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正解がないからこそ、ものづくりは「1°ずつ・1㎝ずつ」試す。料理道具専門店・飯田さんと、料理道具偏愛トーク!

ヤマチクのお箸の「使い手」さんの声をお届けするnoteマガジン「竹のお箸のある暮らし」。

ヤマチクは、熊本の山奥で「竹の、箸だけ」を58年間作り続ける小さなものづくり企業です。

「作り手さんの話し僕大好きで、たまらないです(笑)。どの商品にも生まれた背景がある。ストーリーや歴史は、真似できないです」

前回の記事では、熱い眼差しでヤマチクの魅力を語ってくださった、東京・浅草にある料理道具専門店「飯田屋」代表取締役社長の飯田結太さん。

創業100年以上の老舗料理道具店の6代目。自ら開発したオリジナル商品を含めておたまは2000種類以上、フライパンは約200種類を取り揃えているとのこと。店内には超マニアックで専門的な道具が所狭しと並び、TBS「マツコの知らない世界」やNHK「あさイチ」などのテレビ番組をはじめ、様々なメディアにも取り上げられています。

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今回は、ヤマチク三代目・山崎と対談をしながら、料理道具やものづくりの奥深さを語っていただきます。

お客様にとって、良い料理道具とはなにか──。どこまでも突き詰める二人の、少しニッチな「料理道具の偏愛トーク」。お楽しみください!

200〜300種類の料理道具を取り揃える理由とは?

山崎:今日はよろしくお願いします。前回の記事では、ヤマチクのお箸の魅力を熱く語ってくださって、本当に嬉しかったです!

飯田さん:こちらこそ今回は、山崎さんと“料理道具の偏愛トーク”ができるのが楽しみです(笑)。ヤマチクのお箸の魅力は、使いながらヒシヒシと伝わってくるのですが、今日はその魅力の背景なんかも伺いたいと思っています!

山崎:ぜひ、よろしくお願いします!

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飯田さん:さっそくですが、ヤマチクのお箸が愛される理由の一つに、お箸の種類の多さがあると思っていて。色・形・長さそれぞれ種類が豊富だからこそ、自分の好みや手にフィットする一膳が見つけやすいんじゃないかなと思いました。

山崎:ありがとうございます。おっしゃる通り、形だけでも、丸・四角・三角、その他の形もあります。色も長さも異なるので、合わせると300種類くらいはあるでしょうか。

飯田さん:すごいですね......!飯田屋もフライパンやおろし金を、200種類以上取り揃えているんですが、どれだけ種類があっても正解がないのが面白いですよね。

山崎:そうなんですよ。お箸もただ食べるだけの道具なら、ほんの数種類でいいんですよね。けど、そうならないところにおもしろさがある。もうちょっと太いほうがいいとか。長いほう、短いほうがいいとか。

飯田さん:僕も以前、人参や大根などチカラを入れずに "撫でるだけ" で皮がむける飯田屋オリジナルの『エバーピーラー』を作ったのですが、使いやすさにはトコトンこだわりました。

山崎:究極の切れ味を持つと言われるピーラーですね!飯田屋の主力商品として、よくテレビでも取り上げられていますよね。

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飯田さん:ありがとうございます。今でこそたくさんの方に愛用いただいていますが、納得のいくものができるまで、形・切れ味・角度と、ぜんぶ調整しました。刃の角度は、19°と20°で切れ味はどう変わるのか?検証したり......。

山崎:1°ずつ試したんですか!?

飯田さん:そうなんですよ!19°・20°・21°・22°・23°…...って、手の動かし方や野菜への刃の侵入角度で、どう使い心地が変化するのかを試しました。その結果、剥いた野菜の皮の向こう側が透けて見える "極薄"の仕上がり、握りやすく手の平に収まる「刃渡り60mm」の特注サイズにたどり着いたんです。

山崎:すごいこだわり!

飯田さん:あとは、切るときの「シャッ」っていう音、音量測定したんですよ(笑)。できるだけ、無音に近づけば近づくほど、手への抵抗が少なくなることがわかりました。

山崎:突き詰めた果て、辿り着いたのが“音のちがい”だったんですね。すごいなぁ。

飯田さん:ありがたいことにメディアからの取材も多く、たくさんの方にご愛用いただいています。が、これが正解なのか?と言われるとやっぱり暫定なんですよね。

山崎:なるほど。

飯田さん:お客様にとって一番使いやすいピーラーが、たまたまエバーピーラーだったら嬉しいですが、そうじゃない場合ももちろんあると思います。だからこそ店舗には100種類以上のピーラーを取り揃えて、常にその人にとって一番使いやすいものを提供できるようにしたいんですよね。

山崎:ヤマチクも2021年6月に新しく発売した『おかえりの菜箸』を開発をするときは、同じように箸の長さを1㎝ずつ変えてどれがベストなのか試しました。

飯田さん:そうなんですね!おかえりの菜箸は、「つくる」「もりつける」「とりわける」と三つの用途で使い分けられる三善の菜箸セットですよね。長さにどんなこだわりが......?

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山崎:たとえば、「つくる」の菜箸は30㎝なんですが、長さを決めるまでに1cm刻みで試作品を作りました。30㎝・31㎝・32㎝・33㎝って試して。

飯田さん:30㎝がベストだと判断した理由はなんだったのでしょう?

山崎:社員が「長すぎるお箸って、結局は短く持っちゃうよね」って気づいたんです(笑)。

飯田さん:なるほど。

山崎さん:それだったら揚げもの・炒めもの・茹でもの、全部まかなえて長すぎない30cmにしようって。30cmあれば火元で手が熱くなることもないし、深さのある鍋で煮物をするときも使いやすい。

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飯田さん:日本の家庭で多く使われているフライパンの大きさが、24㎝〜26㎝って言われているんですが、そこから計算したのかなと思っていました。

山崎:おっしゃる通り、フライパンの淵に箸を乗せるとき、あんまり短いと中に落ちちゃうし、長すぎるとひっくり返っちゃう。そういう意味でも、ちょうど良いところは30cmだったんですよね。

飯田さん:なるほど。今聞いただけでも台所仕事って、言語化できない細かな所作がたくさんある。そこに気づいて形にできるのは、ヤマチクの女性社員さんたちが、お箸の使い手であり、作り手であるからこそですよね。

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山崎:そうですね。彼女たちは毎日台所に立つお母さんでもあるので、「こんなお箸があったらいいな」という主婦目線の細かな部分も見逃さないんです。

飯田さん:使い手の気持ちも、きちんとお箸に組み込まれている。それがヤマチクの魅力ですよね。

良い道具は「言われてみれば、ストレスだった!」に気づかせてくれる

山崎:それに道具って、ある程度の機能は果たせるじゃないですか。だから道具をアップデートするうえで必要な視点は、「人が無意識に感じているストレスをいかに解消できるか」なのではと思います。

飯田さん:たしかに、いくら安くても「使えない」ということはないですよね。でも、こだわりある料理道具を使うと、「うわ!あんなに使いにくいものをずっと使ってたんだ!」と気づくというか。

山崎:そうなんですよ。お箸の軽さについても同じです。持てないほど重いお箸はないと思うんですよね(笑)。でもヤマチクのお箸を「軽いですよ」って手渡されて持つと、「たしかに軽い......!」ってみなさん驚かれる。だからこそ「良さに気づいてしまったから、もう手放せない」って声をいただけるのかなと。

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飯田さん:わかるなぁ。100円ショップのピーラーだって軽いし全然切れる。ただ何かを境に、「軽すぎる!」「切れ味すごい!」って感動を覚えるんですよね。持ってみて初めてわかる部分。良い道具って「言われてみれば、あの重さや切れ味はストレスだったのかも」って気づかせてくれるものなのかもしれないですね。

山崎:だからこそ僕らは、「なんかこれいい!」っていう言語化できないほど繊細な「なにか」を形に落とし込む必要があると思っていて。それがいわゆる、ピーラーの刃の角度を1°ずつ変えたり、お箸の長さを1㎝ずつ変えていく作業なのかなと。使い手の困りごとを、どう解決するのか?それを考え抜くのが、僕らの仕事ですね。

ストーリーは唯一無二。同じ情熱では作れない

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飯田さん:いいなぁ。そういう作り手さんの話は大好きで、たまらないです(笑)。一個一個の商品に生まれた背景がある。ストーリーや歴史は、真似できないですもんね。

山崎:そうなんですよ。おそらく、時間はかかるかもしれないけど海外のメーカーも同じ技術で作れるところはあると思うんです。でも、ストーリーは唯一無二ですから。

飯田さん:間違いないです。

山崎:ものづくりへの姿勢は、文化や歴史、ものに対する思い入れが左右すると思っていて。ただ作れと言われて作るのか。どうしても作りたくてたまらない思いがそこに宿っているのか。できあがるものは、やっぱりちがう。同じ情熱では作れないです。

飯田さん:僕らも接客をするときは、できるだけ作り手さんの想いをお客様にお伝えするようにしているんですが、こんなに言葉を持っているのは山崎さんくらいです(笑)。やっぱり作り手であり、伝え手なんですよね。

山崎:だから偏愛になるんですよ(笑)。でもやっぱり偏愛でないといいものは作れない。

飯田さん:僕もそう思います。今日は、存分に料理道具の偏愛トーク楽しませてもらいました。ありがとうございました!

山崎:こちらこそ、ありがとうございました!

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ものづくりのこだわりについて熱く語ってくださった飯田さん。素敵なエピソードをありがとうございました!

▽ヤマチクのお箸って、どんなお箸なの?(ECサイトはこちら)

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文・写真/貝津美里

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