりません。言論の本質にも切り込んでいます。
「正論」って一見正義だと思われがちですが決してそうではありません。人の感情を無視して理屈ばかりを通すと周囲に嫌われることになります。都知事選開票直後のインタビューで大炎上した石丸伸二氏。彼の言動はパウル・フォン・オーベルシュタインを彷彿とさせます。当初、石丸氏は時代の寵児だと持て囃されていました。現在は政治家に向いていないという声が大勢を占めています。彼の都知事選は結果的にテレビコメンテーターになるための就職活動になりそうですね。同じ元市長の泉房穂氏と肩を並べる日は近いのかな。・・・こんな事を書くから人に嫌われるんです、私も。
結び
この頃は殺伐とした政治闘争がメインになっていたので感想やあとがきも政治の話ばかりになってしまいました。本当にごめんなさいね。第31回以降は藤壺の雰囲気が明るくなり源氏物語をキッカケに一条天皇のお渡りが増え、中宮彰子の恋心が芽生えて華を咲かせます。
気づけばもう終わりが見えてきました。終わってほしくない。次回の感想記は頃合いを見て投稿致します。それではまた。
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