見出し画像

ゼロから始める手紙BDR 有効商談の70%を”手紙経由”で獲得したノウハウを大公開!

みなさま、こんにちは!
株式会社Leaner TechnologiesというBtoB SaaS企業に勤めている山下です。
2年前に現職にジョインし、ISチームの立ち上げを1年半→今はエンプラセールスをしています。
今回は、他社の方と情報交換した際によく質問される、「手紙BDR」について私が意識していたことを記事にしてみました。

お金も人脈もないスタートアップで、エンタープライズの企業の決裁者のアポを獲得する手段として手紙BDRは非常に有効です。弊社でも、エンタープライズ企業の有効商談の70%以上が手紙経由だった時期もあるくらいです!

ただ、意外と手紙BDRの有効性や具体的なノウハウって公開されてないなーと思ったので記事を書いてみました!
かなり具体的な内容まで書いているので、手紙BDRの施策を検討されている方に、少しでも参考になればと思います!

1.手紙BDRが有効な企業・サービスの特徴

前提として、手紙BDRはどんな企業にも有効な施策ではないです。
いきなりどういうこと?とお思いかもしれませんが、施策は手段であって目的ではないので、施策ありきで考えると色々ミスります。
手紙BDRはアウトバウンドの営業手法なので、「アポを獲得する」ということを目的にしても、決して効率の良いものではありません。
(あくまで売上目標を達成するというゴールに対しての施策の1つに過ぎないので、「手紙BDRやってみたい」みたいな手段が目的化された状態はダメ、絶対ですよ!)

才流さんの記事を見ても、BtoBマーケティングの手法ってこんなにありますしね↓

参照元:「BtoBマーケティングの手法大全 – 社内会議で使える79個の施策アイデア」
URL:https://sairu.co.jp/method/2483/

では、どんな企業だと手紙BDRが向いてるのか、私なりに整理したポイントは下記です。

  1. 商材がエンタープライズ向けで高単価なので、ある程度CACが高くても許容できる

  2. ターゲットに対して、「紹介」など他の手段でのリード獲得が望めない

  3. サービスの導入に際して、ボトムアップで商談が進みづらく、高役席者を巻き込む必要がある

  4. 強いエンタープライズセールスが社内にいる

それぞれ簡単に解説すると、、、

1に関しては手紙BDRでの商談獲得単価は、最低でも10万円/件は超えるレベルでかかると思うので、当然それ以上のリターンが見込めるサービスの単価じゃないとペイしません。
商談獲得単価10万円で受注率10%くらいだとしたら、単純計算でCACは100万円超えちゃいますしね。

2に関して、いつの世もBtoBサービスの購買において「信頼できる人からの紹介」は最強ですが、お金も人脈もないスタートアップだと難しいと思います。
紹介が見込めない場合は、手紙BDRくらいしかエンタープライズ×決裁者アポを獲得するのは難しいと思うので、検討していいと思います!

3に関して、商談の対面が担当者レイヤーでも受注できる商材であれば、わざわざ高役席者を狙う必要がありませんよね。なかなか初期接点が作りづらい高役席者の方に会う必要がある商材では、バイネームでターゲティングできる手紙BDRが活きます。

4に関して、仮にISでいくらアポが取れても受注できなければ意味がありませんよね。
手紙BDRで狙う企業は商談リードタイムも数か月~1年以上かかるエンタープライズ企業だと思いますので、まずはエンタープライズセールス経験のある人材獲得が先です。
社内にいない場合は、アポ獲得手段を考える前に強い人材の獲得、もしくは育成を優先しましょう。

2.手紙BDRで最も重要な2つのポイント

私が手紙BDRを行う上で最も重要だと考えているポイントを2つに絞って説明します!

①ターゲティング

手紙BDRに限らず、どんな施策でもターゲティング大事だろ、と思いますが、本当に大事なので何回でも言いますw
手紙BDRは施策としてABMの考え方をベースに行うことが多いと思いますが、受注という成果に繋げるために最も重要なのはターゲティングの精度です。
BDRにおいてもターゲティングは「狭く・深く」が鉄則なので、自社のサービスが顧客のディープサクセスに繋がるセグメントを細かく細かく絞りましょう。一番最初の時期は、バイネームで数百社くらいまで絞ったらいいと思います。
特徴的なlogoを獲得していたら、その企業の同業他社とかでもいいですね。

とにかく、セグメントが絞れないなら手紙BDRみたいな効率悪い手段はぶっちゃけやる意味がないと思ってるくらいです。
Horizontalなサービスであっても、手紙BDRを行うときはターゲット絞りましょう。捨てる勇気です。
「マジで実績がない」っていうどシードのスタートアップであっても、仮説でいいのでサービスが刺さるセグメントを特定してやるのが大事です。

ここを適当にやってしまうと、ターゲットの仮説検証だけで半年とか時間かかります。FS・CSと密に連携し、「自社のサービスは誰に一番深く刺さっているのか」の解像度を高く持ちましょう。

※ちなみに弊社ではここの仮説構築から始めたので、適切なセグメントから安定してアポが取れるようになるまで半年以上の時間がかかりました。皆様同じ過ちを繰り返さないようにしてください・・・。

②本人に繋がるまで架電をやり切る気合

手紙BDRはバイネームまでターゲティングする施策ですが、手紙を送っただけで先方からインバウンドで連絡が来ることなんて、まあありません。
あったらはぐれメタル並みにラッキーです。

ですので、「手紙を送ること」と「フォローコールして本人に通電を目指すこと」は必ずセットでやります。
手紙BDRで成果が出る出ない、はここの「フォローコールして本人に通電を目指すこと」をどこまでやり切れるかにかかっていると思います。

手紙BDRって書くと若干かっこよく聞こえるかもしれませんが、営業行為としてやってることはほぼコールドコールと変わらないわけです。
ですので、当たり前ですけどインサイドセールスはほとんど断られます。100社手紙を送ったら90社以上断られます。
しかしながら、ターゲティングを精度高く行っているのなら、「サービスを導入いただけば、顧客は必ず大きなサクセスができる」のです。
手紙を送った1社に対して何十回もコールすることもありますが、顧客に絶対価値を届けるんだ!という精神で粘り強く追客し続けましょう。

根性論みたいですけど、これ本当に重要です。
手紙BDRを社内で始めるときは、電話で何回断られてもめげない人の存在がマジで貴重なので、そういう人が身近にいたらぜひ採用してくださいw

3.オペレーションを回す上でのノウハウ

この章では具体的にオペレーションを回す上でのノウハウを説明しようと思います。
※内製でBDRチームを立ち上げる場合を想定しています。

①リスト作成~送付まで

まず最初に、企業バイネーム→担当者バイネームでリストアップをしていきます。このリストがマジで宝になります。

▼企業バイネームのリストアップ
FORCASさんみたいなサービス入れてると企業バイネームのリストアップって簡単にできますが、ガチスタートアップだと中々難しいと思います。

オススメは、クレディセゾンや帝国データバンクのような企業リスト購入できるところでリストを一括購入し、その中で業種・従業員数・売上・上場/非上場等で絞ることです。
すでに導入実績があるサービスの場合は、企業ロゴをHPに掲載許可貰っている企業の同業他社をリストアップする、みたいなやり方でもいいと思います。
リストアップ作業自体はスプレッドシートでいいと思いますが、どの企業の誰にいつ手紙を送ったかの履歴を確認するために、SFAへの登録は忘れないようにしましょう。

▼担当者バイネームのリストアップ
企業バイネームでリストができたら、次は「どの部署の、どの役職の方」に送るかのリサーチですね。よく情報ソースとしては、下記を使います。

・異動ニュース
日経の人事異動情報や各社のIRから高役席者の異動情報を拾ってきているサイトです。エンタープライズであれば、だいたいここ見れば50%くらい見つかります。

・各社のIRや株主向けの情報、組織図
異動ニュースに載ってなくても、自社サイトには載っている場合があります。

・ターゲット企業が所属してそうな業界団体の会員名簿
これは最終手段ですが、業界団体のHPって結構会員名簿が公開されていたりすることが多く、ここに登録があれば詳細の部署×役職名が見つかります。ほとんど取締役とか役員クラスなので、役職もマッチします。

どこに情報が載っているかは調べてみないと分からないので、いろいろ試してみるのがいいでしょう。

▼手紙の文面作成・送付
こちらは、私なんかよりもSaaSセールスの神である石井さんが書いているnoteがめっちゃ参考になります。私もほぼこのnoteに書いてることをそのまま使わせていただきましたので、ぜひ参考にしてください!

石井さんがめちゃめちゃPDCAを回してくれた貴重な情報を公開して頂いているので、変にオリジナリティを出さずに上記のnoteに書いてることをそのままやれば成果が出ると思います。
追加で言うとすると、手紙の中にコール担当の名刺を入れておくと若干インバウンド連絡が来やすくなります。

②コール時のTips

手紙BDRでコールをするとき、大きく「受付突破~本人に繋がるまで」「本人に繋がり、アポの時間をいただくまで」の2ステップに分かれます。それぞれのステップで重要だと思うことを説明します。

▼受付突破~本人に繋がるまで
ここで重要なのは、本人が所管する部署に繋げてもらい、席にいることが多い時間帯を聞き出して追客することです。
受付の方にいきなり「取締役執行役員の○○様にお繋ぎ頂けますか」とお願いしても繋げてくれることは少ないです。
エンタープライズにおいては、そもそも受付の方には手紙が送られている事実を知るすべがないからです。
手紙BDRはまずは代表電話に架電することが多いと思いますので、本人に繋がるための第一関門は受付の方に不審に思われないことです。

バイネームのリサーチをする際に、必ずその方の管掌部門も把握しているはずなので、「○○部の○○様にお取次ぎいただきたいのですが、○○部の方にお繋ぎ頂けますか?(事業所が複数あるときは、○○部はどちらの事業所にお電話させて頂いたらよろしいでしょうか?)」など、まずはその方がいる部門に接続することを目指すといいと思います。
部署直通の番号をGetできれば、あとは電話口の方に「○○様は何時に戻られますか?」と聞いて、戻る時間に合わせてひたすら追客をしていきます。
エンタープライズの高役席者の方は一日中会議や予定がびっしりなことも多いので、空き時間を聞けたら忘れないようにSFAにタスクを設定し、ひたすらそのタスクを忘れないようにこなしていくのが大事です。

本人に通電するまで、粘り強く粘り強く追客をしていきましょう!

▼本人に繋がり、アポの時間をいただくまで
やっとの思いで本人に繋がっても、セールスピッチが微妙でアポが取れなければ今までの努力が水の泡です。
エンタープライズの方はただでさえ忙しいので、通電した最初の30秒で伝える内容でほぼ勝負は決まります。
いきなりよく分からない企業から電話がかかってきて、アポの時間をいただけるって相当相手にメリットのある提案じゃないと難しいですよね。

なので、手紙の文面にも書く内容である「Why you now=なぜ貴方に手紙を送っていて、話を聞くとどんなメリットがあるのか」を端的に伝えるトークを磨きましょう。

Why you nowを磨くためには、
・業界知識や最新のトレンドのインプット
・IRや中期経営計画などから、その会社の経営課題を把握する
・同業界の顧客事例を、あたかも自分が顧客担当かのように話せる解像度

などが必要です。

FSやCSと連携を密にしながら、日々日々アンテナを高く持ちましょう!

③ISチームとしてPDCAを回すやり方

この章の最後に、ISチームとしてのPDCAの回し方も解説しておきます!
BDRはいきなり上手くいくことは稀なので、ここの情報も参考にしながらぜひあなたの会社にあったやり方を確立させてください!
・PDCAを回す体制を整えること
・具体的にどうやってPDCAを回すのか
という観点で説明します。

▼PDCAを回す体制を整えるために
「CRMの導入」と「ISのコールを録音できるツールの導入」はマストで必要だと思います。

CRMは最初Hubspotの無料版とかでも十分だと思いますが、少なくとも「誰に、いつ、どんなアプローチをして、結果はどうだったか」は管理できるようにしないと、一度断られた方に何度も手紙を送ってしまい、顧客の心証を損なうことにもつながりかねません。

また、顧客に紐づく追客のタスクを細かく管理する必要もありますし、FSが商談を行った結果のフィードバックもCRMに残しておくことで誰もが確認できるようになりますね。
エンタープライズは商談の関係者も多く、案件のリードタイムも長いのですべての顧客接点をしっかりとCRMに残す意識は初期から徹底しましょう。

「ISのコールを録音できるツール」に関しては、毎日のトークスクリプト改善のために必要です。
人間は自分のことを客観的に捉えるのはすごく難しいので、メンバーに「どこ改善すればいいと思う?と質問して、返ってくる意見」と、「実際の録音」を聞くのでは得られる情報が10倍くらい違います。
コールの履歴に「本人通電」「アポ獲得」「通電したがアポにならず」みたいなフラグ付けができるツールを選びましょう。
個人的なオススメはZoom Phone+アンプトークです。

▼毎日どんな振り返りをするべきか
安定して受注に繋がるアポが取れるようになるまでは、アポを取るまでのスクリプトの改善と、取れたアポの改善を日々日々行っていきましょう。

アポを取るまでのスクリプトに関しては、特に「本人通電したが、アポが取れなかったコール」が重要です。ISのマネージャーは毎日このフラグがついたコールの録音を全部聞き、何を改善すればアポに繋がるのかをメンバーにフィードバックしましょう。
毎日30分程度、コールタイムが終わった後にISチームで振り返りの時間を取り、実際に録音を聞きながらフィードバックするのが手っ取り早いです。
このフィードバックをドキュメントにして蓄積しておき、日々日々のスクリプトや想定Q&Aの改善に活かしましょう。
また、最新の顧客事例の情報をFS・CSからGetできるように、直近で受注した顧客や、オンボーディング期間が終わって本格活用に入ったフェーズの顧客の情報は常にキャッチアップしましょう。

取れたアポの改善、に関してはFSとの情報連携がカギになります。
トスしたアポが案件化しなかった場合、必ずFSからフィードバックを回収しましょう。
ターゲットを間違えているのか、アポの期待値がずれていたのか、顧客側のタイミングが今じゃなかったのか、などどこを改善すべきかが分かります。
仮説検証フェーズではトスアップした初回商談にISも同席し、温度感を確かめるのも有効です。
私もBDR開始初期のころはよく商談同席していました。
ISとFSで顧客解像度に差がない状態であれば、営業組織としてすごく強いと思います。
最近はSFAからslackにメッセージを連携できたりできるので、商談結果の社内共有が非常にやりやすいですね!

4.よく質問されること

上記で書いたこと以外で、よく質問されることをまとめました!
他にも気になることあればTwitterでリプください!

①手紙BDRは内製で回すべきか、外注すべきか?

ターゲットセグメントが明確で、顧客に刺さるトークスクリプトも出来ているなら外注しても問題ないと思います。
そのあたりが明確じゃないなら外注しても検証の速度が遅くなってしまうので、内製である程度アポが取れるようになるまで科学したほうがいいかと思います。

②BDRチームはどんな目標設定にしてるか?

仮説検証フェーズでは単純なアポ数を追っていましたが、ある程度どのセグメントにはこうやったら売れる、というのが分かってきたのでSalesforceさんと同じく「案件数」を追うようにしています。
アポ数をメインKPIとしたとしても、FSにトスアップして案件になった数、逆に案件化しなかった数とその理由もISチームでしっかり把握している必要があります。

③サービスの導入実績なくても、手紙BDRは効果があるか?

効果はありますが、効率は悪いですね。
アウトバウンドの営業なので、顧客事例はとても強力な武器です。
導入企業のバイネームが出せなくても、「あなたと同じ業界の企業では、○○ということに悩んでいたので弊社サービスを導入いただいている。導入いただいて××な効果が出ている」くらいは説明できるようになっているとベターですね。
マジで実績がないフェーズの場合でも、プロダクト・サービスの初期仮説が精度高ければアポに繋がるかと思います。

④今どき手紙って本人の手元に届くの?

これ、意外と届くんですよね。
弊社でもコロナ真っただ中からBDRをはじめてましたが、手紙が本人のお手元に届いていないってことは、ほぼなかったように記憶しています。
もちろんフルリモートが前提のITスタートアップ企業がターゲットだと届かないこともあるかもしれませんが、そっちのほうが少数派なイメージですね。
エンタープライズの高役席者の方は、リモートワークをしていたとしても、何らかの会議で必ず出社タイミングはあります。
※ちなみに私も新卒で入った企業は大手のメーカーでしたが、外部から手紙が送られてくると社内便みたいな感じで本人の机の上に置かれてたイメージがあります。

最後に

ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
最近いろんなスタートアップ企業のISの方と情報交換する機会が多くなりましたが、同じようなことに悩んでいる企業さんが本当に多い印象を受けます。
IS系のイベントとかに行くと、手紙BDRについて毎回と言っていいほど質問されますw
特に、エンタープライズに初期からフォーカスしているスタートアップはまだまだ少ないので、初期接点の構築に四苦八苦されている印象です。

私個人的にはこういった「営業ノウハウ」的な話はもっとシェアされるべきだと思っておりますし、わざわざ各社が独自にやり方を検証して「犬の道」を歩む必要はないと思ってます。
それよりも、本来行うべき「プロダクト・サービスの磨き込み」「案件を受注し、顧客をサクセスに導くこと」に時間を割くことができれば、もっともっとスタートアップ企業の立ち上がりは早くなるのではないかと考えています。
弊社もまだまだ成功したというには早いフェーズではありますが、今後も社内でうまくいったノウハウは積極的に発信していければと考えています。

この記事が少しでも皆さんのお役に立てれば幸いです!
一緒にスタートアップ業界盛り上げていきましょー!

Twitterやってるので、ぜひフォローしてください!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?