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【第3話】 ドタバタ!? デスゲーム

○回想・カフェ・店内(夜)

浅野を人質に取っているみゆき。
山吹M「最悪だ…」

鬼のような形相のみゆき、
みゆき「座れ」
山吹M「よりにもよってこのタイミング」

山吹光一、恐る恐るみゆきに近づいて。
山吹「ちょっと君、なんの冗談……」

その瞬間、天井が見える。
山吹「…ぐほォッ!」
ズボッドカッ!! という音と共に目の前が真っ暗に。
気付けば床にひっくり返っている山吹。
山吹M「あっぶねー…漏らしたかと思った」

ニヤニヤと両手を振っているたわん。
たわん「え、人質。オレ人質なりますよ?」
山吹M「てめぇ…!! ふざけんな」

たわんがみゆきと言い争っている。
山吹M「一刻でも早く、トイレに行きたい…ッ!!」
たわん「助かるためだったら、見殺しにして逃げられるよ」
山吹「確かに…」
山吹M「そうか、この子が持っているのは銃じゃなくてナイフ。隙をついてトイレに立て篭もるくらいなら…!」
ぐるぐるとなる山吹のお腹。
山吹M「とてもじゃないけど、俊敏な動きはできないぞ…」

山吹、想像する。
山吹M「刺された瞬間血と一緒に色んなモノが一気に…」
ナイフを刺された山吹の体から色々なモノが噴き出ているイメージ図。

たわんは机を寄せながら、浅野に。
たわん「音入れできる?」
山吹M「おトイレとか言うなよ、意識しないように頑張ってんだから!!」

山吹、たわんの背中の陰でスマホで検索。
「トイレを我慢する方法」
たわんに見つかり、
たわん「あ、ここダメっすよ、地下なんで。圏外になってました」
山吹M「き、貴様…!!! こんにゃろ、ぜってー殺す」

その瞬間、目の前に迫るみゆき。
みゆき「おい! お前、勝手にスマホ触んな!」
山吹、みゆきに蹴られて。
山吹M「…あ、漏れる!!!」

みゆきに拍手するたわん。
たわん「すっごい風!!」

山吹、息も絶え絶えに。
山吹M「辛うじて受身取れたけど…やばい、ちょっと漏れた。多分」

携帯を回収される山吹。
山吹M「とりあえず、他のこと考えよう」
携帯を回収し終えるみゆき、こっちを向く。

山吹M「この子…どこかで見覚えがあると思っていたがやっぱりそうだ」

×     ×     ×
フラッシュ。
かなこ「あの、でもこの町、有名な高校生探偵いますよ……?」
×     ×     ×
フラッシュ。
みゆき「今FBIに呼ばれてアメリカだって」
×     ×     ×
フラッシュ。
新聞記事の写真。
見出しは「またもやお手柄高校生探偵!」
写真の隅にみゆきが映り込んでいる。
山吹M「高校生探偵とよく一緒にいる女子高生」

×     ×     ×

山吹、腹を押さえて。
山吹M「この強烈な蹴りも間違いない。でもそんな奴がなぜ…?」

沸々とみゆきの顔から湯気が出始める。
たわん「だったら銀行強盗失敗しても良いから、何千万とか盗もうとした、とか言えた方がカッコ良くね?」
山吹M「頼むから長引かせんな!!」
山吹、たわんの椅子を蹴る。

山吹M「カフェ強盗なら金を盗んでさっさと逃げれば良い」
みゆきはレジに目もくれない。
山吹M「立てこもりなら外に何か要求しなきゃ意味がない」
カチャカチャとみゆきが鞄からものを出す音。
山吹M「…となると、俺たちを監禁することが目的?」

たわん「大体さ〜設定ガバガバなんだよ、立てこもり犯女の子一人ってさ。オレら協力して殴り掛かれば一発KOじゃない??」

浅野「見てたでしょ」
山吹「無理だと思うゾ…」
山吹M「でも外じゃなくトイレに行くくらいであれば…!」
山吹、ハッとして。
山吹M「ダメダメ、またトイレのこと考えてしまった」

縄でぐるぐる巻にされているたわん。
たわん「いいねぇ!! 立てちゃん、緊迫感出て来たよ!!」
と、小刻みに揺れている。
その振動が山吹の椅子にも伝わってきていて。
山吹M「あぁ…ダメ。振動が、大腸を…」
みゆき「はぁ? 何が」
汗だくの山吹、小声でたわんに。
山吹「頼むから、刺激するのはやめてくれ!」

山吹M「この子の目的は、この中にいる凶悪犯を暴き出そうとしてるのか…!? それが高校生探偵の作戦か」
たわん「ね〜じゃあ言ってもい?」
足を挙げているたわん。

山吹M「誰が凶悪犯だ…?」
山吹、客達の顔を見ていく。

冷や汗をかいている客。
周囲をチラチラと気にしているかなこ。

山吹M「こう言う時大抵いるのが、、、」
ボケーっとしている浅野。
山吹M「このおっさん、確実に探偵側!!」

山吹、オブジェの隠しカメラを見て。
山吹M「隠しカメラから察するに、ライブ配信でもしていて、犯人を自供に追い込み社会的に抹殺するって魂胆か」

クイズが始まり、後ろを向く山吹。
山吹M「え、じゃあ漏らしたら公開処刑じゃん!!」

ドサッと床に倒れ込み、気絶するたわん。
山吹M「うぉお、ホントに気絶させやがった…!」

スクリーンを下ろして準備を進めるみゆき。
壁を向いている客達。
山吹「一体何を…?」
かなこ「目的は…!?」
「助けて」「息子が待ってるんです」など口々に言う客達。

みゆき「目的はね、じきにわかるよ」
山吹M「今目的とかどうでも良いから!」

山吹「あの〜、親が危篤らしくて、どうしても行かないとまずいんですけど…」
みゆき「え! そりゃ大変! なんでこんなところで優雅にコーヒー飲んでたの?」
山吹、泣き顔で。
山吹M「…ですよね」

ボッとチャッカマンで火が着く音。
冷や汗をかく一同。
かなこ「…火?」
浅野「や、やめてくれぇ…」

山吹M「俺の仮説が正しければ、確定要素は3つ。探偵陣営だから本気で人を殺すつもりはないはず。そしてこの中に何かしらの凶悪犯がいること。おそらくその犯人もここから一刻も早く抜け出す機会を狙ってる」

チャリンチャリン、とみゆきがドアを開ける音。

山吹のお腹、グルルル…と鳴る。
山吹M「うぅ…正直にトイレ行きたいって言ってみるか」

山吹「あの……」
同時に、かなこが口を開いて。
かなこ「あの! トイレ行かせてください!!」

山吹M「絶対コイツ犯人じゃん!!」

みゆき「ダメ。ここで漏らして良いよ」
ショックを受ける山吹・かなこ。
山吹M「言われると思ったー、知ってた」

ガラスに反射してみゆきの様子が少し見える。
山吹M「ドアノブを…焼いてる? 何のために?」

山吹、浅野に耳打ち。
山吹「ドアを開けてるこのタイミングなら。不意をつけば逃げられるんじゃ…」
かなこ「私もそう思ってたところです…!」

山吹M「あの子が…少しでもドアから離れたタイミングで…!」
気配に集中するかなこ。
反射して映るみゆきに意識を向ける山吹。
みゆき、荷物を取りに少しドアから離れる。

山吹M「よし…!」
山吹「今だっ!!!」
あっけに取られる浅野。
勢いよく立ち上がる山吹・かなこ。
山吹M「いける…っ!!」

みゆき「(ニヤッと)いけないよ」
みゆき、近くに置いてあるグラスや皿を持って。
みゆき「さよう……」

みゆき、にっこりとグラスや皿を天井に向かって一気に投げつける。
みゆき「なら!!!」

グラスや皿が天井にぶつかり、ガシャンと割れる。

山吹の瞳に映る、キラキラと飛び散るガラスの破片。
山吹「!?」

客達の頭上に降るガラスの雨。
「うわッ!」「ぎゃっ」「痛ッ!!」という客達の声。
山吹M「やられた…!!」

気絶しているたわんの頬にも切り傷が。

山吹、急いでドアを見るが、そこにみゆきの姿はない。
山吹「くそっ!!」

ドアは完全に閉められている。

山吹、ドアを開けようとするが、ドアノブから湯気が出ている。
山吹M「やられたっ!!」

ドアの向こう側からみゆきの声。
みゆきの声「無理に破ろうとすれば、灯油に引火して大火災になるよ」
山吹「…」
タラリと垂れる汗。

山吹M「監禁…された!!」


○回想・同・トイレ(夜)
ジャーっと流す音。
山吹、スッキリした表情で出てくる。
山吹M「ま、結果オーライか」

○回想・同・店内(夜)
気絶しているたわん。
山吹、戻ってきて。
山吹M「コイツまだ気絶してる、呑気なもんだな」

かなこ「この子が起きるまで自由時間って言われましたけど…」
山吹、浅野を見て。
山吹M「このおっさんから何か情報を引き出せるかもしれない」

山吹「みなさん結構このお店利用されてるんですか?」
かなこ「はい! 週に3回は来てますよ、特にピザのソースが絶品で!」
嬉しそうにはにかむ浅野。
「週3!?」「それは多すぎ」などと盛り上がる。
かなこ「そういうあなたは…?」

山吹「山吹です」
かなこ「山吹さん」
山吹「実は初めてで。ネットで見て、てっきりフレンチトースト屋だと思って入ったんですが…」
浅野「そうなんです、先月オープンしたばかりで、ちょっと前までフレンチトースト屋さんだったみたいです」
熱心に話を聞くかなこ。
山吹「へぇ〜、食べてみたかったな」
かなこ「…ここから出られたら、きっと食べられますよ」

切なく笑うかなこ。
山吹も微笑み返す。
山吹「そうですね!」

たわんの声「うぅ…」
たわんを見る一同。
目を覚ますたわん。


○現在・同・同(夜)

現在に戻って。
たわん「じゃあ立てちゃんはどうやって…!?」

山吹、たわんを睨みつけ。
山吹M「トイレの恨みは絶対に許さねぇぇ!」
山吹「自分で考えろ、バーカ!」

たわん「むっきぃい〜〜!」

主催者「はい、終わり。では、これから言うチームに分かれてもらいまーっす!」

机を囲む3チーム。
たわん、縄に縛られた状態で。
たわん「え、圧倒的に不利じゃね!?」

たわん、同じ机のメンバーを見る。
右に座ってたわんを睨んでいる山吹。
たわんM「明らかに敵意を向けてるこの男」

たわんの正面に座っている浅野。
たわんM「完全に主催者陣営のおっさん」

周囲を気にしているかなこ。
たわんM「唯一仲間に引き入れられるとすれば、この姉ちゃん」

かなこ、トランプを机に出し始める。
たわんM「オレを地下室送りにするって筋書きだろうけど、覆してやるぜ。今度こそ!」


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